第2話 おまけ。恥じらえ!読み上げちゃん!

【登場人物】

先生:幼稚園の先生。このシリーズ唯一のツッコミ役

美琴:おませな5歳の女の子。前作において自分の母親と健太くんの父親が不倫をし、離婚へ。美琴は自分の父親と健太くんの母親と健太とで暮らし始めた

健太:文章力が異常な大人しい5歳の男の子。自分の父親と美琴の母親が不倫をし、離婚。現在は美琴共々サレた側に引き取られ養育されている

裕香:間違った中二病を会得してしまっている可哀そうな5歳の女の子。とても物知り。その無駄な知識はどこから?

AI:園児たちに遊ばれる可哀そうな人工知能。アプリ内に備わっている機能、通称「読み上げちゃん」

(4人で演じられる場合は、前回裕香を演じた方がAIを兼ねてください。5人で遊ばれる場合は裕香とAIの登場が少なめなのでご了承くださいませ)




美琴:せんせーせんせー

先生:なあに、美琴ちゃん

美琴:(携帯端末を見せて)これ、フォローして

先生:ん?これって…ツイ〇ャス?SNS上でお話しできるアプリよね?

美琴:そう

先生:このアカウント、誰の?というか、美琴ちゃんもう携帯電話なんて与えられてるの?しかもこれ、最新式じゃない!私のよりよっぽど高いやつ

美琴:投げ銭で買ったんだ~

先生:ん?投げ銭?

美琴:そう!美琴ね~ちょっと有名な動画配信者なんだよ~これ美琴のアカウントなの♪

先生:えええええ!?美琴ちゃん動画配信してる側なの!?しかも投げ銭で稼いでるのっ!?5歳なのに!?

美琴:えへへ~「ママとパパが浮気したらパパに新しいママが出来た件」って投稿したらすっごいバズったの!

先生:なんてモノ投稿してるの!

美琴:健太くんと一緒にテロップとか頑張ったんだ~(健太くんに)ね?

健太:うん、二人で見やすい色とかいっぱい考えたんだ

先生:しっかり編集してるぅ!健太くんも手伝ったの!?

健太:うん、僕たち先月から一緒のお家に住んでるから

先生:あ、そっか。健太くんと美琴ちゃんのご両親は、その…

美琴:そそ!ママとパパが入れ替わっちゃったんだよねぇ~

先生:あっけらかん!そんな、デリケートな問題を

健太:そんなに気を使わなくていいよ、先生

先生:って言ったって

健太:僕たち、大人に振り回されるのなんてへっちゃらだから

先生:あなたたち、どんな人生送ってきたの?

美琴:大人ってばすっごく気を使うのよねぇ~配信見てくれた人たちも「これ食べて元気出して」とか「君が一日でも早く笑顔になれるように」とかメッセージ付けていっぱい投げ銭してくれたし

先生:そらそうよ

美琴:だから美琴、思い切って貯まった投げ銭で最新スマホ買っちゃったの!すっごく使いやすいんだよ

先生:切り替え早っ!

美琴:それに、健太くんとは美琴のパパと健太くんのママがくっついちゃったせいで結婚できなくなったけど、これはこれでずっと一緒にいられるからいいかなって

先生:これが若さなの?これが柔軟さってやつなの?

健太:旧ママとパパから新ママとパパへお金いっぱい払ってもらえたみたいだから、リングライトも買ったんだ。これからも配信していくなら機材はいいもの使った方がいいと思って

先生:言い方!親を新旧で分けないで!あとめちゃくちゃ配信者の意見だね!

美琴:ね~?先生も美琴たちをフォローしてくれるよね?

先生:うーん…すっごい興味あるけどすっごい怖いなぁ

健太:怖い?…ああ、投げ銭とかはしなくて大丈夫だよ、もう固定のファンがついてくれてるから

美琴:そうそう!先生にお金もらっても、もともとはうちのパパたちが払ってるお金から出てるお給料だし、輪っかになって回るだけだもんね!

先生:そういうことじゃない!あ、でもコメントもらったって美琴ちゃんも健太くんも漢字読めないでしょう?あ、健太くんはバリバリ読めるか

健太:うん、僕漢検準2級持ってるよ~

先生:それ高校生レベルじゃ

健太:パパが教えてくれたの~…ああでも、もう僕のパパはパパじゃなくなってるんだけど

先生:あー今すっごい投げ銭したくなる気持ちわかったわ。美味しいもの食べてって言いたくなったわ

健太:薄給(はっきゅう)なんだから無理しないでね

先生:なんで先生のお給料の金額知ってるの!?

美琴:それに~漢字読めなくても大丈夫だよ!このアプリには「読み上げちゃん」がいるから

先生:読み上げちゃん?

美琴:せんせー美琴のアカウントフォローして?それで、今から美琴が配信始めるから何かコメントして?

先生:何かって何を

健太:何でもいいよ、職場の愚痴とか書いてもいいし

先生:ヤだよ怖いよ書かないよ!全世界の人に配信届くんでしょ!?いつどこの保護者に見つかるかわかんないじゃない!

美琴:安心してー今この配信は美琴と先生だけのクローズ配信になってるから

先生:あ、そんなことできるんだ?しっかり機能使いこなしてるのね

美琴:当然!

健太:愚痴、書く?

先生:じゃあ…って書かないよ!園児の前で書けるかぁ!…コメントならなんでもいいんでしょ?じゃあ、「こんにちわ」っと

美琴:ふっ

先生:ふって何、ふって!今鼻で笑ったでしょう鼻で!

美琴:こんなの美琴でも読めるけど…読み上げちゃんにお願いして…


0:読み上げ機能を使った美琴


AI:(棒読みで)こんにちわ

先生:おお~

美琴:ね?これなら漢字読めなくても大丈夫でしょう?

先生:確かに

健太:他事(ほかごと)してたり他の人と会話しててコメント見逃しても、読み上げちゃんがいるからスルーせずに済むんだよ。いつも人が多くてコメント流れるの早いから助かってるんだ

先生:そんなに盛況なのね…すごいわね、色々と

美琴:…でも美琴、読み上げちゃんにちょっと不満があるんだよね

先生:え、どうして?すごく便利な機能なのに

美琴:だって読み上げちゃん、いっつも棒なんだもん

先生:棒?

健太:確かに…抑揚つけてくれないよね。一本調子でずっと読むから、感情が乗ってないし

先生:それはそうなんじゃないの?この機能、AIでしょ。AIに感情って…あと、一本調子なんてよく知ってるわね。私だって咄嗟(とっさ)に出ないわよ、そんなワード

美琴:AIって人工知能ってやつでしょ?だったら美琴、読み上げちゃんはもっと進化すると思うの

先生:進化?

美琴:いっぱい文章読んで覚えたら、怒ったり泣いたりする心も分かってくると思うの

先生:うーん…それはちょっと難しいんじゃない?

健太:先生、考える前に諦めたら物事は何も進まないよ。人間の歴史はトライ&エラーの繰り返しなんだから

先生:健太くんホントに人生何週目?

美琴:だからね、美琴読み上げちゃんにいっぱい教えてあげようと思って。先生、この配信にいっぱいコメント打ってくれる?

先生:それはいいけど…どんなことを打てばいいの?

健太:読み上げちゃんの心を震わせる言葉がいいなぁ

先生:ええ?心を震わせる…えっとじゃあ…「愛してる、あなただけを愛してる」

美琴:ぷっ

先生:美琴ちゃん!?また笑ったわね!?

健太:先生、ピュアピュアだね

先生:やめて恥ずかしいからほおっておいて!

AI:(棒読みで)愛してる、あなただけを愛してる

先生:やめてー!傷口に塩塗らないでー!

美琴:うーん、読み上げちゃん全然動揺しないね

健太:そうだねぇ、先生みたいに恥ずかしがってる読み上げちゃんが見てみたいなぁ

先生:健太くんっ!?

美琴:あ、そうだ

健太:どうしたの?

美琴:健太くんの本だよ!

健太:え?

美琴:健太くん、前にママとパパでお話作ってたでしょう?先生、あれ読んで赤面してたし、あの文章打ち込んだら読み上げちゃん照れるんじゃないかな?

先生:ちょ、美琴ちゃん?それって前に健太くんが書いてた官能小説のことじゃ…

健太:ああ、あれ。行けるかな?

美琴:わかんないけどやってみよう!

健太:じゃあ先生、コメントに僕の文章打ち込んでくれる?

先生:待って待って待って!官能小説の文章をコメントに打つの!?園児の配信してる枠のコメントに!?

美琴:先生しかこの配信見てないんだからいいじゃん

先生:そういう問題じゃなくて!モラルと言うかなんと言うか…大体、今日は健太くんあの小説持って来てないでしょ!?

健太:あるよ

先生:え

健太:前のとは違うけど、あれ以来創作意欲が止まらなくて…新作を書いてみたんだ。先生に読んで欲しくて、今日持って来てるの。(リュックを開けて)はい、どうぞ

先生:マジですか

健太:今回のお話はライトだよ、前みたいにドロドロじゃないの。モデルはね、僕の新しいママとパパの話

先生:嫌な予感しかしない…!

健太:先生、僕頑張って書いたの…(上目遣い)読んでくれない?

先生:ううう……じゃあ、打ち込むだけだからね

健太:もちろん!読み上げちゃん、上手に読んでくれるといいなぁ

先生:はぁ…じゃあ打つよ…もうどうなっても知らないから…

AI:(棒読みで)湯上がりの男の首すじにつたう雫に、女の体温が上がった。今から抱かれるんだ、そう意識した途端くらくらと目眩(めまい)がする

先生:聞いてるこっちがいたたまれない

美琴:先生続き、早く!

AI:(棒読みで)男は女の腰を抱き寄せると性急に自分の高ぶりを押し付けた。息を飲んだ女の唇を自分のそれで塞ぎ舌を入れる。ゆるゆると腰を撫でながら弄(もてあそ)ぶように舌を出し入れされると、女の息が乱れてきた

健太:もっと恥じらって欲しいなあ

美琴:恥じらえ!読み上げちゃん!

先生:何この地獄

AI:(棒読みで)バスローブがはだけ女の豊かな胸があらわになる。男はその割れ目から日に焼けた手を差し入れやわやわと女の胸を揉みしだき、薄ピンクに色づいた頂きを口に含み飴玉のように転がした。女の喉から小さな嬌声(きょうせい)が零れ落ちる

美琴:棒!全然棒!もっと恥じらって読み上げちゃん!

先生:いつまで続くのこれ

健太:ん~先生、ちょっと前戯(ぜんぎ)長いから本番まで飛ばして打って?

先生:前戯(ぜんぎ)とか本番とか言っちゃだめっ!

AI:(棒読みで)女の蜜でトロトロになった入り口に男が高ぶりを押し付ける。ゆっくりと侵入してきた熱い塊に女の腰が悦(よろこ)びうねる

先生:だーもう!これ以上はダメーっ!!

健太:ええ…これからがいい所なのに

先生:ダメなもんはダメーっ!!教育的配慮です!もう打ちません!

美琴:ぶーぶー

先生:可愛い子ぶってもダメ!


0:裕香登場


裕香:何を騒いでいる、愚民ども

先生:あら裕香ちゃん、塗り絵してたんじゃなかったの?

裕香:ふ、あんなもの、暇つぶしの道具にすらならないわ

先生:相変わらず暗黒世界を生きてるわね。でもよかった、おかげで助かったわ。さ、美琴ちゃん、配信はこれでお終い

美琴:ええー?

先生:人工知能に感情なんて無いの。あれだけの文章を読んで何一つ照れなかったんだから、いい加減諦めましょうね

美琴:人工知能なんだから、絶対学習するはずなんだよー?読み上げちゃんはまだまだこれからなんだよー?

先生:散々読ませても棒のままだったでしょう?読み上げちゃんには、恥じらうとかそういう感情は無いの!

裕香:ふん、くだらぬ実験でもしていたのか、人の子よ

先生:裕香ちゃん、今入って来られるとややこしいからお口チャックしててね

健太:…そうだ

先生:え?

健太:先生、裕香ちゃんの喋ったこと、コメントに打ってみて

先生:ええ?どゆこと?

健太:いいから。…裕香ちゃん、昨日はお家で何を食べたの?

裕香:生贄に捧げられし哀れな子羊だ。我が血肉となり力を与え給うた。断末魔が心地よかったぞ

先生:ラム肉ってことね

健太:先生、今の裕香ちゃんの言葉、入力してみて

先生:え?いいけど

AI:(棒読みで)生贄に捧げられし、哀れな子羊だ。(少しずつ震えて)我が血肉となり力を与え給うた。断末魔が心地よかったぞ

先生:震えてる…うそ

美琴:いけー!恥じらえ!読み上げちゃん!

健太:裕香ちゃん、何か動物飼ってる?

裕香:我が一族が代々フェニックスの使い手だ。奴らの叫び声により闇は浄化され世界に新たな光をもたらすのだ

先生:あーそういえば裕香ちゃんのお家って養鶏場だっけ

健太:先生、入力

先生:あ、はい

AI:(ちょっと震えて)我が一族が代々フェニックスの使い手だ。(だいぶ震えて)奴らの叫び声により闇は浄化され世界に新たな光をもたらすのだ

先生:うそぉ…読み上げちゃんが…恥じらってる!

裕香:この世のすべては我が手中にある。滑稽なる人の子よ、また光を見ることを許された今日を光栄に思え

AI:(限界まで震えて)この世のすべては我が手中にある。(泣きそうになりながら)滑稽なる人の子よ、また光を見ることを許された今日を光栄に思え

先生:ちょ、読み上げちゃん恥じらいすぎてもはや泣きそうなんだけど!

裕香:いけー!そこだー!もっと恥じらえ読み上げちゃん!!!

AI:深刻なエラーが発生しました。深刻なエラーが発生しました

先生:もうやめてあげて!彼女のライフはゼロだから―!!

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お遊戯会とおままごと 4人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207

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