オホンヌ世界会議

 ガヤ、ガヤ、ガヤ、ガヤ―

 

 世界会議当日の朝から、オホンヌはお祭り騒ぎだ。

 オホンヌの住民たちは、世界会議を喜び、歓迎している。

 世界中から、オホンヌに注目が集まっている。

 

 オホ国の音楽家たちがオホンヌに集まり、音色を響かせている。

 屋台が集まり、店は活気づいている。

 沿岸部や上空、オホンヌ議事堂の周りは、軍隊とアレスによって厳重な警備がなされている。

 

 オホ国中が、ヒメカに、おれたちに、期待している。

 おれは、熱気を感じていた。

 時代の熱だ。

 今日の、世界会議は、歴史に残りつづけることであろう。

 

 おれは、5階の窓からオホンヌを眺めていた。

 おれたちの家だ。

 5階建てで、広々とした家。

 おれ一人で住むのには広すぎる。

 ユミ、ヒメカ、ユキ、カナちゃんと共有して過ごしている。

 といっても、ヒメカもおれもユキも、オホンヌ復興に明け暮れて、滅多に家に帰って来ることはなく、広い豪邸はヒメカの使用人の人が、掃除やら、家の管理やら全部してくれている。

 家は殆どがスマート家電で、快適に過ごせるようになっている。

 

 「そろそろ降りるか。」

 

 おれは、イヤホンを耳から外して、椅子から立ち上がった。

 トントントンと階段を降りる。

 

 「集まったわね。」

 

 上から降りてきたおれをみてヒメカはいった。

 

 ヒメカは1階のリビングで椅子に座り、情報収集をしていた。

 時代の空気を読んでいるのだろう。

 

 カナちゃんは、ヘッドフォンをつけて、身体を丸め込んで音楽を聴いている。

 縮こまるのが落ち着くのだという。

 

 ユキは、本を読んでいた。

 最近、海外で発表された物理学の論文を読んでいる。

 素粒子の質量について書かれたものらしい。

 

 「準備は万端ね。じゃ行くわよ。」

 

 ヒメカは、家の玄関扉を開けて外に出た。

 道路脇に少し雪が積もっているが、空は晴天だ。

 日の光が雪を反射して、銀色に輝き眩しい。

 

 オホンヌ議事堂までの道を歩く。

 時刻は朝の8時すぎ、オホンヌ世界会議は夜の7時ごろからはじまる。

 世界各国の要人たちは続々と、オホンヌ議事堂に向かっていることであろう。

 

 おれたちは、はやめに、オホンヌ議事堂に行っておく。

 オホンヌはおれたちの国だ。

 準備をするのも大事だからな。

 

 オホンヌ議事堂周辺は、警戒態勢である。

 中に入るには身体検査を行い、指紋と顔、虹彩による生体認証と、スマホによる二段階認証でログインし、パスコードを答え、パスポートを確認する必要がある。

 厳重なセキュリティだ。

 

 おれたちは議事堂の中に入った。

 議事堂には、荘厳な壁画や、絵画が飾ってある。

 美しい大理石で加工された床や天井。

 天井は高く、開放感がある。

 

 太陽が沈み、あたりが暗くなった。

 議事堂の休憩スペースで、夕食を食べる。

 食事後、歯を磨いて、顔を洗い、衣裳部屋で、服を着替えた。

 オホ国秘密会議の時に着た、タキシードに着替えた。

 髪も専属のメイクの人がやってくれた。

 公の行事の時は、メイクがつくようになっている。

 いいご身分になったものだとじぶんでもおかしく思えてくる。

 

 今日の会議が行われる、地下11階へエレベーターに乗って向かう。

 防犯の為に地下に作られた秘密会議場だ。

 そこで、オホンヌ世界会議が行われる。

 

 地下秘密会議場に着く。

 おれたちは、それぞれ席に着いた。

 

 次々と各国の要人が、オホンヌ議事堂の地下秘密会議場へ入ってくる。

 

 アヘ国 アヘガオイッテルノ首脳 男35歳

 アンアン国 アアンキモチイノ首脳 男55歳

 んんっ国 んんっソコハダメェ首脳 女31歳

 ハアハア国 ハアハアモットモットォ首脳 女38歳

 ええん国 ええんギモヂイヨォ首脳 男41歳

 うぅうゥ国 うぅうゥいいそこいい首脳 女53歳

 んゴお国 ンゴおイクんゴよ首脳 男39歳

 ニュア国 ニュアにゃあ首脳 女45歳


 8大国家の首脳たちが集まった。

 

 「オホンヌ世界会議をはじめる。」

 

 世界政府機関が議長ゼウスは、開始の挨拶を述べて世界会議を取仕切りはじめた。

 世界政府連合機関は、世界の国々の殆どが参加している、巨大機関のことだ。

 もともとは世界の平和の為に作られた組織。

 オホ国は世界政府連合機関だったが、追放され、世界の敵とみなされた。

 独自の路線で、成長を続けていたオホ国であったが、知っての通り、第一次オホンヌ大戦争で敗北し地に落ちていた。

 しかし、今、オホ国は復活を遂げようとしている。

 世界に認められようとしている。

 

 「では、今回の戦争の勝者であるオホ国が望むものは何か?。」

 

 ゼウスは、ヒメカの方をみて質問した。

 険しい灰色の瞳。

 白髪交じりで、肌に覆われた上下唇の部分と顎から長く白い髭が生えている。

 おそらくこの中で一番年配だ。

 

 「世界政府連合機関に再加入することと、戦争をやめることです。」

 

 「それだけか?」

 

 ゼウスは拍子抜けした様子でヒメカをみた。

 

 「はい。オホ国が信用を積み重ねて、世界各国から認められることが大事なので。」

 

 ヒメカは、はっきりと答える。

 

 「君は、よくわかっているね。」

 

 ゼウスは、二ヤリと口角を上げた。。

 

 「じぶんも彼女のファンになってしまいそうだ。」

 

 ゼウスは、冗談めいた口調で、嬉しそうに笑う。

 

 オホンヌ秘密会議中がどよめく。

 ゼウスが笑うのは珍しいことらしい。

 

 「おれたちは負けてない。」

 

 アヘガオイッテルノは、頑固に首を振った。

 気の強そうなおじさんだ。

 

 「そうだ。おれたちはまだ降伏などしていないぞ。」

 

 アアンキモチイノは、アヘガオに同調した。

 普段は敵対している二大超大国の首脳が、協力し合って、オホ国に対抗しようとしている。

 気持ち悪い。

 

 「わかりました。ここは、和平を結ぶというのでどうでしょうか?戦争はなかったことにしましょう。」

 

 ヒメカは、2人の間に入って、提案した。

 

 「なかったことだと?。」

 

 アヘガオは、威圧的な態度でヒメカを睨んだ。

 

 ヒメカは、もの動じせず、アヘガオを見返した。

 

 「なかなか、どうして。肝の据わったお嬢ちゃんだ。」

 

 アヘガオは感心した様子で目を丸くした。

 

 「いいんじゃないでしょうか?。戦争は、勝ち負けつけず、おあいこってことで。これからは仲良くしていきましょうよ。ね?。」

 

 ンゴおイクんゴよは、感情の読めない笑みで、間を持った。

 本当は何を考えているのだろうか。

 目が開いていない。

 ずっと笑みを浮かべている。

 心は笑っていないのだろう。

 どこか冷たさを感じる。

 

 「あたしも賛成。オホ国とは協力していきたい所存です~。」

 

 んんっソコハダメェは、オホ国と友好的にやっていきたいという旨を明らかにした。

 どこか親しみの持てる顔つきと、声音をした女だ。

 んんっ国内でも結構人気ものらしい。

 もとは、女優だったのだ。

 

 「わかった。戦争のことは白紙に戻そう。」

 

 アヘ国首脳、アヘガオイッテルノは折れた。

 じぶんのプライドと世界一であり続けなくてはならないアヘ国のプライドとか、色んなものを諦めて、捨てた、重い一言だった。

 世界を牽引してきたアヘ国が、他国の交渉に、首を縦に振ったのだ。

 なかなか出来ることではない。

 じぶんは、アヘガオイッテルノの判断を、尊敬したい。

 

 「あなたのご判断は、正しいです。ありがとうございます。」

 

 ヒメカは、深々と頭を下げて、手を前に出した。

 

 「ああ、君にはやられたよ。」

 

 アヘガオイッテルノはヒメカの手を握り返した。

 

 「では、一応多数決を取ります。」

 

 ゼウスは、多数決を取る為に、紙を手渡した。

 

 静かに、投票が開始される。

 戦争はなかったことにするか、まだ継続中かどうか。

 

 「集計結果を発表する。全員一致で、この戦争はなかったことにする。」

 

 ゼウスは高らかに告げた。

 

 「これからは協力し合っていきましょう。」

 

 ヒメカは、首脳の1人1人に深々とお辞儀をして、握手をして回った。

 その様子は、全世界に配信されていて、コメントはヒメカ称賛の声で溢れ返った。

 

 『ヒメカ万歳、ヒメカ万歳、ヒメカ万歳―、』

 『私たちの神々がやりました。』

 『ヒメカ教は、世界をよくします。』

 『マジか~。本当にオホ国は、やったんだなあ。すげえ。歴史的瞬間に立ち会ってる。』

 『まさか、あのオホ国が、ここまで復活するとはねえ、復活どころかパワーアップしてるよ。』

 『この時代に生まれてきた奇跡に感謝。』

 『夢みたい。』

 

 「オホ国を8大国家の仲間入りさせてはどうでしょうか?。学べることも多いです。」

 

 ハアハアモットモットォは提案した。

 聡明な顔つきをした女だ。

 目が穏やかで、顔のパーツがある程度整っている。

 声音も落ち着いている。

 

 「いいンゴねえ。オホ国は、これから世界を牽引することだと思うし―、仲良くしていきたい。」

 

 ンゴおイクんゴよは、同調した。

 ノリのよさそうな男だ。

 

 「それじゃあ、9大国になっちゃうにゃあ。」

 

 ニュアにゃあは、笑った。

 

 多数決の結果、全員一致でオホ国は9大国が1つとなった。

 さらに、企業や大学、研究機関を通じて、共同研究をしていくこととなった。

 戦略喘ぎ声兵器についても、最先端の科学についても、共に研究し、開発し、競争していくのだ。


 

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