国会議事堂地下、オホ国秘密会議場
「出るわよ、ルイ爺。」
「畏まりました、ヒメカお嬢様。」
車で、国会議事堂に向かう。
「場違いな感じがする。」
おれは、肩身せまそうに、国会議事堂の前に立っていた。
「あんたねえ、堂々としなさいよ。」
ヒメカは呆れた様子で、苦笑いした。
「うぅ。」
「ほら、配信はじめて。」
そうだ。
会議の様子を配信するんだった。
「入る前から、撮った方がストーリーがあっていいでしょ?。」
ヒメカは軽く右目を閉じてウィンクした。
「わかったよ。」
おれは、スマホを取り出して、配信をはじめた。
「国会議事堂に来ました。」
「どうも、ヒメカです。」
「ユキです。」
「カナです。」
「ハルトです。」
『お、配信はじまった~。』
『待ってました!。』
『ヒメカ様~。』
『ユキくん、かっこいい。』
『カナちゃ~ん』
『オホ国秘密会議、マジで、生配信するんだ。すげえ。』
おそらく、この配信は、世界中の人が注目していることであろう。
オホ国も焦っているのだ。
いつ、外から攻められてもおかしくはないから。
「来てくれたか。ありがとう、礼をいうよ。」
ミカヅチさんだ。
おれたちをみつけて、声をかけてくれた。
「どうも。」
おれは軽く会釈した。
「今日は、よろしくお願いします。」
ヒメカも、頭を下げた。
こういうところはちゃんとしているのがヒメカの憎めないところだ。
抜け目のないやつめ。
「秘密会議は地下でやるよ。」
「地下ですか?」
ヒメカは首を傾げた。
国会議事堂の地下に会議場があるだなんて知らなかった。
そもそも、配信で公開してしまっていい情報ではないような気がした。
「秘密会議なんでね、知られちゃダメなんだよ。」
「世界中に配信中ですよ。」
「今日から、公だな。」
切羽詰まっているのだろう。
それほどに、ユキテクノロジカの技術力と、ヒメカのオホ声経による黒い手の呪いの無効化は衝撃的な出来事なのだ。
国家の存続が危ぶまれるほどに。
地下へ向かう。
国会議事堂の地下には、通路があり、議員会館と繋がっていた。
「地下1階は、通路になってるよ。」
「ここからは、エレベータで降りよう。」
エレベータで地下深くまで降りる。
「地上から30mはあるよ。」
地下には、広場があった。
「戦争の時は、防空壕にもなるし、緊急時には重宝する場所だよ。」
ミカヅチさんは、微笑んだ。
「秘密会議は、国会とは一線を画すものでね、出席出来るのは一部の有能な者だけだ。」
「有能なもの?」
「審査を通ったもののことだ。」
「審査?」
「突出した能力、実績のあるものだけが参加を許される会議だ。」
ミカヅチさんは平然としていた。
民主国家の根幹を揺るがす発言だ。
「秘密会議で決められたことは、絶対だ。」
「絶対だって?国会、裁判所、内閣が絶対じゃないのか。」
おれは、困惑し、思わず発言した。
「国家の最高権力は、オホ国秘密会議にある。」
ミカヅチさんは、厳かにおれの目をみた。
「独裁じゃあないのか!。」
「うーん。確かにそうだが、1年に1度の審査に落ちれば、オホ国秘密会議参加権利は剥奪されるよ。」
ミカヅチさんは、答えた。
本当なんだ。
オホ国秘密会議は、国会で作られる法案、裁判所による判決、内閣の行う行政において、決定権を持つのだろう。
例えば、法律が通るか通らないかの問題。
国民の投票や、国会の多数決で決めるのが一般的だが、必要な時はオホ国秘密会議が法案を揉み消したり、成立させたりしているのだ。
裁判についても、国家にとって邪魔な存在を有罪にし裁き消して来たのだろう。
内閣を決める時も、都合のいい人物を入閣させ、総理大臣まで管理してきたのだ。
一般国民の預かり知らないところで、オホ国は運営されてきたのだ。
『ええ―。』
『衝撃の事実発覚。』
『会議前にこの調子かよ。』
『え?何、その謎の政治体制。』
『独裁ってわけではないよな…。』
独裁とは少し違うのだろうと思う。
審査の基準はよくわからないが、特別な業績を残した人間以外は、触れることさえできないのであろう。
凡人のおれにはわからない世界だ。
「オホ国秘密会議から脱落したものは、国の監視のもと一生を終える。」
「つまり、口外したものは処刑ということか!。」
ヒメカは声を荒げた。
「ああ、残念ながらね。」
「無茶苦茶だな。」
ヒメカは呆れた様子で、髪の毛を捲し上げた。
「マスメディアで、このことを知っているものはいるのか?」
「殆どいないね。」
「いるんだな。」
「ああ、ただし、オホ国が上層部を操っているがね。」
「傀儡ってことか。」
「そうなるね。」
オホ国秘密会議。
狂っているが、悪いともいえないものだ。
審査基準はわからないが、おそらく、通常人よりずっと賢い人たちが、国のことを決めているのだろう。
審査制なのだ。
ふさわしい人間を実績から選んでいく。
能力が低いのに、周りから支持された人が選ばれるよりは、マシなのかも知れない。
「面白いことしてんだな。」
ヒメカは、小さく呟いて、二ヤ二ヤ笑った。
「それだけ、徹底してても、戦争に負けたのか。面白いなあ。ははは。」
なんてやつだ。
ヒメカからしてみれば、オホ国秘密会議なんて、ただの余興にすぎないのかも知れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます