真剣勝負なので手元に残せるのは五人だけ
藤泉都理
真剣勝負なので手元に残せるのは五人だけ
「今日は病気やら用事やらで五人しか集まらなかったからそっちも五人で頼むよ」
「わかった」
「じゃあ、五分後にいつもの場所で」
「わかった」
そうしてやつと別れてから俺は急いで部屋へと向かいながら、誰を選ぶか頭の中は大忙しで動いていた。
攻撃のマサ。
守備のトキ。
攪乱のアイ。
逃走のミエ。
指示のコウ。
色気のヨリ。
魅了のタツ。
抱腹のユウ。
鼓舞の俺。
九人の内から五人を五分、いや、あと四分だ。選ばなければならない。
じゃんけん。
くじ。
投票。
立候補。
指名。
しかし勝利の為には攻撃のマサと指示のコウは外せないだろう。
これはみんな賛成してくれるはず。
あとはう~ん。うん。あとはじゃんけんでいいか。どうせ五人は今回だけだろうし。
あとの四人は応援に回ろう。
よし。
「え?応援もだめ。何で?」
「だってこっちは五人しか集まらなかったから、だめだよ。応援も力になるから。真剣勝負なんだから、条件も同じにしないと。だろ?」
「むうううう。それは、そうだな」
小学校の昼休み。
結局全員くじで参加する人を決めることになった結果。
六年三組の攻撃のマサ、攪乱のアイ、色気のヨリ、鼓舞の俺の四人は、六年一組の子どもたちとドッジボール対決をしている仲間の五人たちを応援するのであった。
もちろんドッジボールをしている仲間の傍で、ではなく。
校庭に出て見える所から、でもなく。
校庭が見える廊下から、でもなく。
姿も見えず声も聞こえない図書室で静かに。
その声が惜しくも届かなかったのか。
ドッジボール対決に負けてしまったけれど、明日リベンジしてやる。
(2023.5.1)
真剣勝負なので手元に残せるのは五人だけ 藤泉都理 @fujitori
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