2年 第1学期 8週目


 10月29日



 歯が痛すぎて、授業に集中できない。これは本気で抜いた方が良いのかもしれないと思いつつ日本と違って言葉の壁があるところで抜くという事を考えるとしり込みしてしまう。けど抜かないと痛いし……


 頬が若干腫れてきているので放置はダメだと思うが、問題は近くの歯医者があそこなのだよ。あそこでは治療したくない。


(寮へ帰ったらみんなにいい所がないか聞こう)


 午前中を何とか過ごし、昼食の時間になったはいいが、痛すぎて固形物が喉を通らない。朝は柔らかめの物を探してとりあえず空腹を少しやり過ごすが、普段よく食べる私としては全く足りないので、授業中お腹がずっとなりっぱなしなのである。


「困った何食べよう」


 コンビニをぐるぐる回る事3週目、私が手に取ったのは栄養補給ゼリー、心はガッツリ食べたいんだよお腹すいてるし、ただ口が今拒否反応を起こしている中熱いものはダメ、硬いのもダメ、柔らかい物ヨーグルトは朝食べたし、妥協案で栄養補給ゼリーしか無かった。腫れが収まっていたら柔らかめのパンとかでもいいんだろうけど時間的にも残っている商品がいまいちの物ばかり、とりあえず残りの数時間を耐えることが出来れば、寮で時間かけてもいいからゆっくりご飯を食べようとゼリー片手に友人たちの元へと戻る。案の定「足りるの?」と聞かれた。決まってるでしょ足りないよと言いたいが口を開くのが億劫なので軽く首を横に振った。


 夕方寮でどこか歯医者がないか聞いたら隣の駅にある歯医者さんが結構技術も良くて評判だという。場所を教えて貰って、パソコンで行き方を確認する。事前に調べないと行き方分からないしね。ちょっと未来の話をすれば、後々スマホ文明になってからもっと早く欲しかったと思ったのは必然だよね。


 どっと疲れてしまい今日はいつもより早めの就寝することにしたが、眠いのに口が激痛で全く眠れない。


(明日の放課後、ダッシュで歯医者行って抜いてしまおう。うんそうしよう)



 10月30日


 

 朝、鏡を見ると頬が盛大に腫れていた。もうね漫画とかの虫歯でぱんぱんに腫れてる絵が大げさじゃなかったんだって心底思うくらいにはもう半拳くらい腫れてるの。虫歯じゃなくて親知らずでここまで腫れるのかと鏡を見ながら思ったよ。間抜けなくらい腫れてるから普段の私なら大爆笑しているが、痛いのでまず表情筋がすべて死んでいる。顔を動かすのもだし、顔を洗うのに少し手が当たるだけでも激痛だ。頬をが腫れて熱を持つなんて人生初の体験なので、こんな感じなんだと1人思いつつ二度とごめんだという気持ちもわいてくる。今回は親知らずというどうにもならない事だったのだが虫歯にならないように気を付けようと心の底から思った。

 

 教室へ行く途中で、ウォーターサーバーでキンキンに冷えている水を入れ、頬を冷やす。冷やしていると痛みも若干薄れるので、片手で冷やしてもう片方の手でノートを取る。クラスメイトに「どうしたの?」と聞かれる度に頬を見せると虫歯?親知らず?って質問をされるので、首を横に振るか縦に振るかで返事をして一日を過ごした。


 待ちに待った放課後!!昨日予習した道順を頼りに向かい近くまで来て入り口を探す。


(もしかしてこれ?めっちゃ分かりにくい)

 

 建物と建物の間にある細い階段を上がって2階にあるその歯医者は、院内も明るく清潔感あふれていた。とりあえず私は初診だという事と保健所を提示すると、「日本人?」って聞かれたので頷く、話すのがしんどいから黙っているのだが、あまり話せないと勘違いされたのか「大丈夫だよ怖くない」「今からレントゲン取るからね」と言うようなニュアンスの事を言われ、誘導されるがまま診察へ、親知らずが炎症を起こしているので、先生は抜こうと即決。麻酔をするのは見れば分かるのだが始終「怖くないよ」「すぐ終わるよ」と先生だけでなく周りにいるスタッフのみんなにも応援され、幼稚園児じゃないのだが……と言う心の突っ込みは誰にも届かず、この場に友人もしくは家族がいれば大笑いされるの間違いなしの待遇だ。技術が高いと言っていたのは本当で、一瞬で抜き終わった。あの前振りは何だったのだろうかとやや疑問に思いつつ会計をしようとするとお金はいらないとの事。私は首をかしげると、臺灣の医療費は元々安いのだが、健保卡【健康保険証】があれば、自己負担などの特別な場合を除いて、簡単な診察料は50~150元らしい、因みにこの歯医者さんは今回は簡単に抜けるような親知らずだったので、費用は取らないのだそう。そもそも私は臺灣に来てから病院へと行ったのが、バス事故の時が1回(事故の時に頭を椅子に打ち付けて大きめのたんこぶが出来ていたのと左側が打ち身でところどころ痣になっていたので、バス会社の人に念のため病院で診てもらいその診断書を提示してくれと言われたから。因みにその時は知り合いのお姉さんの指示のもと私はただ診察を受けて湿布貼ってるようにと言われただけだったが……)とこの間の歯医者と今回のみで、健康でよろしいとまで言われた。階段降りてすぐのところに薬局があるからこの紙と保健所を見せなさいと言われ、スッタフ総出で見送ってくれるので、深々とお辞儀をして歯医者を後にした。


 (すごくいい歯医者だったな。子ども扱いはちょっとあれだったけど)


 言われた薬局へ行くと、痛み止めと血を止めるために加えているガーゼの交換を渡された。こちらも費用はいらないとの事。私からしたら大助かりで、有難い話だ。血が止まったら食事をして良いと言われ、こちらもお辞儀をしてから後にする。麻酔が効いてるから今は痛みも感じない。寮の近くのコンビニへ直行して、とりあえずご飯を買いに行った。後この数日頑張った自分へのご褒美の甘味も買った。もう二日もまともに食べていないのだ。お腹が背中とくっつくのでは?というくらいにはお腹がすいている。私に食事制限のダイエットは絶対向いていないという発見もした。


 寮に戻り軽く汗を流して口の中を確認すると血が完全に止まっていた。


「ごはんごはん。お腹がすいて力が出ない~」


 寮に誰もいないのをいいことに超適当な鼻歌を歌いながら買った。物を広げていく、久々のご飯すごく美味しい。


「やばい美味しい。お腹がすいていると食べなれたものでも美味しく感じるんだなぁ~あ!家に電話しなきゃ」


 歯の親知らずが腫れて痛いという話をメールでしたいたので、状況報告をするために電話した。


「抜いたの?」

「うん。これでもか!ってくらい腫れててさもうしんどくて」

「今腫れは?」

「身体って不思議だよね。抜いたら収まってきたの」


 身体は正直だよね。痛くないなら腫れもすぐ収まる。もう邪魔するものないわと言わんばかりに今朝までのあの激痛は何だと言わんばかりになんともない。


 近況報告が終わり、溜まっていた復習と予習をする。痛すぎて集中できなかったので、全然手つかずの物も多い。痛くてもプレゼン関連は優先でやってたんだけど、あれはグループだから手を止めることも出来ないし、体調不良だろうがお構いなしに、やる事押し付ける方がいるのでやるしかなかった。これまで溜めてたら徹夜確定である。それは何としても阻止しなければならない。


 夜寮の人たちに歯は大丈夫?と問われ、抜いたことを伝えると「早!」と言われた。昨日聞いて今日速攻っで見に行くとは思わなかったみたい。あそこまで腫れたらもう楽になりたいとしか考えてなかったから仕方が二ともいえるが、とにかくこれで勉強に専念できる!身体は大切にだね。



 10月31日


 昨日の晴れ間から一転今日は雨だ。寮から学校は徒歩1分正直言えば傘を差すのは面倒な距離なんだが、ここまで降られてしまえば指すしかあるまい。教科書が濡れてしまう。それは阻止しなければならない。


 口の痛みも消えて、体育も心置きなく出来るなんて素晴らしいと感慨深く思い午前中の授業を終え、昼食の後は、会計の小テストだ。老師Lǎoshīが「この小テストは復習を兼ねての物だ」と言っていたとおり、先週の内容が数字を変えて出題されたいた。私からすれば、どこがまだ理解していないか知るのにとても役立つし、間違えたところを教えて貰うので、時間を有効活用出来る。


 (テストもこんな形で出るってことだよね?だとしたらテスト前にもう一度授業で出た問題とこの小テストの問題をもう一度解き直して復習しこう)


 変に新しい問題に着手するより今の私は確実に取れる物を勉強していくスタンスの方が絶対にいいはずだ。

 沢山詰め込んでも他の教科を見ると全部脳から零れ落ちそうだからというわけでは、決してない多分……



 11月1日


 

 英語の教科書、中国語で授業のマーケティング管理を終え、私はひたすらハンコを押していた。

 今日のバイトは、副班長の出欠届の確認印を押す事と休み申請を出している人たちの書類を出した日付印を押す事だ。とりあえず漏れがないか見てハンコを押す。それを全クラス分繰り返す。自分のクラスのが出てくると書いた本人が確認して意味があるのだろうか?と思いつつハンコを押す。


 頭の中ではマーケティング管理のテストどうしようという悩みでいっぱいだ。もう中間テストまで1週間無い。英語という私の中では最難関の壁がやる気をそいでゆく。せめて片方は日本語が良かったのにと有り得ないことを考えつつもバイトを終わらせ、荷物を入れ替えて交流会へ、整理したノートを片手に休憩の合間に皆のわちゃわちゃを聞きながら目を通す。意外といろんな音が入ってる時の方が集中できることもあるのだ。兄弟が多い私からすれば騒がしい時はもっと騒がしいので実は案外この状態が落ち着くのだと最近になって知った。高校受験の時とかは、「もう静かにして!」と何度心の中で思った事か分からないが、なるほど私の育った環境は少し騒がしい空間の中という事だったと静かすぎる部屋で違和感を感じた時に思ったのだ。

 「勉強しながら音楽なんて聴いたら集中出来ないでしょ」とか言われたり言ったりしている皆さん。人ってそれぞれ落ち着く環境があるんだよ。自分はこうでも他人は違うから無理に押し付けるのは良くない。集中力のふり幅が、極端な私が言うのもなんだが、集中できるときは何時間でも集中しているが、それが全くない時は何しても意味が無いので、ぼーっと空や天井を見て何も考えないようにすることが一番なんだよ。遊んでいる訳でもなくて、脳が疲れてるから何も手につかなくなると言えば分かるかな?だからそういった人がいる時はそっとしてあげよう。言ったら言ったで余計にやる気をなくすものだよ人って、私自身も少しそう言ったところがあるから体験談。


 

 11月2日


 微積分疲れた。2度目なのにやっぱり意味が理解できない。


(木曜と金曜の科目がやばい本当にどうしようか困った)


 悶々としながら自宅に帰ったのだった。



 11月3日



 教会が終わった後速攻で家へと帰る。先週歯の件もあって、適当に過ごしていたからとりあえず大掃除だ。ごみ屋敷とまでは行かないけど、結構雑にものを置いていたので、荒れている。奇麗に片づけてからテストのための勉強をすることにした。部屋がきれいだと気分も上がるというものだ。



 11月4日


 

 眠い。ベッドでゴロゴロ置きたくないと身体が言ってるが、起きて勉強しないと駄目なので、無理やり身体を起こす。

 因みに中国語で、こういったベッドから起きないでゴロゴロしていることを賴床Làichuángって言うよ。これが意外と使う。友達とか兄弟間で、まだ起きてないの?の代わりに使ったりとか「ベッドと友達になりたい」という友人に「不要Bùyào賴床Làichuángkuài起床qǐchuáng【ベッドでゴロゴロしないで早く起きて】」というニュアンスで言ったりすることも出来る。お寝坊さんな友人や兄弟に主に使える言葉だね。

 待ち合わせの前日にくぎを刺すために使う事も私はあるかな?


 休日は勉強日和!さぁ頑張るぞ!


 

 

 


 


 

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