神様の選抜方法
RITUAL
EPISODE 1
地獄の果てを散歩する。
瘴気が漂う光の差さない地獄をどこまでも行くと、この果てと呼ぶのに相応しい場所へ辿り着く。
迷える魂すら迷い込むことのないこの場所は、僕の庭の一つだ。
天国は神の憩いの場、地獄は下界に生きた者たちが新たなん生へと生まれ変わる不気味でいて神秘的な聖域だ。
そのどちらも好まない僕からしてみれば、何もなく、何も生まれず、何も失わず、何も変わらない普遍的なこの場所は気に入ったものをしまっておくおもちゃ箱のようなものだ。
地から足を離す度に舞う砂埃は、風もないのに彼らの元へ誘うように飛び去って行く。
心地がいいとは到底言い難いこの場所で、わけもなく歩いているわけではない。
何万年も前、興味半分で不死身の命を与えた兄弟に会うため、わざわざ足を運んだというわけだ。
「やあ、久しぶりだね」
「その声は死神様ですね」
死神。
この世界を統べる者の総称で、それはまさしく僕のこと。
「マジ最悪。あんたの顔そろそろ忘れられそうだったのに」
「そんなことを言ってはダメだよ」
この兄弟は人間ではなかった。
兄は強欲な人間の知的好奇心の餌食として、僕や神の許可なく勝手に生み出された。人のようでいて人ではない新生物。
弟はその兄が孤独から創り出したエゴ。
神が創り出したわけでもない命だ。最初はそんな罪な命、無論消滅させようと考えていた。僕は自分の意図していないかたちで想定外のことが起きるのが嫌いだったから。
だけど、この子たちには少し興味が湧いた。神の僧都物から逸脱したこの子たちを生かしておけば、遊び買いがありそうだったから。
それに人間を遥に超える兄弟な力も有していたし、何かという時に仕えそうだ友思った。
しばらくこの地獄の果てに閉じ込めて様子を見ていたけれど、僕がわざと用意したいくつかの課題も問題なく書行けるしていた。
相当な困難だったろうに。食料がない、極度の寒暖差、それから何だったかな。
普通の生き物なら生き抜くことは出来ないけれど、この子たちは生き残った。
自分が管理し作らせた命は結末が全て見えているつまらないものだったけれど、このおもちゃたちは僕を存分に楽しませてくれた。
これでやっと計画を前に進められる。
これくらいのことが出来ないようじゃ、二人を計画には使えないからね。
「目の調子はどうだい、サミエドロ」
兄の名はサミエドロと言った。
盲目でありながら、まるで何もかも見透かしているかのような言動がムカつく。弟思いで、僕に忠誠を誓っている。
「相変わらずです」
「何で来たんだよ。あんたがここに来るってことはろくなことじゃなさそうだけど」
鼻が利くのと洞察力は評価しているけど、小生意気なのが玉に瑕な弟の方はバクといった。
「そう喚くな。ずっと地獄の果てにいてそろそろ飽きてきた頃でしょ」
「あんたがここに俺たちを閉じ込めたんだろ」
「バク、そんな言い方をしないよ。死神様は俺たちに生きる居場所を与えてくださったんだから」
「バクもサミエドロを見習ったらどう?」
不服そうなバクを見下す。
兄の方は大人しいけれど、僕の作った世界を破壊するほどの力を有している。
その弟もかつて人間を死よりも恐ろしい目に至らしめた小さな怪物だ。夢ではなく、人間の記憶を食べて廃人にするバクだった。
「はは、そんな顔をしてくれるなよ」
不本意ながら君たちにこうして会うのが楽しみだったんだからね。
僕がここへ来た目的を知ったら、二人はどんな顔をするだろう。
「何かお役に立てることがあるのでしょうか」
「まあね。話すより見せた方が早い。…ついておいで」
鎌を振りかさして、行きたいと望んだ場所へと移動する。
来る時は歩きたい気分だったけれど、果てしなく長い道をまた歩いて戻るには気が引けた。
「ついたよ」
「地獄の果てよりも寒い…」
凍り付くような空気にサミエドロは呟いた。
「天の国のような眩しい光も、地獄の果てみたいな遮られた光もない。青黒く光った壁に囲まれた閉鎖的な部屋にいるよ、兄さん」
バクは兄の手を握り、真摯に状況を説明した。兄が盲目になってからという者、もう癖の様になっているみたいだね。
「ありがとうバク。他に何か見えるかな」
「うーん…げっ」
バクの反応が予想以上に不細工だったから、思わず吹き出してしまった。
「バクも、死神様もどうなされたんですか」
「ま、魔法陣があるんだ。こんなの小説でしか読んだことない」
「バクの反応がその、ふふ…、思った以上に、はははっ」
「人が怯える様子を見て面白がってるんだ。相変わらず性格悪すぎ」
サミエドロは弟の補助なしに歩みを進め、何かを感じ取ろうとしていた。
「…その魔法陣で何らかの儀式を行うのですか」
「ピンポーン。ささ、二人ともここに立って。拒否権はないからさっさと動いた」
中がいいことに、二人で横並びになって魔法陣んの中央に立った。
まあ二人いっぺんにやっても同じことだからいいけど。
「始めようか」
手を叩いた合図で壁一面が鏡に変わっていく。それを見たバクはサミエドロにぴったりとくっついて滑稽だ。
「なんだか不思議な感覚」
「結構時間かかるから、おわるまでちゃんと立ってるんだよ」
「最悪」
「頑張ろう?、バク」
「僕はこ一旦失礼するよ。仕事が残ってるから~」
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