第48話 裏で操る人物
――真由のマンション 2025年11月9日 16時35分――
再びループが発動し、私は最初の状態に戻った。ベッドから飛び起き、状況を整理することにした。
私はずっと佐々木恵美さんが拓弥さんを洗脳していると思い込んでいた。しかし、前のループを経験してみると、恵美さんも洗脳されていたことが判明した。その事実に気づいた瞬間、私の心に衝撃が走った。私は完全に誤解していたのだ。
恵美さんの行動について、以前から不可思議な点があったことを思い出す。偽の浮気写真の件だ。私がそれを回避すると、彼女はループの度に私を殺そうとした。疑いようのない奇妙な行動だった。
もし恵美さんが洗脳されているのなら、裏で彼女を操る人物がいることは明らかであり、拓弥さんや恵美さんに介入している可能性が非常に高い。しかし、その人物が誰であり、何の目的でこれらのことをしているのかについては、私には全く見当がつかない。
ループが再び始まり、私は正しい未来を取り戻すためには、裏で操る人物の存在を把握し、その目的を阻止する必要があると考えた。今から私は、裏で操る人物を見つけ出すために行動することにした。
さて、まず考えるべきは、恵美さんがいつ洗脳されたのかだ。私が知る限りでは、最も早い段階で洗脳されている可能性があるのは、偽の浮気写真を回避した後に現れたタイミングだ。心眼で確認はしていないが、あの時の彼女は洗脳されているとしか説明がつかない行動をしていた。
二次会へと向かう時間は、闇夜の21時を過ぎた頃である。今から4時間30分ほどの間に、裏で操る人物の特定が求められる。もし、すでに彼女が洗脳を受けているのならば、手詰まりになるため、ここはレジャックさんを信じてやるしかないだろう。
恵美さんの現在地を知る手立てを持たない私は、拓弥さんに頼んで調査してもらった。やがて、拓弥さんから電話がかかってきた。
「真由、連絡がついたよ。恵美はまだ大学にいるみたいだ。恵美と何かあるのか?」
「ええ。直接会って確かめたいことがあるのよ。」
「ふむ。真由が恵美とね。なんだか変わった組み合わせだね。」
拓弥さんは私の返答に釈然としない様子だった。恵美さんと私は同じ学部に所属しているものの、ほとんど交流がない事実を彼は把握しており、そのため彼が不思議に感じるのも仕方のないことなのである。
しかしながら、今は詳しい事情を説明する時間もないし、彼に複雑な事情を理解してもらうのも困難だと感じたため、情報を得るために必要な範囲で電話を切った。
―― 16:55 大学の敷地内 ――
自宅を出てタクシーを拾い、急いで大学へ向かった。普段はバスを利用することが多いが、今は一刻を争う状況だったため、最も早く到着する方法を選ぶことにした。
私は恵美さんが訪れそうな場所を順に探し、やっと図書室の一角に彼女を見つけた。
恵美さんは何か調査をしているらしく、テーブルにはいくつかの本が積まれていた。
時計の針は17:05を指し、私が彼女に接触しようと決めてから最小限の時間経過で到着することができた。問題は、今の時点で彼女が洗脳を受けているのかどうかである。
私は彼女に気づかれないような場所に位置を移し、『心眼』と呼ばれる特殊な能力を駆使する。
彼女の近くに文字が表れたので、内容を確認する。
『状態 : 正常』
私はこの情報に心から安堵する。このまま恵美さんを観察していれば、この後に必ず裏で操る人物が接触してくるからである。
私は恵美さんや、入口から入ってくるだろう『裏で操る人物』から死角になるような場所に移動し、身を潜めてその時を待った。
―― 17:37 ――
図書室の扉がゆっくりと開く音が聞こえた。黒いキャップをかぶり、サングラスをかけた女性が恵美さんの方へ近づいていった。
恵美さんはその気配に気づき、彼女に向かって声をかけた。
「あの…何か用ですか?」
「何も考えずに、ただこの光を見つめなさい。」
黒キャップの女性は、右の指にはめたリングを指差して見るように促していた。遠くからではっきりとは見えなかったが、指輪には大きな赤い宝石のようなものが輝いていた。
じっくりと観察していると、指輪の近くに文字が浮かび上がった。私は以前から心眼は人に対してのみ効果があると思っていたが、物に対しても同じように使えることが分かった。私は、文字に目を留めた。そこには次のように書かれていた。
『洗脳の指輪』
更にその能力を調べると、『対象者を洗脳し、発動者の意のままに操るアイテム』と書かれており、次の行には『2085年の国際人権法に違反している』との記載があった。
指輪の能力については理解できたが、次の2085年の国際人権法の部分については理解が及ばなかった。しかし、洗脳の能力があるとすれば、人権を侵害する行為であるため、人権法に違反しているという理屈は理解できる。
やがて、恵美さんの視線が指輪に引き寄せられると、赤い宝石のようなものから強烈な光が放たれた...。
私は、光が放たれる直前に心眼で「強い光が放たれます。目を閉じていてください。」という文字を確認したため、光を直視することは避けたが、恵美さんは回避できるはずもなく、その後立ち上がったまま目が虚ろな状態となっていた。
『私の命令に全て従いなさい。』
黒キャップの女はそう言うと、恵美さんの目には再び光が戻り、「命令に従います。」と恵美さんは答えていたのであった。
私は、すかさず心眼を使用して黒キャップの女性と恵美さんを詳しく調べてみた。私は、この結果を知り、この後大変驚愕することになるのであった…。
―――― to be continued ――――
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