ユキテクノロジカ株式会社

 「金を作ろう。宇宙産業を買い占めるんだ。衛星を飛ばして独自の通信網を作るぞ。」

 

 ヒメカは、急に思いついたようにいった。

 5月6日土曜日のことであった。

 

 「どうやって?」

 

 おれは、首を傾げた。

 

 「会社を作って、ユキの作った発明品を大量生産して売りさばくんだ。」

 

 なるほど、それだったら、メティス株式会社からサーバー借りる必要なくないか?

 

 「メティス株式会社はいらないね。金が集まったら、オホ国中のよさげな会社をぜんぶ買収して、牛耳ってやる。」

 

 ヒメカはにやりと笑った。

 

 なんだったんだ。

 急に、方向展開する女だなこいつ。

 

 「人型監視ロボット、超再生医療、完全人体肉、は高額で売れる。ユキテクノロジカ株式会社という名前にしよう。」

 

 ユキという存在がもはや世界にとって脅威なのだ。

 これを有効活用できれば、文字通り世界を牛耳ることも容易。

 

 「商売を上手くやって、圧倒的信頼を得る、そして、総理大臣になって、やがて神になる。」

 

 「いいね。じゃ、やってみますか。」

 

 ユキは、人型監視ロボを大量に生産する工程をもう、確立していた。

 

 「あとは、貿易でもして、流通を上手くやれば大量生産も可能でしょうね。」

 

 ユキは、工程を説明した。

 

 「なるほど、面白い。超再生医療、ハルトを治したのは、命の糸と呼ばれる特殊な糸による効果だったのだな。だが作るには器具や入手の難しい薬剤が必要で金がかかるのか―。」

 

 ヒメカを腕組をした。

 

 「ユキテクノロジカ株式会社を設立しよう。」

 

 ヒメカは、会社を建てるらしい。

 

 「株式会社にするのか?」

 

 おれはきいた。

 

 「そうよ、取り敢えず資本金1000万と定款や登記などの必要な手続き、役員を決めて、オホ国の法務局へ申請しないといけないわ。」


 ヒメカは答える。

 

 「ぼくの発明品を商品として販売するのか―。考えたことはあったけど、金に困ってなかったし、会社にして売ろうと考えたことはなかったな。」

 

 ユキは、少し戸惑った様子だった。

 

 「本当に、ユキに出会えてよかった。確実にオホ国再建への道は開かれてきている。」

 

 ヒメカは、ユキの頭を撫でた。

 

 「オホンヌの街を再建して、独立行政をしよう。」

 

 あの戦争から、オホンヌ街の土地は国の所有になっていた。

 焦土となったオホンヌの土地を誰も持っていたいとは思わなかったからだ。

 復興の兆しもなかった。

 

 オホンヌに入るのは自由だが死んでも自己責任だとされてきた。

 自殺スポットとしても有名だった。

 黒い手の呪いによって簡単に死ねるだから。

 

 「オホンヌ再建配信をやりましょう。住人はまだあたしたちしかいないけれど、少しずつ、増やして、世界一の大都市にするのよ。」

 

 ヒメカは両手を広げて、夢を語った。

 キラキラと輝く彼女の目をみていると、不思議でじぶんも力になれるのでは?と勘違いしてしまいそうになる。

 

 「さっそくはじめるか。オホンヌ復興生配信。」

 

 ヒメカは、おれに目配せした。

 

 おれは、配信のボタンをタップした。

 

 『お、配信はじまった。』

 『楽しみだなあ。』

 『ゲリラ配信だ。』

 

 同接とコメントが、どんどん増えてく。 

 

 「今日からオホンヌ復興配信はじめまーす。」

 

 ヒメカの元気な声が、部屋に響く。

 

 おれたちは地下室から外に出た。

 

 相変わらずの瓦礫で、人が住めるところではない。

 

 「瓦礫の撤去からはじめよう。手伝ってくれる方いたら、来てくださいね!。土木建築に詳しい人いたら助かる。」

 

 瓦礫を撤去するにも手作業では、ほとんど不可能だ。

 重機とかで、持ち上げたりして運んだりしないとどうしようもない。

 

 頼みの綱はやっぱり、ユキのロボットやらのテクノロジーか。

 

 「ユキ、クレーンとか、フォークリフト、ショベルとかの撤去作業に使えそうな重機はどれくらいある?」

 

 「クレーンが2台、フォークリフトが1台、ショベルが1台ですかね。全部自動で動かせますし、勿論遠隔で操作も可能です。」

 

 「それを使おう。」

 

 「ただ、燃料とかの問題はあります。電力補給する場所もガソリンを入れられる場所もこの辺りにはないですしね。」

 

 オホンヌの周りに人は住んでおらず、近くの人の住んでいる所まで、100㎞以上はある。

 道路も破壊されたっきり復興しておらず、交通網は壊滅的だ。

 これらの問題をどうにかしない限り、オホンヌの再建はないだろう。

 交通は、街の発展の要になる。

 

 ではどうやっておれがオホンヌの街まで来たのかって?

 歩いてきたのだ。

 100㎞ほどの長い道なき道を野宿をしつつ3日かけて歩いた。

 

 「ルイじい、ガソリンをオホンヌまで運んでおいてくれ。燃料が必要なんだ。。」 

 

 ヒメカは、ルイに電話をした。

 

 「わかりました。どれくらいの量でしょうか。」

 

 「3000リットルくらいあれば十分だと思う。」

 

 「では、5時間ほどすれば、そちらに届くように手配しておきます。では。」

 

 「ありがとう。」

 

 なかなかに人使いの荒いお嬢さんだ。

 先が思いやられる。

 

 「あまり金を無駄遣いはしたくないわね。でも必要なものは買わなくちゃいけないわ。」

 

 ヒメカは、ボソりと呟いた。

 金持ちのお嬢さんでありながら、倹約の精神も持っているらしい。

 

 ロボットと、重機を動かし、瓦礫を撤去していく。

 

 『すげえ。近未来的だ。』

 『自動で動くってすごいね、あとロボットが考えて動くの賢すぎる。』

 『脅威的かも―』

 

 コメント欄は、ユキのテクノロジーに驚く声で溢れた。

 

 

 

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