オホーヌの街
「もしもし。ミカヅチだ。」
「もしもし、ヒメカです。」
「オホ国秘密会議だが、5月28日日曜 午前10時から開始することになった。場所は、国会だ。」
ミカヅチとヒメカが電話している声がきこえる。
オホ国秘密会議がはじまろうとしていた。
我儘を通して、おれはオホ国秘密会議の内容を、配信することを許された。
カメラ持ちだ。
いつも通りにヒメカを撮りにいくのだ。
今日は5月27日土曜日の朝。
明日に備えて早めに、オホンヌを出て、昼頃オホーヌに着いて、オホーヌの街で時間を潰していた。
「お嬢様が国会デビューとは爺や、嬉しゅうございます。」
ルイさんは、ヒメカをみて、うれし涙を流した。
オホーヌに、運転手として来てくれたのだ。
カナちゃんと、ユキもいる。
おれたちは、オホーヌにある、レストランで、昼食をとっていた。
オホーヌでも評判のいい店らしい。
SNSでの評価も高い。
「僕たちも会議に出席しなきゃならないの?」
ユキは面倒くさそうな表情で、パスタをフォークで巻いて口に入れた。
「何いってんの、してもらわないと困るわよ。」
ヒメカは呆れた様子で答えた。
「めんどい。」
ユキは、あからさまに厭そうにした。
「あたしたちのことを世界中に、認知させるには、丁度いいのよ。」
認知ねえ。
これ以上、有名になってもいいことないようにおれには思えた。
「あと、あなたたちがいた方が、説得力も出るしね。」
説得力ね―。
確かに、ユキとカナちゃんは、特別な存在だし、秘密会議の場でも、役に立つかも知れない。
じぶんは―、どうなのだろう。
ただの、一般人で、至って普通の凡人。
でも、ヒメカはおれを選んでくれた。
3人の邪魔にならないようにだけは気を付けよう。
「私、兵器の出来損ないとして処分されないか心配だな―。」
カナちゃんは不安そうに俯いた
戦略オホ声兵器
この名前は教科書でしか耳にしないものだ。
実在さえ疑われる、かつてオホ国が世界大戦で利用した世界最強で最高の人型兵器 天使の裁きといわれ、畏れられたという。
カナちゃんの背中についている天使の羽は、戦略オホ声兵器だった証みたいなものだろう。
美しく愛らしい。
カナちゃんからすれば、オホ国がコワいのだろう。
戦争に利用され、戦わされていたのだから。
「食事も終わったところで、ホテルに行きましょうか。」
ヒメカは、手を叩いた。
レストランを出て、車でホテルに向かう。
「ありゃあ。」
高級ホテルだった。
思わず、声が漏れる。
「田舎者ね。」
ヒメカはおれを横目に、嘲笑した。
腹立つな…、お嬢様がよ。
「でも、おかしいな、誰も人がいない…。」
おれは、辺りを見渡して、首を傾げた。
「貸し切りよ。」
ヒメカは事も無げにいった。
「え?」
貸し切りってことは、こいつの家のホテルなのか。
「あたしの家の所有物よ。今日は、特別に貸し切りにしてもらったの。」
「お客さんはどうするんだよ?」
急にキャンセルになって大迷惑ではないのか?
「お客様には別のホテルに泊まって貰っているわ。」
ヒメカは答えた。
「すぐ隣にあるでしょ?」
ホテルの隣にも、ホテルがある。
「この辺り一帯、だいたい、あたしの家の建物なのよ。」
「あひへえ。」
「変な声出たわよ。」
ヒメカは、くすりと笑った。
「ヒメカの家、すごい。」
あのユキでさえ、感嘆していた。
ヒメカの圧倒的な、経済力に、おののいている。
「じゃ、行きますかあ。」
ホテルの中に入る。
広すぎて、ホテルの維持費の無駄だと思った。
客を入れて商売した方がよくないか?
「あたしたちは、お風呂に入って来るわ。」
ヒメカは、カナちゃんを連れて大浴場にいってしまわれた。
ユキと2人になった。
「僕は、部屋のシャワーで十分だよ。」
ユキは、パソコンを開いた。
「シャワー浴びるのもめんどうだなあ。」
ユキは億劫そうに、欠伸をして、プログラミングをはじめてしまった。
おれは、冷蔵庫から冷たいお茶を取って来て、コップに注いだ。
「はい。」
ユキに差し出す。
「どうも。」
「あ~、いいお湯だったあ。」
ヒメカとカナちゃんが大浴場から帰って来た。
風呂上りのヒメカは少し髪を濡らしていて、身体が火照っていた。
美しい。
「明日、オホンヌの自治を認めさせ、土地の権利を獲得する。」
ヒメカは、決意をおれたちの前で表明した。
できるのだろうか。
できなければ、まあ、犯罪者扱いされるだけなのだが…。
「オホンヌをあたしたちの治外法権にするんだ。」
「できるといいね。」
難しいと思うけど。
ヒメカといえど、オホ国政府を納得させられるとは思えなかった。
「やらなきゃオホ国は、破滅だ。」
ヒメカは、笑った。
「それじゃあ、寝ましょう。」
ヒメカは部屋の電気を消した。
「朝よ。起きなさい。」
朝5時半。
おれは目覚めた。
「さ、支度するわよ。」
ヒメカは、美しい黒のドレスに身を包んでいた。
似合う。
奇麗で、かっこよくて、美しい。
「カナちゃんは、これ来て、スタイリストに選ばせたとっておきがあるから。」
「嬉しいです。」
カナちゃんは、薄い水色と白のかわいいドレスに身を包んでいた。
かわいらしい!
みているだけで癒される。
国民的アイドルになっても、おかしくないな…。
「ユキは、これ着て。」
「え~、着替えるの面倒だなあ、ああ、だるい。」
「こういうのは雰囲気が大事なのよ!。」
ユキはしぶしぶ着替えた。
白衣を着ている。
博士、研究者というイメージだろう。
よく似合っている。
「で、ハルトは…。」
ヒメカが取り出したのは、濃く深い少し黒みがかった緑色のタキシードだった。
触ってみて、高級品だと分かった。
「着てみて。」
おれは、タキシードを着た。
「よく似合うわね。」
「かっこいいよ、ハルト。」
カナちゃんは、おれのタキシード姿をみて、目を輝かせた。
なんか、照れるな。
「よし、行くわよ!。」
ヒメカは、おれたちの背中を叩いた。
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