8 傀儡と機械
「USOLで、敵の魔法や特殊スキルによって"傀儡"状態になったキャラクタは、その魔法や特殊スキルを使った者の命令によって、本来味方であるキャラクタを攻撃したり、本来敵であるはずの存在に回復魔法を使ったりする、という設定になっているの。
そして、今のメイちゃんはエリスちゃんが傀儡にしたから、さっきのようにエリスちゃんが命令した通り動くのよ。
命令の仕方は主に2つあって、まずはさっきエリスちゃんがメイちゃんを立たせたような、具体的な動きの指示。
指示したこと以外の動作はしないから、うまく指示してあげないと、戦闘の際に敵を一撃で仕留められなかった場合、無駄な動きを繰り返したり、無防備な体制で攻撃を受けたりするわ。
あと、PHが0になっても動けるけど、戦闘が終了して復活した直後はPH1だからすぐに回復してあげないとだめよ。
もう1つは、敵がプレイヤーキャラクタを操る場合と同じ要領で…」
ユノは"ヘクセライ"を使ったもう1つの命令の伝え方"アニミーレン"をエリスに教えると、
「後は口で説明するより、実際にエリスちゃんにやってもらったほうがいいわね」
そう言って"的"となる"メヒャーニシャー・ソルダート"を出現させた。
(メイ、前方にいる
エリスがアニミーレンで傀儡のメイに命令を伝えると、メイは無表情のまま動き、メヒャーニシャー・ソルダートの耐久力(PH)が0になるまで攻撃を続けた。
なお、ゲームシステム上はエリスがスキル"ヘクセライ"を使うことで本来敵専用である魔法や特殊スキルを使えるようになり、それから敵専用の特殊スキルの1つでメイを傀儡にし、さらに敵専用特殊スキル"アニミーレン"で行動を指示している形になる。
「今度は、2体ならどうかしら?」
メイがメヒャーニシャー・ソルダートを斃すと、次にユノは新手のメヒャーニシャー・ソルダートとメヒャーニシェ・カノーネを1体ずつ出す。
「ちなみに、ちょっとしたヒントになるけど、わたしはメイちゃんのための"的"を出しているだけよ」
ユノの言葉を聞いて、エリスはアニミーレンでメイに命令した。
(メイ、この場にいる敵2体を
メイはメヒャーニシェ・カノーネを気にしながらもまずはメヒャーニシャー・ソルダートを先ほどと同じように斃し、"1対1"になると、それまで2度砲弾をぶつけてきたメヒャーニシェ・カノーネのPHも0にした。
「エリスちゃんはわたしの言葉を正確に理解してくれたようね。
敵を斃せという命令であれば、命令された者はどの敵にどうやって攻撃するかなどを"自分で判断して"動いてくれるわ。
もし、エリスちゃんが本番の戦闘でメイちゃん以外に敵を1体操ってゲーム上"味方扱い"にした場合、メイちゃんに敵を斃せと命令したら、ちゃんと"新しい味方"は攻撃対象から外してくれるわよ」
「あの…それより…」
エリスはとめどなく続きそうなユノの言葉を遮ると、命令を完了してから棒立ちのままのメイに視線を向ける。
「ああ、エリスちゃんは早くメイちゃんを目覚めさせたいのね。
この場所は通常、ずっと戦闘区域のままにしているのだけど、"戦闘終了"させるわね。
AH0で"傀儡"になったキャラは"戦闘終了"後にAH1で復活するから」
ユノが部屋の中のいろいろな装置を操作すると、エリスのゲーム画面に"戦闘終了"のメッセージが表示され、直後にメイが"普段通り"に戻ってエリスに駆け寄ってきた。
ユノはアイテム"リストラティヴ"でメイのPHとAHを回復させると、メイに彼女が失神していた間の状況を説明した。
「他にもキャラクタを操れる手段はあるのだけど、それはまた今度にしましょう。
限定ミッションが始まるまでに試したいことがあれば、できる限り協力するわ。
後は、封印解除した特殊スキルについて、ナビゲーションキャラクタに聞くこともできるけど、そのために2つ目の特殊スキル"トイフェライ"を使う必要があるから、今教えるわね」
エリスがユノからトイフェライの使い方を教わると、2人は自分たちの家に帰った。
エクレアが姿を現すとすぐに、エリスは声をかける。
「エクレアちゃん、私と同じくらいの大きさになれる?」
「はいですの」
何の疑いもなくエリスの求めに応じて、エクレアは浮遊したままエリスとほぼ同じ大きさに変化。
衣服も都合よく体の大きさに合わせたサイズになった。
次の瞬間、エリスはエクレアの唇を奪う。
エリスの唇が離れると、力が抜けてぺたんと座り込んだエクレア。
全身が痙攣し、両目は白目をむきながらぐるぐる動いていたが、痙攣が収まると、
「うふ…うふふ…」
という不気味な笑い声とともに一旦瞼を閉じたエクレアの、再び開いた瞼の間には極彩色に輝く瞳ではなく、漆黒に塗りつぶされた昏く虚ろな瞳があり、銀色だった髪もエリスと同じ黒に染まっていた。
「えへへ…エクレアちゃんはエリス様に洗脳されて"エクレア・ノワール"になりましたですの…。
洗脳されたエクレアちゃんはエリス様のものに堕ちたので、実行可能なことならエリス様の命令に必ず従いますですの…」
「じゃあ、元の姿に戻ってみて」
「はいですの…」
エクレアがエリスの命令に従って魔法を発動させると、元のサイズに戻ったエクレアの髪は銀色の輝きを取り戻し、瞳も極彩色に戻ったが、
「こうして見かけだけは元通りのエクレアちゃんになっても、中身はエリス様のものに堕ちたままですの…うふふ…」
愛らしい姿に似合わない妖しげな笑みをエリスに向けていた。
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