第12話
いきなり飛び込んできたケイトとユカリ。更にダイブから復帰したばかりで状況がわからない藍から状況説明を求められてもこっちが説明してほしい紅としてはどうしたものかと途方に暮れるしかない。
「えーと、ケイトさんだったか?初めましてだな。アタシは黄沙。コウとランの友人だ。少しばかりゲームとかが得意なんで二人に頼まれて例のゲームをやらせてもらったんだ。
なかなか手ごたえがあって楽しめたから是非機会があれば
半分フリーズしている紅をやれやれといった表情で見ながら黄沙が挨拶をする。
「あ…初めまして、ケイトです。って、ええっ!あのゲームクリアできたんですか⁈」
「ああ。ステージが進むとシューティングから時間制限付きの計算問題になり、更に知識を問うクイズに多面体ダイスのカラー揃えRTAとまぁよく作りこんであったと思うぞ。是非次作を作る時は一緒にやりたいと思うぐらいには楽しめたな」
「むぅ…。先にクリアされたのはちょっと悔しいけど、今はそんなこと言ってられる場合じゃないものね。コウ!何かわかったの⁈こっちは重要な手掛かりを見つけてきたわ!」
重要な手掛かり?とユカリ以外の三人が首をかしげるとケイトは服のポケットからきらりと光る小さなものを取り出して見せる。
「これは…B&S海底探査会社の社員バッジ、か?」
「ああ、間違いないね」
刻印を見て藍と黄沙が確認するとケイトがフンスとばかりに胸を張る。
「私だって何もしなかったわけじゃないのよ。何か手掛かりが残ってるかもしれないと思ってクヨウの
普段はキッチリと整頓されているクヨウの研究室が何かトラブルがあったことを示すかのように荒らされており、手掛かりを求めて訪れたケイトも心配して一緒に見に来てくれたクヨウの同僚も一様に驚いたようだった。
「もし警察が来てくれた時に現場保全が重要になるのはわかってたからなるべく物の位置はずらさないようにしてたんだけど、ソファーの下にコレが落ちてたのでこっそりと持ってきちゃった」
そういってちょっとバツの悪そうな表情をしながらもしれっと重要証拠を持ち去るケイトにコウ達も開いた口が塞がらない。
「それでコウたちもゲームクリア出来たってことは何か情報を掴んだんでしょう?教えて?」
「そりゃ、わかったことはあるけどケイトちゃんに教えるわけにはアカンこともあるわけで…」
「どうしてよ?!もともとあの記録媒体は私のだし、その内容を知る権利はあるはずよ!」
「あー…まぁそう言われればそうなんやけど…」
どう答えたものかと言葉に窮してちらりと藍を見るが藍も困ったような顔をするばかりである。
「もういいわ!それじゃ一つだけ教えてくれる?このバッジがあったってことはこの会社が今回の件に関わってるってことでいいのよね?」
業を煮やしたケイトが叫ぶと渋々といった顔で紅も藍もうなずく。
「わかったわ。それじゃちょっと行ってくる」
くるりと踵を返すとスタスタと部屋を出て行こうとするケイトを慌てて引き留める。
「ちょ、ちょい待ちぃな、ケイトちゃん!なにするつもりや!馬鹿正直に正面から一人で行っても捕まるのがオチやろ?!あっちは計都ちゃんのことも探してんやで⁈」
「でもクヨウが待ってるの!」
反射的にケイトの腕をつかんで引き止めたがそれを振り切ってでも行こうとする姿に黄沙が大きなため息をつく。
ここにも我の強いやつがいたか…。黄沙はそう思いながら片手を振って二人を追い出しにかかる。
「コウ、ラン、二人がついて行け。アタシはもう少し
「私もついて行きたいですわ」
「ユカリは駄目だ。言われてるだろう?」
予想していたユカリの言葉を黄沙は一言で切り捨てる。
お気に入りの黄沙に言われてしまえばユカリはつまらなさそうに諦めるしかない。
「そうだな。ケイトさんは止めても無駄みたいだし、ついて行くのがコウだけじゃ心配だ」
「あー、信用してへんな、らんちゃん」
ぶーたれる紅の言葉を無視して藍は椅子を降りてケイトの元に近づく。
「僕たちが必ず守るから。だから一人で先走らないでください」
幼い見かけに普通なら困惑してしまうような言葉だったが、藍の瞳の強い意志に思わずうなずくケイトだった。
「少しだけ待っていてください。こちらの準備が整い次第出発します」
そういって先ほど
「心配ないで。きっとクヨウは無事に助け出せるって。俺らが力を合わせとるんやさかい絶対何とかなるって」
不安そうに藍たちを見つめるケイトに紅が近づきそっと声をかける。
「そう…ね。ただ闇雲に行って私まで捕まってしまったら仕方がないものね」
「そういうことや」
な、とウィンクする紅に計都の緊張が少しだけ緩んだように見え、ようやくケイトも笑顔を返せるようになる。
そうして一時間ほど準備に時間を取られた後、三人はクヨウが囚われているであろう場所、B&S海底探査会社へとむけて出発したのである。
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