第5話「人魚姫」5
時は流れ人魚姫が王子と共にいるけれど、童話の様に王子には好きな人がいてそれが自分を助けてくれた女性だということで、人魚姫にしたら自分が助けたのに他の女が助けたことになっているし、そのことを言えない歯がゆさが募り募っていた。そして童話の絵本にもあった船上でのパーティー、その後で王子が好きな女性と結婚告知があるという。物憂げにしている船上での人魚姫に・・・
と、その前にこの映像を観せよう。と言って映像が巻き戻った感じでとある場面が映し出された。
それは以前人魚の王に訴えを起こしていた男。この男はいまだに王族達に復讐したいと思っていた。末姫の噂のせいで男はそれまでの生活が一変してしまい、何もかもを失ってしまったからだ。
そして王族に復讐する為に、何かいい方法はないかと思っていた矢先に、末姫が陸に上がってしまったとのこと、当の本人が逃げてしまって矛先を収めることもできない、それならと今度は王族に何かしらのダメージを与えたいと思うようになっていった。
その為には末姫の姉達の髪を切らせ、その髪を材料に作ったナイフを末姫に渡るように仕向けようと企んだ。
その企みは成功し末姫の姉達は・・・
と、さっきの話につながって、人魚姫に髪を切った姉達がナイフを渡している場面が映像で流れている。
あああ、これでもうわかるだろう?結局はあの人魚姫は泡となって消えてしまうよね。と、苦笑している神。
「だけど、これをそのまま話に残したらよくないよね」
「そう、所謂改ざんされた話が童話の話だ。だってそうだろう?おしゃべりな姫のせいで国民の恨みを買い、王族の権威が失墜してるんだからね。それと綺麗に終わらせたのは人魚の国にとっても王子の国にとっても良かった」
「王子の国も結局は人魚姫の存在が邪魔だった。彼女のせいで好きな女性と結婚できないのも困るし、また王子の思い人の女性も実は人魚姫に酷い虐めを受けていた。人魚姫にしたら王子の思い人は、ぽっと出の横から搔っ攫った泥棒猫のようなもの、まるで近年の悪役令嬢みたいな感じだね」
と、笑う神。
「結局は皆の利害がいっちした話が、君らが知っている童話。こんな風に改ざんされた話が山とある、本当に悪役だったのか?っていうのも違う話にもあるかもしれない。あっ、人魚姫に出てくる魔女は結構割に合わない気がするねぇ」
と、遠い目をする神。
「これで人魚姫の本当の話は終わった、次の話は君らが知りたいと思う話をしよう」
「君らのリクエストを待っているよ」
覗きの神が語る童話 一条 梓 @anfitorite
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