18 Sightseeing via Incomplete Regions for Eris (and May)

エリスはユノから与えられた、デフォームドプラントのクイーンを遠隔操作する仕事によって立ち直り、店でも普段通りの調子を取り戻した。

4日連続営業でのミスと翌日の臨時休業で心配していた常連客も、いつものかわいいエリスが見られて安堵した。


ある日、長時間続けていた遠隔操作から少しだけ離れた際に、エリスはユノへ話しかけた。

「仕切り直しの限定ミッションの時には、これのような仕組みを追加で実装してみたいです」

「いいわよ。

 エリスちゃんのヘクセンベルクだけでなく、アンネちゃんのデモーネンタールも追加要素が欲しかったら入れるわ」

「ところで、パーティやアライアンスの結成が実装される時期…いつになるのでしょうか。

 早く、私のヘクセライでたくさんのプレイヤーの心を弄びたいです…うへへ…」

「エリスちゃんが新しい趣味に目覚めてしまったことは何も言わないでおくわ…。

 それで、パーティの実装は早くても仕切り直しの限定ミッションが終わってからになるわね。

 USOが荒れた原因の1つだから、デフォームドプラントのエリアのように区域を限って、パーティやアライアンスに類似したシステムを採用し、そこでの様子をしばらく見た上で実装するかどうか、慎重に判断しないといけないのよ。

 そういう意味で、ヘクセンベルクの期間限定フロアを"2例目"にすることはよい試金石になるわ」


エリスとメイ、ユノが相談した結果、プレイヤーがまだ1人も足を踏み入れていないヘクセンベルクの期間限定フロアを一部改装し、USOLで追加予定ながら未登場であるモンスターのうち、不定形の体に無数の触手と6つの目がある"アウゲンシュプーク"を使うことにした。

その日は期間限定の魔物が出現する最終日でもあり、明日からようやくシュテルンシュタットの外に出られるため、エリスはとてもご機嫌だった。


次の日、早速エリスとメイは久しぶりにシュテルンシュタットから出て、ハイリゲンヒューゲルへ向かった。

期間限定ミッションの際にミトが遭遇したホワイトフォックスは当然ながら現れず、ロングファーラットやレオパードスラッグ、ストライプドスネークたちを魔石に変えながら、2人は無傷でハイリゲンヒューゲルに到着。

期間限定ミッションがわずか1日で終わり、周辺から期間限定の魔物もいなくなったハイリゲンヒューゲルにエリスたち以外のプレイヤーはおらず、時間の許す限り2人は外でのデートを楽しんだ。


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2年後、エリスとメイは数日前に一般公開されたばかりの新エリア"ミドガルド"に来ていた。

すでにこのエリアのボス"ミドガルドシュランゲ"を撃破したプレイヤーもいるらしいが、2人が今のところミドガルドシュランゲに挑む予定はない。


もともとの予定を大幅に変更し、リリースを前倒ししたUSOLには多数のバグがあった。

運営側は通常のサービス提供や新エリア展開を継続するかわりに、数度のメンテナンスでいくつかの機能についてバグフィックスのため仕様変更や削除を行い、それによって期間限定ミッションの今後の実施を断念。

USOLで行われるはずだったいくつかのイベントはUSOで実施されることとなった。

当然、少なくない数のプレイヤーがアカウントを削除し、USOLから離れた。

ただ、USOの治安の悪さを嫌ってUSOLを始めたプレイヤーの多くは運営側の判断を高く評価。

イベントが盛りだくさんのUSOと、女性だけの世界で変わらない日常を楽しめるUSOL、という棲み分けがされることとなった。


エリスのヘクセライとトイフェライも、仕様変更に伴ってできることが大幅に制限された。

だが、その代償としてユノ経由で運営からもらった"エントシュルディグングシュタイン"を素材にして、エリスはメイのために"エリトリンシュヴェーアト"と"エリトリンシルト"を造った。

エリトリンシュヴェーアトはメイ用の剣で、攻撃で敵のPHを減らすと使用者のPHを回復する特殊効果が実装されている。

また、エリトリンシルトはエリス用の盾で、物理攻撃を受け止める盾本来の用途のほか、ヘクセライを発動させる際の媒介として必須のものとなる。


赤紫色の剣と盾を携えて、2人は未知の大地を歩き始めた。

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