9 メイの想いと森のゴブリン
"闇堕ち"したエクレアにヘクセライやトイフェライについて聞いた後、明日は素材の採取とデートを兼ねる形でモーントジッヘル湖まで行くことに決めると、エリスとメイはUSOLからログアウト。
「エリ!」
ゲーム機を片付けると、明子は突然エリの体を抱き寄せて唇を奪った。
ゆっくりとエリの体を床に横たえながら、何度もキスを繰り返す明子。
エリは明子にされるがままの状態で、大好きな幼馴染の顔をずっと見つめていた。
「ゲームの中では、もうユノさんにされちゃったし、エクレアちゃんにはしちゃったし、仕方ないけど…現実の世界では、わたしとだけにしてほしい…」
明子はキスを止めて体を起こすと、切なげな表情でエリスに懇願する。
「あーちゃん…大丈夫。
ゲームの中でも、私の唇を安売りするつもりはないよ。
それに、この世界で、私がキスできる子は、あーちゃんしかいないから…」
エリは微笑みながら明子へ言葉を返す。
「エリ…」
明子は帰宅する前にもう一度だけ、エリと少し長い時間、唇を重ねた。
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翌日、2人は何の障害もなくモーントジッヘル湖に到着すると、湖の西側にある森に足を踏み入れた。
森の中で最初に遭遇した魔物は、2体のゴブリン。
USOではほとんどのプレイヤーにとって最初の"実戦"の相手だったゴブリンはUSOLでその位置づけが失われても、最弱の魔物であることに変わりはない。
なお、USOLは登場する"キャラクタ"を女性だけにしたが、魔物はその限りにあらず、ゴブリンをはじめとして、見た目が明らかにオスである魔物は少なからずいる。
ただし、性的な描写やそれにつながる動作はしないように設定されており、異種間恋愛のイベントも一切ない。
エリスがまずクロスボウでゴブリンの1体を射るが、やはり攻撃力が低すぎて一撃で仕留められなかった。
次に動いたメイは別の1体をロングソードの一閃で倒す。
手負いのゴブリンからの攻撃をかわしたエリスは二の矢、三の矢を続けて放つ。
それでもゴブリンは斃れなかったが、もう一度ゴブリンの攻撃を回避したエリスが放った"四の矢"と"五の矢"を受けると、ようやくゴブリンは小さな黒い魔石に変わった。
「あーちゃん…私でも…魔物…倒せたよ…」
「おめでとう…エリ…わたしもうれしい…」
初めて自分の手で魔物を倒すことができて喜ぶエリスと抱き合い、メイも笑顔になる。
ゲームの世界でエリスが素早い身のこなしを見せるだけでなく、最弱とはいえ魔物を倒したことは、現実世界で幼い頃から"エリ"とずっと一緒にいた"明子"の目頭が熱くなる要因となった。
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2日間の"シュムックカステン"の営業を挟んで3日間の休業に入ると、その初日にエリスとメイはユノに会うため、"カトーデ"を祀る教会に向かう。
「そろそろ声をかけに行こうと思っていたから、エリスちゃんが来てくれてうれしいわ」
ユノは笑顔で2人を迎えると、さっそく依頼をしてきた。
「そろそろ限定ミッションの準備を手伝ってもらおうと思って、まずはミッションを発生させる場所の下見として、北東にある"ヘクセンベルク"へ行ってもらいたいの」
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