二、愉快な仲間たち
あれからずっと無言の少女に連れられ、
あの大通りの賑わう声がどんどん遠のいていき、やがて声すら聞こえなくなる。代わりに、淡い橙色の光がぽつぽつと目に入って来る。
屋根に吊るされた飾りのついた小さな灯篭の灯りだった。その先に古くも風情のある立派な店が建っていた。裏長屋の中では目立つ造りで、上の方には看板も付いている。
「
「
少女は冷たい視線をこちらに向けて言い直す。濃い紫みのある青色の左眼に、橙色の灯りが映り込んで、また何とも言えない色を浮かべている。少女は
「おかえりなさい、
視線を戻した途端、今まで誰もいなかった場所にひとりの少女が現れる。見た目は十二歳くらいの可愛らしい少女。肩くらいまでの青銀髪。その右側に付けられた、蝶の髪飾りが特徴的だった。
「
「······このひとが?」
物憂げな表情が一変、怪訝そうな顔に変わる。まるで汚いものでも見るような眼で見てくる少女に、
「
「その代償に
「気にするな。本人が繕って直すと言っている」
「だって、その羽織は······、」
頬を膨らませて何か言いたげに
「お前、名は?」
「あ、えっと、俺は
「
自己紹介を途中で遮られ、しかも不穏なことを言う
だって、この状況は、最近のアニメや漫画で良く描かれている状況に似すぎていて。まさか、そんなことあるわけないよな······と笑って誤魔化す余裕はもはやない。ただ少し違うとすれば、よく描かれる王道モノ、例えば西洋的な世界観とはまったく違う、和風。なんならタイムスリップ感さえある、この江戸風の街並み。
周りにいるのは人外か、ひとの姿だが人外の美しい少女がふたり。後はなにが来ても驚くまいと
「あ、
がらっと音を立てて「華鏡堂」の扉が半分開く。
その隙間から、二十代くらいの青年が顔を見せるなり、「ご愁傷様」と残念そうに告げた。新たに目の前に現れたそのひとは、背中までの長さの灰色の髪の毛を、赤い髪紐で括っていて、黒い上衣、黒い袴を纏っている。
百人いたら九十九人が優しそうな雰囲気と印象を受けるだろう、2.5次元俳優風の素敵なお兄さんだった。
******
「ええっ!?
「ここまで聞いて感想がそれかい? まあ確かに
すでに自分が、その禁止用語を言ってしまっていることに、青年は気付いていないのだろうか?
「
ひくひくと口の端を引きつらせながら、ここの店主である
「たしかに胸はぺたんこだなぁって思ってたんすけど、そういうのって人それぞれじゃないっすか。だから、まさかその顔と姿で男だなんて衝撃的な事実、一番驚くに決まってるっすよ!」
その言葉に、
「あはは。まあ個人の見解はさておき、ここがどういう場所で、君が今どういう立場かは理解できた? こんな俺でも最初は人並みに戸惑ったけど、君は大丈夫かい?」
詳しい事情は知らないが、この
ここは異世界というか、
けれども、ここの空間はそれとはまた少し異なるらしく、この
つまり、ここに存在している時点で、その者はもはや生きた
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