17 デリュージョン
「エリスちゃんもアンネちゃんも残念だったけど、あくまで問題があったエリアはエルステ・パゴーデだけだから、今回中止になった分は、エルステ・パゴーデ以外の3か所から2つに絞った上で近いうちにやり直すつもりよ」
ユノからはそう言われて慰められたが、期間限定ミッションが中止になっただけでなく、運営側の立場である故に、エリスたちは期間限定の魔物がいる間シュテルンシュタットから外に出られなくなってしまった。
それでも3日間は店の通常営業を無難にこなしていたエリスだったが、次の日に初めての4日連続営業でミスをしかけると、その日の営業終了とともに"限界"を超えてしまい、ログアウトした後明子はしばらくエリを慰めていた。
さすがに次の日は店を休業とし、エリスとメイはユノに会いに行った。
「このままエリスちゃんがUSOLを嫌いになってしまって遊びに来てくれなくなると困るから、代わりのお仕事をあげる。
本当はもっと後にやってもらうつもりだったのだけど、エリスちゃんにはボスクラスの敵キャラを遠隔操作してもらうわ。
この"デフォームドプラント"のマスター、通称"クイーン"は他の敵キャラ同様、通常は運営側の用意したプログラムで動いているのだけど、いやじゃなければエリスちゃんが行動を指示してあげて」
デフォームドプラントが有する能力について聞いてから、エリスがしばらく様子を見ていると、デフォームドプラントたちはせっかく実装されている、複数の個体による連携機能を使っていなかったため、プレイヤーたちに各個撃破されていた。
「私なら、これを使うわ…デリュージョン!」
エリスは早速連携機能で、デフォームドプラントたちに一斉に同じスキルを使わせた。
それは、敵に幻覚を見せる"デリュージョン"。
発動したその瞬間から、デフォームドプラントたちのいるフロアではプレイヤーたちの同士討ちが始まった。
通常、プレイヤーと敵性存在との戦闘に他のプレイヤーが強制的に巻き込まれることはないが、例外的にデフォームドプラントたちがいるフロアは、そのフロアにいる全プレイヤー対全敵性存在という扱いになり、敵性存在を撃破した時の報酬も得られる条件が通常の戦闘と異なっている。
なお、魅了をはじめとした、行動制約がかかる状態異常になっていない限りは、他のフロアへの退避などで戦闘から離脱することができる。
そのフロアで、デフォームドプラントたちのデリュージョンを受けてしまったプレイヤーたちは幻覚の状態異常にかかり、シュヴェスター以外のプレイヤーが敵性存在に見えたり、逆に敵性存在が他のプレイヤーに見えたりするようになった。
さらに、その効果は必ず見た目が逆になるという単純なものではないため、幻覚でプレイヤーに見えているが実は敵だと思い込んで攻撃したら見た目通りだったとか、近づいてきた敵性存在をプレイヤーだと判断して無視していたら大ダメージを受けた、などということがあちらこちらで発生していた。
中には、普段なら意図的にすることができないプレイヤーへの攻撃を嬉々として行っている者もいる。
そんなプレイヤーたちの様子を見て、エリスはメイがこれまでに見たことがない、邪な笑みを浮かべていた。
「エリスちゃん、楽しそうね…」
「はい…エリが笑顔になってくれてうれしいです…」
メイもユノも、エリスの表情をおかしいとは思わなかった。
途中からはアンネがやってきて、
「クイーンが急にやる気出したと思ったら、エリスちゃんが操作してたのか…。
さっきまであそこにアンネもいたから、エリスちゃんと疑似的に同じ場所で一緒に戦えたんだね…うれしい…」
などと言いながらエリスとイチャイチャしていた。
エリスとアンネのイチャイチャによってメイの挙動がおかしくなったため、さすがにユノは2人に声をかけて止めさせ、エリは明子を正気に戻したが、
「そんなになっちゃうくらい、エリスちゃんのこともアンネのことも好きなんだね…」
アンネのスキンシップによって再びメイは暴走してしまい、ログアウトした後の明子はたくさん汗をかいていた。
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