第二次オホンヌ大戦争3

 本土上空を羽と傘が押し寄せている。


 海から本土の陸へ上がった黒い脊椎は、黒い手となり、赤い髪の毛は赤い足となって、陸を攻め込もうとしている。

 戦略陸上兵器 ニョルニルが、黒い手、赤い足と交戦し、どうにか陸上からの進撃を食い止めている。

 

「本土の市街地にだけは、攻撃させてはならない、なんとしてでも食い止めないと―。」

 

 もう厭だ。

 街が破壊されるのはやめてくれ。

 

「銃、マシンガン。」

 

 おれは、空中から本土市街地へ向かって移動する羽と傘を、マシンガンで撃ちまくった。

 

 「うおおおおおおお。」

 

 アレスの人たちも、援軍に駆け付けると、マシンガンで敵を倒していく。

 

 「おれは、地上の黒い手、赤い足を食い止めて来る。空中は頼んだ。」

 

 おれは、アレスの人たちに空中を任せて、地上に降りた。

 

 「こりゃあひでえ。」

 

 オホ国海軍は全滅していた。

 戦略陸上兵器ニョルニルが、黒い手と赤い足とどうにか交戦しているが、もう限界といった様相だ。

 ニョルニルは戦車だ。

 自動操縦されている。

 人型に変形したりもする。

 

 「斬る。」 

 

 おれは剣を出して、黒い手と赤い足を、斬っていく。

 マッハ60で、移動し斬る。

 陸上におけるマッハ移動は、羽によるものだ。

 1ミリほど地上から身体を浮かせて移動し、超高速の剣で、斬るのだ。

 

 おれは剣の腕があるわけでもないし、運動神経がいいわけでもないが、カナちゃんの力の効果であろう。

 斬る直前、自動的に身体がかってに動く。

 

 「斬撃。」

 

 おれは斬撃を飛ばした。

 剣を振ると飛んでいくのだ。

 ギフトの力を使えば斬撃を飛ばすことも可能なのだ。

 ギフトという力は、強すぎる。

 万能感がある、ついじぶんに力があるのだと勘違いしそうになるが、これは、戦略オホ声兵器から付与されたものにすぎず、じぶんじしんはひ弱な人間なのだ。

 

 丁度それは、ゲームをしたりして、最強になった気持ちでいて、現実に帰って来た時に感じる、絶望感に似ている。

 魔法が使えるわけでもないし、万能なわけでもない。

 

 「どうにか、撃退したか。」

 

 あたりにいた戦略喘ぎ声兵器を、一通り、殲滅できたみたいだ。

 静かになった。

 敵の影もない。

 

 「やったのか?。」

 

 わからない。

 空虚な気持ちだ。 

 あれだけ、おれたちオホ国を苦しめてきたものが、この程度のものだったなんて。

 あっけない。

 世界中を相手にオホ国は、やってのけてしまったのか。

 実感が湧いてこない。

 

 この戦争での死者は数百人だった。

 そのすべてが、自ら望んで戦争に参加した者だけだった。

 殆どは、ロボットとロボット同士の殺し合いだった。

 AIとAIの殺し合い。

 人はその性能を競っていた。

 

 誰も死にたくはないのだ。

 命の危険を伴ってまで、戦争をしたくないのだろう。

 だから、軍事はロボットに置き換わった。

 最終的に、戦略喘ぎ声兵器を使ったが、あれは失われた旧時代の神によるものだ。

 

 喘ぎ声による力の解明は未だに、わかっていない。

 仕組みがまったく、わからないのだ。

 理論も確立されていない。

 ただ、喘ぎ声の力を使うと、奇跡が起きるという事実だけが先行している。

 

 おれたちは、戦争が終わったのを確認すると、オホンヌの街にある軍事拠点に戻った。

 

 「どうやら、オホ国は、難を逃れたみたいよ。よくやってくれたわ、ありがとう。」

 

 ヒメカは、おれたちに感謝を述べて、深々とお辞儀した。

 美しく凛々しい、姿であった。

 おれたちは、喜びに満ち溢れ、あたりは荘厳な雰囲気に包まれていた。

 

 「やった~!。」

 

 アレス自警団の人たち、陸海空軍の人たちは喜び、叫んだ。

 涙するものもいた。

 コワかったのだろう、死ぬかも知れなかったのだ。

 生き残れて、嬉しいのだろう。

 どれだけ、安心したことだろうか、達成感を憶えたことだろうか。

 どんな快楽よりも、気持ちいことでしょう。

 

 「あたしは、おまえたちの活躍を必ず無駄にはしない。世界会議で和平を結び、必ずオホ国を世界に認めさせる。」

 

 ヒメカは、宣言した。

 世界会議で、ヒメカは、世界中と和平交渉を結び、戦争をやめ、新たな時代を作ろうとしているのだ。

 

 『やりましたか。』

 『感慨深いですね。』

 『本当に、オホ国はやったのか?。』

 『なんか、実感わかないな。オホ国が本当に連合相手に?、夢みたいだ。』

 『やった~。』


 流れるコメントをおれはみていた。

 配信用ドローンロボットカメラが、戦争の様子を映していたのだ。

 決して戦争をエンタメ化してはならないが、世界中に中継されていたのだ。

 戦略オホ声兵器の存在も公にされた。

 ユキテクノロジカが新たな兵器も、知られた。

 オホ国の軍事力は、世界中に知れ渡ることになったであろう。

 

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