第2話
『
それは『力』ある者の中でも特に選ばれた一部の者にのみ許された尊称である。
現在そう呼ばれるのは七人
かつては
元来『COLORS』は能力者を管理する集団として結成された。
始まりは七世紀ほど前に突如起こった世界大崩壊。
その原因はいまだ不明のままである。
だがその前後から特殊能力を持つ者たちが多く生まれることになった。
世界が崩壊することになったので能力者が増えたのか、それとも能力者が増えたことで世界の崩壊が起こったのか。
原因を突き止めようと長らく論争が続くものの未だ決め手なく謎のまま年月だけが過ぎていた。
そして世界が崩壊したことを機に宇宙へと進出して行った一部の人々と能力者であるがゆえに恐れられ排他された者と地上に残された人たち。
地上には多大な傷跡があり、残された能力者たちは同じように地上に残った力を持たない他の人々を巻き込んだ事件を多数引き起こした。
頻発する問題に事態を憂えた特に強い力を持つ能力者たちが集まって『COLORS』を設立する。
そうして初代から現在に至るまでの長い期間に
組織の最高管理者が先に述べた七人。
全員初代メンバーの名前を代々引き継いで呼ばれている。
最も『紅』は『
色の交代は主に前任者が死亡、もしくは任意で引く時に行われるがその地位に見合う後継者が見つからない場合は空位となることもある。
そのため長い歴史の中で七色全てが揃うことはあまりない。
そして今、『紅』と『藍』の交代式が行われていた。
舞台の中心に二人の人物。
そのうちの青年が新しい『紅』である。
年のころは二十代中頃か。肩より少し長い赤みの強い金髪を緩く一つにまとめ、細い金鎖のついた眼鏡をかけている。
「さすがね。これなら安心して譲れるわ」
『紅』の選抜戦を勝ち抜いた青年にともにいる女性はほっとしたように笑う。
改めて青年をじっくり見た後、大きく頷き女性は自分の左耳からカフスを外し青年の手に押し付ける。
それには鮮やかな血の色をした大きな宝石がはまっていた。
「今日から貴方が『COLORS』の一色『紅』よ。その石が証し」
優しく諭すように女性は自分の後継者に告げて客席を振り仰いだ。
「今ここで宣言する!前任『紅』はここに石の譲渡をもって彼を次代の『紅』とすることを認める!!ここにいる全ての者が証人である!!」
女性の声に応えるかのように観客が新たなる『紅』の後継者を大きな拍手によって承認した。
同時刻。
もう一つの舞台を見る観客たちはざわめきと驚きを隠せずにいた。
ここ数十年以上不在であった『藍』の後継者を決める選抜戦。
その戦いを勝ち抜き最終戦にて当代七色からの代表と戦い、その素質を認められた者が舞台の中心にいた。
だがその姿に観客たちは『藍』の後継者がようやく決まったという喜びより戸惑いの方が多く感じられた。
年のころは十歳前後。まっすぐな長い黒髪と子供らしい細い手足。
この時代、能力者の外見と実年齢が必ずしも一致しないことは既に周知の事であった。
この少年も決して見かけ通りの年齢ではないだろう。
だがそれをわかっていてもあまりに幼い姿に誰もが一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
しかし、そんな観客たちの想いを他所に少年のグリーンの瞳には自分が得た地位の重みをはっきりと理解していることを感じるだけの強い意志と誇りが漲っていた。
少年と同じ舞台の中心にいた老人が右手を大きく上げる。
「この者を正当なる『藍』の後継者として、当代『緑』の名をかけて認める!」
今は亡き先代『藍』の代わりに選抜戦で戦った『緑』がそう宣言した瞬間、十数年ぶりに『COLORS』七色が揃ったのだった。
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