ザコキャラって忘れられやすいよね。
「なんとか、全部やれたか。よかった。」
おれはへとへとになった。
どうやら、全部撃ち落せたらしい。
神が降りてきたのだ。
頭に、気が付いたら、おれはお空を飛んでいる戦闘機群を、夢中で撃っていた。
きがついた時には、絶滅させていたのだ。
「でも、次は同じような奇跡は起きないだろうな。」
おれは、俯いて暗い気持ちになった。
あれは、偶然だ。
オホ国が滅びていてもおかしくはなかった。
オホーヌは甚大な被害を被ったわけで、国力はまた失われた。
ただ、どうにか、侵略だけはされずに済んだ。
ここで負けていれば、またどんな、仕打ちを受けていたかわかったものではなかった。
敗北者に、口などないのだ。
「あたしの認識があまかった。」
ヒメカは、懺悔した。
「カナちゃんのこと。戦略オホ声兵器のことをもっとちゃんと、調べておくべきだった。」
「過ぎたことだよ。」
おれは、いった。
「黒い手の解析終わりましたよ。」
ユキはいった。
「ありがとう。」
ヒメカは、オホ声経の力で、黒い手を鎮めた。
「このままでは、いつオホ国が滅びてもおかしくはない。」
ミカヅチさんは、息を荒げていった。
「ヤバいかもなあ。どうにか、国力をつけないと。世界の中で孤立するのもマズいが―。」
スサノオは腕を組んで考えこんだ。
「世界中が、ユキテクノロジカを畏れているのだけは確かだ。」
ソピアは、国会議事堂の地下から出て来て、いった。
「じゃなかったら、いきなり空襲なんてしないわよ。」
ウェヌスは困ったように眉を顰めた。
「どうにかして、平和条約を結ばないと、オホ国は終わりじゃ。」
内閣総理大臣のポチは、しょんぼりとしていた。
「世界会議で、説得できるだけの力が本当に、ユキテクノロジカにはあるんだろうな?」
アポロンは、訝しんだ。
「わからないわ。ただ、こうなってしまった以上、あたしたちはアヘ国とアンアン国に喧嘩を売っているようなものよ。」
ウェヌスは、俯いた。
「ヤバくないか普通に。やっぱ犬でよかったんじゃあ…。」
総理大臣のポチは葬式にでもきたかのように、しょんぼりとして、元気がなかった。
「ポチの方が幸せだったかもな。ははははは。」
アテナさんは、面白そうに笑った。
「しかもこの惨状は、ライブ配信で世界中に晒されている。終わったな。」
ラクチェさんは、おれを睨みつけた。
「明日明後日、いつ他国が攻めてくるのかもわからないのにな。」
イムは呆れた様子で、おれたちをみて、唾を吐き捨てた。
「今回で死んだのは、データ解析の結果だいたい1万人ほどだと推定される。」
ラクチェは、淡々と述べた。
「酷いわね。」
ミューズは、涙を流した。
「オホ国再建なんて、バカなこと許したからよ。」
ミューズは泣き崩れた。
「はははは。おもしれえ大の大人な泣き崩れたやがる。ふえええええい。」
アテナは面白いものでもみるような目で、ミューズをみて、笑った。
「あんたは呑気でいいわね。」
ミューズは、アテナを睨みつけた。
「おーコワ~い。あたしは、ヒメカちゃんだっけ?好きだよ。面白いじゃん、変化がない世界なんてつまんない、ゲーム以下だよ。」
アテナは、優しくヒメカに微笑みかけた。
「誰だって失敗するよ。」
アテナは、ヒメカの背中を叩いた。
「甘いなアテナは。」
フェシスは、吐き捨てるようにしていった。
「オホ国が、外の国とやり合うにはあと10年ははやい。無理だ。」
フェシスは、いった。
「その10年を、本当に、おまえらが埋められるのか?」
フェシスは品定めをするような目でおれたちをみる。
「でも、オホーヌは灰にならなかったよ。」
アメノは、いった。
「確かに。」
声を揃えて、オホ国秘密会議の参加メンバーたちは首を傾げる。
「これまで、アメノの予想は外れたことがなかったのに。」
ウェヌスは、首を傾げる。
「たぶん、運命が変わったんだよ。」
アメノは、空を見上げた。
「運命が変わる?」
ミューズはききかえした。
「因果が変われば運命は変わるよ。あそこで、君がちょっとの勇気で、銃を持った。それが、歴史を変えたんだ。」
アメノはおれの方をみる。
「え?おれが?」
「ああ、そうだ。君は平凡なやつだ。本来会議に来ちゃダメな、只人だ。」
なんか、おれdisられてないか?
「でも、だからこそなんだろうね。運命を変えられるようなやつは、因果の外からやって来るんだ。あたしさえ見落としていた。ザコキャラって忘れられやすいよね。」
ザコキャラ?
は?
酷くないか。
「運命が変わったからといって、オホ国が助かるわけでもなかろう。」
チアは、冷静に判断した。
「まあ、そうだね。」
アメノは答えた。
「ま、こうなってしまえば後の祭りだ。オホ国も全面的に君たちを手伝おう。」
チアは、決心した様子で、いった。
「ありがとうございます。」
ヒメカは、複雑な気持ちだろうが、礼をいった。
いつもの自信がなかった。
覇気のようななものがなくなっている。
「頼む、情け無い話だが、君たちに俺達、大人は賭けたんだ。」
チアはヒメカの頭をポンと撫でて、背中を叩いた。
ヒメカは悔しそうに、唇を噛んだ。
涙を流していた。
「情けない、情けない、情けない、情けない。」
そんな声がヒメカの背中からきこえた気がした。
「ごめんなさい。ちょっと、今は休みたい。あたし、バカだ。」
ヒメカは、ぐったりと疲れた様子だった。
「おれが、面倒みます。ヒメカはきっと、やってくれます。」
「いい相棒を持ってるんだな。ヒメカくんは。」
チアさんは、眩しいものでもみるように、おれたちをみた。
「頑張ってくれよ。若いものたち。」
そんな声がきこえた気がした。
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