落ちたヨルガオ5

学校という文化は宇宙時代には消え去っていた。人類はまばらに銀河系群に広がっていきそれをタイムスリップが繋ぎ時間の壁を超えた。しかし人類の数が膨大な桁数であろうとも宇宙という空間は無限そのものというように広くそれぞれの惑星世界は過疎であり学校という文化は通信自動教育にとって変わられたのだ。時間と空間を征服した宇宙吸血鬼、彼等の宇宙生徒会のみが学校文化を保持していた。


「宇宙生徒会長を倒せ、おまえが新たな宇宙生徒会長になるのだ」

今際の際のアサガオの声がダッカーの夢に響く。倒れるアサガオを見つめる冷たい目をした宇宙生徒会長は美しい。ヨルガオはそれに一瞬心を奪われた。

「最後の挨拶は終わったか?」

アサガオの最後の言葉は宇宙生徒会長には聞こえていない。

「きみも俺の血族になる気はないのか。残念だ」

宇宙生徒会長の冷たい声が響く。

「私を退学させないのですか?アサガオのように?」

「きみは彼女の後を追いたいのか?それなら勝手にするが良い。彼女の星系の委員長はヒルガオが継ぐだろう」

生徒会長の考えは読めない。ふと気づいた。ここは……。ヒルガオとグール委員が現れて、それで……。そう宇宙生徒会長もやってきてヨルガオが連れていかれた。

「なかなか素敵な服を着ているじゃないか?どこで見つけたのかね」

宇宙生徒会長がセーラー服のヨルガオを褒める。ヨルガオは宇宙生徒会長を睨む。特に拘束されているわけではないがまわりを宇宙生徒会に囲まれている。

「きみはやはり、俺を裏切るつもりなのか?」

現実!宇宙生徒会長の声がヨルガオの耳に響く。

「そうです、生徒会長陛下!恐れ多くも王権を奪い自らが宇宙生徒会長になるつもりなのです」

ヒルガオだ。ほかにもたくさんの宇宙生徒会員がいる。全員子供で目が赤く、銀髪で色白の肌だ。

「ヒルガオ、きみは黙っていなさい」

ヒルガオは宇宙生徒会長の言葉に、なにかさらに言いたげだったが押し黙る。

「ヨルガオ。良いではないか?」

「?」

「俺は血族を増やしすぎた。俺がこの宇宙に飛び立ち、遥かな時が過ぎた。俺は始祖の血族となり、仲間を級友を増やしていった。そのたびに俺は希薄になっていった。ふふふ、そうなのだ。きみには俺が無秩序に血族を増やしているように思えただろうが、俺は俺になる血族を選別している。ただの手足のグール委員ならいくら居ても良いがね」

ダッカーが恐ろしいことに気づく。ヨルガオをみる宇宙生徒会員の目は同じ感情、同じ自我を持っている。拡張された自我、統一された自我を持つ宇宙生徒会長。宇宙生徒会そのものが宇宙生徒会長なのだ。

「やつらはグール委員と変わらない」

ヨルガオが独り言のように言った。

「僕はそんなやつらの仲間になる気はないね!ヒルガオ!おまえはああいうふうになりたいのか?」

ヒルガオはヨルガオを裏切り宇宙生徒会長の歓心を買い、血族になろうとしていたのだ。

「ヨルガオ……」

ヒルガオがヨルガオをなんとも言えぬ顔で見つめる。

「ふむふむ、それではここで俺と戦うのかな?」

宇宙生徒会員が統一された動作で銀色の剣を抜いた。逃げろ!


「逃げろ!」

ヨルガオと繋がっていた自我が離れていく。だんだんと思い出す。ヨルガオは逃がしてくれた。デュランダルのコクピットに逃げ込み、そのまま逃げたのだ。アームヘッドの操作は不思議とできた。ヨルガオの記憶のおかげだ。デュランダルのカメラが宇宙生徒会の戦艦を映す。ヨルガオの声がそこから聞こえてくる。逃げろと、僕は彼が嫌いなのでその声を無視した。








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