006 幕間 円卓の少女達
何処かにある、大きな円い机。そこに着いているのは、十二人の少女達。
基本的には中学生から高校生程だろうか。年齢はばらばら、その雰囲気も快活そうだったり、落ち着いていたりと様々。けれど共通点として、皆一様に奇抜な格好をしている。
「魔力を奪われた……?」
円卓に座る一人が戸惑いの声を出す。更に、そのまま報告をした少女へと問いかける。
「そんなこと、ありえるの?」
「分かりません。ですが、現に魔力を限界まで吸われた娘が送られてきたんです。しかも、彼女をこちらに転送した娘とは、連絡が取れなくなっていますし……」
自ら報告をしながらも、少女自身も分からないという風に声が小さくなっていく。
「その、送られてきた娘からはなにか聞けないの?」
「いえ、それがまだ目を醒まさなくて。悪い夢でも見てるのか、うなされているんです」
続けての問いにも、少女は困り顔で首を振る。彼女自身詳しいことを聞こうと思いはした。けれど、問題の娘はいつまで経っても目覚める気配がなかったのである。
「そう……、詳しいことはその娘が目を醒ますまでは分からないわね……」
「けど、初めてだよね、こんなの」
「えぇ、そうね。これは、由々しき自体だわ」
円卓に座っていたほかの少女達も、口々に声を漏らす。けれど、報告をした少女とは違い困っているというより、何か分からないことがおきたことへの興味という印象が強い。
「じゃあ、私行ってきていいかな? 謎の敵って興味あるし、なんだか楽しそうじゃない」
一番興味津々、と言った様子で話を聞いていた少女が声を上げる。
「ちょっと、なにを勝手な。そもそも、まだ敵と決まったわけでは……」
「だって、ぜんぜん闘ってないんだもん。これじゃ、つまんないし、身体が鈍っちゃうよ」
「いいじゃない、行かせてあげれば。今はそこまで忙しくないのも事実だし、わたし達なら、万一本当に敵がいたとしても大丈夫でしょう」
「やったぁ、さっすが紅弓姉、話がわかる! それじゃ、さっそく行ってきまーす!」
言うが早いか、彼女は他の少女達の思いなど気にせず、円卓の部屋から飛び出していく。
「もぅ、あんなこと言って……」
「マリアちゃんは心配しすぎなのよ。大丈夫よ、曲がりなりにもあの娘だってわたし達と同格なんだから? もし、何かに襲われたってしっかり倒してくれるわよ」
「そういうことを言ってるんじゃありません。もう、姫様に怒られるのは私なんですよ」
「ごめんごめん、ほら、ゆるしてよ」
マリアと呼んだ少女を、大きな胸で包み込むように紅弓と呼ばれた少女が抱きかかえる。
「うぅ、私の方が序列は上なのに……」
「仕方ないじゃない、もともとマリアちゃんは私の妹なんだから」
むぎゅっと、さらに紅弓はマリアを強く抱きしめる。
納得行かない、という風に不貞腐れるマリアだが、どうにもならないことは彼女が一番よく分かっている。この場における誰よりも、紅弓との付き合いは長いのだから。
「うふふ、可愛いわねぇ。こうなると、悪戯したくなっちゃうわ」
「あっ、ちょっ、お姉さまぁ……」
紅弓はマリアを抱きかかえたまま、彼女の耳を甘噛みする。まるで官能に酔いしれるかのように、たったそれだけのことでマリアが艶めいた声を上げる。
その様子に、「……また始まった」と諦めたように他の九人が溜息をつく。
「ねぇねぇ、そういえば魔力を奪われた娘がいたのって、どこだっけ!」
結局、出て行った少女がそう言って戻ってくるまで部屋には嬌声が木霊するのであった。
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