久しぶりの配信と衝撃の事実。

 『配信はじまった!?』

 『大丈夫か?』

 『ハルトくん、生きてる?大丈夫?』

 『昨日の瓦礫落ちてきたやつ、まじで、心臓止まるかと思った。』

 『死んでたらニュースになるだろ。ってか、普通死ぬくね。』

 

 配信をつけるなり、コメントが滝のようにドバーっと流れて来る。

 1万、2万―、5万とどうじ同時接続がどんどん増えてく。

 気持ちい。

 嬉しい。

 ありがたい。

 おれたちの配信が、求められている。

 

 「どうも、皆様久しぶり。」

 

 おれはスマホを三脚に固定すると、カメラに映った。

 

 「どうも、ご心配をおかけして、ごめんなさい。」

 

 久しぶりだな、カメラにちゃんと映るのは。

 胸が高鳴る。

 ドキドキ、してる。

 好きだ。この感じ、ライブ感。

 視聴者がちゃんといる配信の緊張感、心地ちいい。

 

 『生きてた!』

 『よかったああ!』

 『完全に瓦礫の下になってのに、ほぼ無傷!?どうなってんだ!!。』

 『奇跡かな?』

 

 おれの無事をみんな喜んでくれている。

 驚いて、困惑している人もいるな。

 

 「生きてます。死にかけたのですが、救助されました。」

 

 『救助!?』

 『どういうことやあ?詳しく話きかせてみい?。』

 『気になる』

 

 「それはぼくが、治したからだよ。」

 

 配信の様子をタブレットで確認していた、ユキはいった。

 ユキは違和感なく、会話に参加していた。

 

 『誰?』

 『また人増えたの?』

 『めっちゃ美人じゃん。』

 

 「ぼくは、ユキ。」

 

 「ユキは、あたしたちの仲間になったのよ。一緒にこれから配信とか探索をやってくわ。」

 

 ヒメカは、ユキが仲間になったのだと、視聴者に共有した。

 彼女が、ユキが仲間になったのだと、視聴者達にいうことで、確かなものになったような気がする。

 ヒメカが、おれたちの中心的存在になっているのだと再認識した。

 

 『どうやって、治したの?』

 

 「手術です。ちょちょいと身体中の骨が折れて、ぐちゃぐちゃだったので、入れ替えました。」

 

 ユキはさらっといった。

 カラッとしたところがいいなあと思った。

 思ったらすぐ行動に出るところ、純粋で、活動的だ。

 

 『入れ替えるってどういうこと!?』

 『まあた、オホ声経の力か?』

 『濃いキャラが出てきましたね。だいぶんぶっとんでますよ。』

 『詳しく説明してええ。』

 

 「グサっとやってボキっといれて、シュシュシュとやるわけです。」

 

 ユキは答えた。

 

 『感覚的すぎて何言ってんのかわからん。』

 『天才ってやつかな。』

 『バカなだけでしょ。』

 『なんか、かわいいな。』

 

 「実物みせますね。」

 

 ユキは、美少女を持ってきた。

 美少女?というよりそれは、美少女に酷似した人体模型だった。

 模型なのか?

 いいや、なにか違う。

 

 「これは、魂なき肉体でしてね。」

 

 『魂なき肉体?』

 『なんか不気味なんだけど。』

 『コワい。』

 『死体なんじゃ―。』

 

 「人工的に作った肉体です。魂と心はないです。けれど、遺伝子やDNA、骨の構造に至るまで人を再現しています。」

 

 『あ、これ近未来テクノロジー来たわ。』

 『なに、SFの世界かな?』

 『CGじゃないの』

 『CGにしてはリアルすぎるし違和感がない、まさか本物なんじゃ。』

 

 「本物ですよ。血も出ます、内臓もありますし、骨だってほら。」

 

 ユキは、かよわく美しい美少女の肉体を、刃物で切り付けた。

 ダラりと血が流れる。

 

 「ほらね。ちゃんと出るでしょ。」

 

 ユキは嬉しそうに笑った。

 

 「あと、骨と内臓もみせますね。」

 

 ユキは、美少女をノコギリでギコギコと切って、骨を取り出し、内臓を取り上げた。

 

 「どうです?これはちゃんと動いてます。でも生きてはないんです。」

 

 思わず、おれは吐いた。 

 吐いた。

 吐いた。

 

 グロっつ。

 「おええええええええ。」

 

 閲覧注意!閲覧注意!閲覧注意!

 

 最悪だ。

 なんてこった、そりゃあないぜ。

 情緒がおかしくなっちまう。

 ちゃんと息をしていた。

 血色が通っていて、あたたかかった。

 

 でも、意識はなかった。

 ただの肉体で、死んでいるのだ。

 

 「この骨や臓器を、縫い合わせて移植したんです。すると、結合し合って、ハルトくんは一命をとりとめました。よかったです。」

 

 ってことは、おれは、人工的につくられた肉体で縫合されて、命を繋ぎとめたってことなのか?

 しかも、生きていない、ただの細胞で肉の塊で―。

 生きるってどういうことなのだろう。

 生きていることが不思議になってきた。

 奇跡だ。

 おれは今、生きている、感じていられる。

 

 世界を作り出していられる。

 では、生成型人工知能は、命と呼べるだろうか。

 おれは、世界を認識し、世界を再構築し出力し続けている。

 これが、命なのだろうか、生きているということなのだろうか。

 

 おれは、気が動転して、考え込んでしまっていた。

 

 『えぐい。』

 『垢バンされるぞ。グロすぎる。』

 『うわああ。これはちょっと引くかも』

 『いいね。美しい肉体だ。』

 『えっちだなあ。肉体が切られていくのも、壊されていくのもえっちで興奮するなあ。』

 

 コメント欄は、混沌としはじめていた。

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