7 封印解除

「まず、お手伝いの内容を説明するわね。

 エリスちゃんには、今後実施する予定の"限定ミッション"について、アイデアを出してもらったり、実際にミッションに必要なものを作ってもらったり、といったことをお願いしたいの。

 そのお手伝いで使ってもらうために、特殊スキル2つの封印を解除するわ。

 でも、このことは今即決しないで、2人でよく考えてから、明日返事をちょうだい。

 何か質問はあるかしら?」

「あの…特殊スキルはユノさんのお手伝いの時だけ使えるのでしょうか…」

「いいえ、USOLの運営に支障をきたすことがなければ、基本的に用途はエリスちゃんに任せるけど、一応ルールを作って、目的によっては事前に教えてもらう場合もあるわ」

「わかりました…あとは…」

エリスはさらにいくつか質問をして、ユノから納得のいく回答を得た。

「今日はありがとうございました。

 メイと相談して、また明日来ます」

「ええ、待ってるわね」

エリスはユノに、お店での"営業スマイル"ではない笑顔を見せてからメイと一緒に部屋を出た。


「あぁ…エリスちゃんの笑顔かわいかったぁ…。

 ともかく、何がきっかけかは明日探るとして、エリスちゃんはお手伝いしてくれそうでよかったわ…」

2人が去った後、ユノはそんな独り言をつぶやいていた。


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翌日、ユノの部屋を再訪したエリスの返事は、ユノの予想通りだった。

「私、ユノさんのお手伝いをします」

「引き受けてくれて、うれしいわ…」

「それで、限定ミッションの準備はいつからすればいいですか?」

「まだ限定ミッションの実施期間が決まっていないから、準備の開始も決まっていないわ。

 でも、今日のうちにエリスちゃんの"封印解除"をして、どのようなスキルかを知っておいてもらいたいの。

 いいかしら?」

「はい…ところで、封印解除の方法は?」

「わたしとエリスちゃんがちゅーするの」

「えっ…エリとあなたが…ちゅーする?」

「そうよ…それで、ちゅーする間、できれば2人きりになりたいのだけど、"お姉さん"がどうしても、妹のエリスちゃんとわたしのキスシーンを見たいのであれば拒まないわ」

「わたしは…エリのそばにいたいです…」

「わかったわ…でも、見ているだけでも刺激が強いかもしれないから、予め承知しておいてね」


それから、ユノは準備を整え、上目遣いのエリスに顔を近づけると、ゆっくりと唇を重ねる。

その瞬間、メイの精神は甚大なダメージを受け、魂の耐久値(AH)が一気に0まで低下して失神した。

エリスの唇を堪能したユノは名残惜しそうにキスを終えると、

「やっぱり、エリスちゃんのことが好きすぎて、耐えられなかったのね…」

床に横たわっていたメイの体を抱き上げる。

「さて、エリスちゃん…失神しているこの子をどうしたい?」

「メイをすぐに起こしてあげたいです…」

「それは簡単にできるけど、今この状況じゃないとできないこともあるわよ。

 わたしとキスしたことで封印が解除された特殊スキルの1つ"ヘクセライ"を使えば…」

ユノは再びエリスに顔を近づけたが、唇は奪わず、この状況でヘクセライをどう使うか教えた。

「私が…メイを…」

「通常の魔法はかけられる対象が制限されているけど、ヘクセライはほとんどが敵にも"シュヴェスター"にもかけられる。

 例えば、2人でデート中に魔物に襲われてこの子が今のように戦闘不能となった場合、すぐに回復させる手もあるけど、ゲームシステム的にはこれを使った方が有利になるわ。

 ぶっつけ本番よりも、せっかく使える状況が揃っている今試してみた方がいいわよ」

「それなら…やってみます…」


エリスがユノに教えられた通り、メイに対してヘクセライを使うと、ユノにお姫様抱っこされたままのメイが微動する。

続いてエリスは、ヘクセライでメイに立ち上がるよう"命令"。

すると、メイはゆっくりと動き出し、自分の足で立った。

ただし、"傀儡"状態である今のメイがエリスに笑顔を見せることはなかった。

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