陰謀の気配2

 颯爽と去っていくジョバンナの背中を睨みつけながら、ハンニバルはネロに耳打ちした。


「あの男は信用するな…」


「信用しません。会って十秒も経たないうちになぜかあの人に嫌悪感を抱いたんです。絶対信用しちゃいけないって」


 ネロはハンニバルにそう答えた。ハンニバルは少し驚いた顔をしたあとで片膝をついてネロと同じ目線になった。

 

「おまえの感覚は正しい。奴は一三貴族の中で最も邪悪で最も高潔なゲミニ家の人間だ。ゲミニ家は代々、暗殺と粛清を生業としてきた一族だ。正義と人殺し、二つの顔を持っている」

 

 ハンニバルは言うか否かを少し迷ってから静かにこう続けた。


「中でもジョバンナは歴代最凶にして最も狡猾と言われている。危険な男だ」

 

 ネロはその言葉に黙って頷いた。


「さあわしらも行こう。ネロの旅支度をせにゃならん。まずはこの城の宝物庫じゃ!」


 パラケルススはネロに目配せした。


「おぬしもきっと気に入る」

 

 不安を拭いきれぬまま、途方も無い陰謀の気配まで漂う中、ネロは二人に連れられて城の宝物庫へ向かうのだった。

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