手荒な歓迎2
兵士たちは見たこともない武器を持っていた。それは黒い金属で出来た細長い筒状の武器だった。
兵士たちはその先端をこちらに向けて威嚇している。ネロはそれがいったい何をするものかは知らなかったが、致命的な悪意があることだけはすぐに解った。
兵士たちは蜥蜴を飛び降りると、数人づつの小隊に分かれてネロ達を取り囲んだ。少し離れた場所でパウやカインが抵抗していたがハンニバルが叫んで抵抗をやめさせた。カインとパウは地面に組み伏せられて後ろ手に縛られてしまった。
「久しぶりだなハンニバル」
声のした方を見ると、黒い皮の手袋を嵌め、オリーブ色の軍服を着た男が兵士たちの後ろからゆっくりと姿を現した。
男の黒髪はベッタリと油で固められ、肌は血管が透けるほど青白かった。その青白い肌に紅く薄い唇が三日月を描いていた。その男には片目が無く、黒い鱗の眼帯を付けていた。
「まだ生きてたのかジョセフ」
ハンニバルは眼帯の男を睨みながら応えた。
「お陰様でこのとおりだ。おっと。妙な動きはするな? お前は無事に切り抜けられても、無事ではすまない者が何人でるか」
眼帯の男はクククと笑って見せた。
「さて。それでは我らが大帝の命に従い帝都までご同行願おう。血の気の多いお友達にはしばらくあのままでいてもらおうか」
「何がお友達だ! このオカマ野郎!」
カインがジョセフに向かって叫んだ。
パン! 乾いた音が響くと、カインの頭のすぐそばに小さな穴があいた。
ジョセフの手には兵士の持つ武器とは違う、手のひらに収まる大きさの黒い鉄の筒が握られていた。その筒の先端から煙が細く立ち上り独特なにおいが立ち込めた。
「口に気を付け給え。お友達でないなら敵ということになる。そうなれば、君は永遠に暗い石の中に閉じ込められることになる。頭と身体を切り離してな」
ジョセフは意味深な笑みをカインに送ってみせた。カインは黙ってジョセフの顔を睨みつけていた。
「そちらのレディーと、かの有名なパラケルススは丁重に扱いたまえ」
スーとパラケルススは一瞬こちらを見てコクリと頷き兵士の後について行った。
「お友達を連れて行け。ご機嫌をそこねないようにな?」
ジョセフはパウとカインを指してシッシッと手で合図した。
ジョセフの合図でカインとパウは一本の太い縄で縛られて引かれて行った。
「さて。大帝は君にとても興味がお有りだ。予言の少年ネロ!」
ジョセフはネロと鼻がくっつきそうなほど顔を近づけて言った。
ジョセフはネロの髪の毛を指でいじりながらクンクンとネロのにおいを嗅いでいた。まるでそれは猟犬が獲物を確認するかのような仕草だった。
「君は素直に大帝の招待に応じるほうが良い。さもなければお仲間がどうなるかわからないし、君とてどうなるかわからない」
ネロは黙って頷いた。それを見てジョセフは結構と踵を返して自分の蜥蜴に跨った。
「お前もネロと一緒に来い!!」
ジョセフはハンニバルに向かってそれだけ伝えると部下の兵士たちに命令を出し始めた。
ネロ達は帝国の兵士たちに囲まれて、深い雪に閉ざされた帝都に向けて進んでいった。
兵士たちは吹雪の中でも軍歌を歌いながら規律正しく行進した。
ジョセフは先頭で愉快そうに指揮を振っていた。かと思えば道中で積荷を落とした兵士を無慈悲に撃ち殺したりした。
「さあ着いたぞ! 我らが偉大なる大帝万歳!」
連行されて三日目の昼頃、ジョセフは高らかに叫んだ。
ネロが視線を上げると吹雪の向こうに北の大帝国ルコモリエが誇る要塞都市の城壁が高くそびえていた。
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