第二話 邂逅! 新たなる魔法の少女!
007 氷人形は律儀な娘
「まったく、あいつらときたら……」
放課後の教室。この場にいない生徒達を思い、怒りを募らせる。猪瀬、鹿甲斐、蝶野という三人の女子生徒達、通称花札トリオ。本来、今日の教室の掃除当番であったやつらだ。
「仕事を放り出すってことが、まわりにどんな迷惑をかけるのか、今度思い知らせてやる」
本来四人の掃除当番。けれど、花札トリオは『用事があるからー』とさっさと帰っていってしまったのだ。残された一人に全て仕事を押し付けるなど、無責任にも程がある。
「ほんと、百合乃(ユリノ)さんみたいに、みんな真面目ならどれだけ楽か……」
唯一残ってくれていた掃除当番であった少女、百合乃リリィに向けて、私は嘆息する。
長く伸ばされた煌く白銀の髪に、透き通るような蒼い瞳、日本人らしからぬモデル染みた体型。リリィという名前も含め、ひと目で異国の血が入っていると分かる美少女である。
「気にしてない」
そっけなくそう答える表情は、確かにその言葉通り気にしてないように風に思える。まるで人形のように整った相貌は無表情で、怒りも不満も見て取れない。基本的にあまり表情に感情を出さない、クールなクラスメイトなのである。
「私が納得いかないのよ。自分のやることはちゃんとやる、高校生なんだからそれぐらいの常識は持って欲しいわ。あいつらのせいで、あたしも色々苦労してるんだから……」
「ごめんなさい、委員長」
「あー、百合乃さんが謝ることじゃないって、悪いのは三馬鹿なんだから! それに、手伝いもあたしが好きでやってるだけだからさ。いつも助けてもらってる御礼でもあるしね」
謝ってくる百合乃さんに苦笑する。しかし確かに、彼女に対する文句と取られても仕方ない内容だったかもしれない。そんなつもりは無かったのに、変に気を使わせてしまった。
容姿や様子から氷人形(アイスドール)なんて異名を持つ彼女だが、とても優しい娘なのだ。クラスの仕事で手間ったときなんかに付き合ってくれるので、いつも助かっている。
「と、これで大体はいい感じかな? まぁ普段に比べるとちょっと簡易だけど、二人でやるんだから仕方ないわよね。このぐらいで終わりましょうか、百合乃さん」
「ん、分かった」
ある程度目立つゴミを片付けて掃除を切り上げる。あたしも百合乃さんも話しながらもしっかり手は動かしていたし、真面目にやれば掃除なんて長いものではないのである。
「それじゃ、また月曜にね」
「また」
そのまま二人で校門まで来たところで、そう言ってあたし達は逆方向に分かれる。帰り道が反対なのだから当然なのだが、正直今はそれがとてもありがたい。
何故なら――、
『さぁ、今日も張り切って魔法少女を探すですよ!』
なんて意気込む、謎の触手生物が鞄の中には入っているのだから。
――――――――――――――――――――――
とりあえず初回更新はここまでで。
次回より毎日18時に1話投稿していきたいと思います。
触手好きな方、百合好きな方、ツッコミしたい方、どうか最後までお付き合いいただけると幸いです。
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