第二次オホンヌ大戦争2

 空には黒い羽が飛び交いはじめた。

 海には黒い脊椎が泳いでいる。

 

 禍々しく、おそろしい。

 無数の目が、黒い羽に黒い脊椎に埋め込まれている。

 小さな手が埋め込まれている。

 不気味な生命なのか非生命なのかわからないような物体。

 成分は、勿論わからない。

 

 陸に上がると、黒い手に変化するのであろう。

 

 アヘ国発祥といわれている、戦略アヘ声兵器によるものだ。

 

 アンアン国は、アヘ国と敵対しているはずなのに、どうしてか、オホ国をアヘ国と協力して連合に加わってしまった。

 

 おれたちもかつては連合だったが、追い出された。

 

 アンアン国も戦略喘ぎ声兵器も持っている、戦略アンアン兵器。

 

 空を飛ぶ赤い傘

 海を泳ぐ赤い髪の毛

 陸を進む赤い足だ

 

 オホ国は12年前のオホンヌ戦争においても、アンアン国にこっぴどくやられている。

 アヘ国にやられて、壊滅状態のオホ国に追い打ちをかけるように、奴らはやってきたらしい。

 

 その後、アヘ国とアンアン国は、オホ国を壁として5年戦争を行い、ずっと冷戦状態だったのだ。

 オホ国の軍事力や経済力、あらゆる機能が弱まったのは、オホ国が壁として、戦場として5年の間、使われたからだ。

 

 黒い羽と赤い傘は、戦略空中兵器カロアナをいとも簡単に、蹴散らし、墜落させる。

 

カロアナは爆撃機と戦闘機を兼ね備えたステルス機能のある機体。

最大速度マッハ30の記録を出す、超音速飛行の次世代型、航空機。

マシンガン、ミサイル、超電磁砲を搭載している。

人工知能により制御され、敵の攻撃を躱し、的確に攻撃をし、敵を倒すカロアナが、いともあっさり、黒い羽と赤い傘によって、無残にも海に落ちていく。

 

 「嘘だろ―。」

 

 眩暈がする。

 おれは、オホ国、上空と海上で行われている熾烈な戦いに釘付けになった。

 

 「マズい、本土に入って来るぞ。」

 

 ミカヅチさんは、諦めかけて、目を瞑っていた。

 

 「カナちゃんの出番ね。あんたも出陣よ。」

 

 ヒメカは、やむおえないといった様子で、少し顔を歪ませ、唇を噛んだ。

 

 「結局こうなるのか。」

 

 おれは、億劫な気持ちになった。

 死にたくねえなあ。

 戦いたくねえなあ。

 しかも機械相手だ、機械になんて殺されたくない。

 機械の向こうで人が操縦している場合もあるが、だいたいは全自動だ。

 いやで、いやでしようがない。

 

 「行こう、ハルト。」

 

 カナちゃんは、やる気だ。

 白い翼を広げ、軽く宙を舞った。

 

 「わかったよ。」

 

 おれは覚悟を決めた。

 

 カナちゃんは、戦略オホ声兵器の唯一の生き残り。

 カナちゃんを研究することで、ユキは戦略オホ声兵器を用いた、新たな武器を製造し終わっていた。

 戦略オホ声兵器自体を作る事はユキでも出来なかったが、戦略オホ声兵器の使う武器を製造することは可能だったのだ。

 

 戦略オホ声兵器

 

 銃

 弓

 刀

 ロケットランチャー

 鎧

 羽

 ビーム

 盾

 鱗

 

 戦略オホ声兵器カナちゃんの能力の一部を、現代の武器や防具に込めて、具現化したものだ。

 名を「ギフト」という。

 ギフトは、カナちゃんが力を使った時、道具にも力が宿る仕組みらしい。

 普段はただの置物にしかならず、能力は付与されない。

 

 「アレス自警団!、おまえら特訓の成果を出す時だ。」

 

 スサノオさんは、立ち上がった。

 ギフトが開発されてから、アレス自警団は、ギフトを使った特訓を続けてきた。

 森も猛獣たちと戦い、人工知能で動くロボット兵団と戦い、鍛錬を積んできたのだ。

 おれも、付き合わされた。

 一番最初にこのギフトの力を使いこなせたのが、偶然、おれだったからだ。

 前のオホーヌ襲撃の時におれが咄嗟にやった射撃は、ギフトによるものだったのだ。

 

 「おおおおおおおおおおお。」

 

 アレスの皆様もやる気まんまんだ、祖国を守ろうと叫びなさっている。

 ギフトを装備した3000人の先鋭部隊が、集まる。

 

 「行きますよ。」

 

 カナちゃんは、力を解放した。

 

 「ぐああああああ。」

 

 苦しそうな呻き声とともに、背中の羽が赤く染まる。

 

 カナちゃんの力に、ギフトが反応し、身体中にエネルギーが流れているのを感じる。

 皮膚を透過し赤く輝いてエネルギーの経路がみえる、神経が輝いているようだ。 

 

 「羽。」

 

 おれは、羽の力を呼び出した。

 背中から羽が、ニョきっと生えて来て、じぶんの意思でバサバサと動かした。

 飛べる。

 羽をはためかせて飛んでいるわけではない、物理法則に反した浮遊の仕方をするのだ。

 おそらく羽の力は重力を解さず、空を移動する能力なのだろう。

 

 ギフトの力はイメージが大事になってくる。

 移動する時、移動する場所をイメージして、方向を決める。

 羽はしっかりと、イメージに応えてくれる。

 マッハ50はくだらないが、身体への負荷はない。

 物理法則を無視している。

 

 ビューんっと飛んで、本土上空を飛び越え、海上、空高くに出た。

 四方八方、敵がいる方角へ、5人チームで、それぞれ飛んでく。

 空は、羽と傘で覆われている。

 無残にも、カロアナは墜落させられていた。

 

 「銃。」

 

 バン、バン、バンと、黒い羽と赤い傘目掛けて、銃を撃つ。

 的確に狙って撃っていく。

 アレスの人たちも、次から次に、撃っていく。

 

 「数が多すぎる。」

 

 羽にしても傘にしても数が多すぎる。

 海では、黒い脊椎と赤い髪の毛が、うじょうじょと泳ぎ攻撃し、オホ国の艦隊を次から次に沈めていく。

 

 アレスの海上部隊は、海における連合の進撃を食い止めようと、鱗の力を使って、海に飛び込む。

 鱗の力は、水中を移動する能力だ。

 水中をマッハ30で移動できる。

 アレスは黒い脊椎や赤い髪の毛を、銃で撃ち灰にしていく。

 

 「キリがない、ビームを使うぞ。」

 

 おれは、ビームの装填した。

 両腕に力を籠める。

 エネルギーが溜まっていく。

 

 「ビーム発射!。」

 

 おれは、黒い羽どもと赤い傘を惹きつけて、一気にビームで葬った。

 アレスの人たちも、ビームで、敵を焼き払う。

 

 しかし、まだまだ敵軍は、減らない。

 

 「マズい、このままでは本土に上陸されてしまうぞ。」

 

 3分の2ほどの戦略喘ぎ声兵器を亡き者としたが、3分の1ほどはまだ殲滅し切れていない。

 

 「一部の戦略喘ぎ声兵器が本土に上陸しました。」

 

 アナウンスが鳴り響く。

 

 「はやく、援軍に行かないと。」

 

 本土には、オホ国軍の人たちが、迎撃ミサイルと超電磁砲を装填して、準備している。

 港でも海軍が迎撃の準備をしている。

 どうにか、持ちこたえてくれ。

 

 オホ国本土へ戻ると、海軍も空軍も壊滅寸前だった。

 

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