監禁と食事1
ネロが起きているのを確認するとカロカラ族の世話係が、頑丈な扉の向こうから、大げさな身振りで話しかけてきた。
「あら! お目覚めになられたんですね! おはようございます! あなた様は私共の大切なお客様でございます。最高のお料理でおもてなしさせて頂きますです!!」
「他の皆はどうした!! ここから出せ!!」
ネロは凄んでみせたが相手はまったく意に介さない様子だった。
「他の皆様? はて? わたくしは存じ上げません。さあさあ! そんなことよりもお食事にいたしましょう! 二日も眠っていたんですからさぞ空腹でしょう」
二日だって? ネロは改めて状況の悪さを痛感した。いったい皆はどうしているだろう? 同じように監禁されているのだろうか? もしそうなら一体どうすればいいのだろう?
自分の状況を確認すると剣と荷物が取り上げられた以外に別段変わったことは無かった。
出口は頑丈な扉以外に無く、脱出するならこの扉しかない。扉の格子窓から外を覗くと剣と荷物は
「慌てず、時を待って、光を追う」
ネロは夢で聞いた最後の言葉に賭けるしかなかった。なぜかその言葉は信じるに足る力強い説得力があった。
「きっと皆は大丈夫だ。僕よりもずっと強くて賢いから」
こうしてネロはひたすら来たるべき時を待つことにした。
カロカラ族の世話係は定期的にネロを監禁した部屋に食事を運んできた。扉の下に開いた小さな搬入口からお盆に載せられた食事を差し出してくるのだ。
その食事はおぞましいものだった。七色に光るナメクジは火を通した後も七色の輝きを失っていなかったし、巨大なカマドウマは姿のまま汚染水で茹でられて異臭を放っていた。カマドウマは輪切りにされており、ネロはその断面を見て思わず嘔吐した。
監禁されてどれぐらい時間が経っただろうか。ネロはげっそりとやつれていた。空腹のあまり気持ちの悪い食事でも食べたい衝動にかられた。異臭を放つ料理が紫色の湯気を立ち上らせる様を見て、ネロはゴクリと唾を飲むのだった。
その様子を見た世話係は憐れみを込めた瞳でネロを見つめて優しく話をするのだった。
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