2年 第1学期 6週目


 10月14日


天野Tiānyě謝謝你xièxiè nǐ!【天野有難う】」


 待ち合わせの駅についた途端、2人が嬉しそうに駆け寄って来た。

 1人はLánこと小藍Xiǎo lán。もう1人がYángこと小陽Xiǎo yáng。苗字の前に小をつけて呼ぶのは〇〇ちゃんみたいな感じかな

 苗字がそのままニックネームになるか名前で呼ばれるかはその人によるかな?名前の方が珍しいと名前だったり……私は呼び方で呼んでいるので、どうしようって悩むときは、周りの人に合わせるか本人に「何て呼べばいい?」とそのまま聞く方が早かったりする。聞いた方が確実なのは確かだよ。


 今日は彼女たちと志豪Zhì háoのルームシェア宅にホームステイ中の3人の日本人の通訳で来ているんだ。2人に頼まれたんだよ。「案内はしないの?」って案内は台湾の人たちにお任せだよ。私も学校と寮もしくは家と教会の往復が主だからあまり遊びに行ってないんだよね。休日は死んだ様に眠ってるのも原因かも……


志豪Zhì háone?【志豪Zhì háoは?】」

Shuì過頭了guòtóule他會Tā huì晚點wǎndiǎnlái。【寝坊だよ。後で来るって】」


 若干怒ったように聞こえるのは気のせいじゃないよね?結構色々あったみたいだなこれは――と思いつつ気を取り直して、後ろに目を向けた。


「お早うございます!」

「お早うございます。今日はよろしくお願いします」

「私も観光がてらなのでお気になさらず。楽しみましょう」


 3人とも挨拶をかわし、いざ出発!まず今日は「西門町Xīméntīng」から観光だよ。台北駅から青の路線で一駅、台北駅から歩いても行ける距離にあるよ。 

 

 「西門町Xīméntīng」はもともと映画産業を中心にして発展を遂げた街で、その名前の由来は遡ること日本統治時代、1896年、映画館第一号となる「東京亭」が創設。1922年、「西門町Xīméntīng」と命名。1949年、当時の国民党政府が台湾に来てから大量の資金をここに投入したんだって、それもあってか映画館にデパートやその他の娯楽施設が出来ていったんだって、中華商場が出来てからは、西門町Xīméntīngは国内最大の商業娯楽活動の中心地になったとさ。現在は、ファッションビルやキャラクターグッズのお店、映画館、ゲームセンター、カフェなどが密集し、若者で賑わう繁華街は「台湾の原宿」や「台北の渋谷」とも言われてるよ。


 ぶらりと散策しつつやって来たのは、「西門Xīmén紅楼hónglóu西門町Xīméntīngの繁華街の中にある赤レンガの建物だよ。

 日本統治時代の1908年に「西門Xīmén紅楼hónglóu」が建設。台湾で初めて建てられた公設市場で、新鮮な食材を長期間保存できる冷蔵施設が備えられた建物で、当時は西門町Xīméntīngのシンボルになったんだって。第二次世界大戦で戦禍を逃れ、戦後は「紅楼Hónglóu映画yìnghuàguǎn」となり、西洋映画から時代劇まで幅広いジャンルの映画が上映されていたんだって、私の親世代の人から聞いた話なんだけど、その人達が若い頃はラブストーリーでよくある手をつなぐ場面とかキスシーンとかになると画面が遠くなって、ぼやけて見えなくなったり、花畑の画面が出てきたり……なんでも昔は男女が手をつなぐとかも恥ずかしい事。言い換えれば破廉恥だってことかな?って思われていたから洋画だと大抵のものが見えなくなっていたんだって、後映画が始まる前に起立して、国歌斉唱もしていたらしい……今の私たちには想像できない光景だけど、日本もそんな感じだったのかなぁ~今度親に聞いてみようと思った。


西門Xīmén紅楼hónglóu」に話を戻すと、設計したのは建築家の近藤十郎。彼は当時、台湾総督府建築科を担当していて西洋建築が得意な方で、入り口の「八角Bājiǎotáng」と呼ばれる部分は、建設前は周りにお墓が多かったので、東方の思想である八方からエネルギーを集め、悪い運気を遠ざける「八卦造形」を取り入れて作られたらしい。「十字楼Shízì lóu」と呼ばれている。市場の主体部分は「十字架造形」キリスト教から来ているんだって、東西建築史上初めてとも言われる建て方をした建物でも有名になった場所なんだよ。


 この建物の面白い所が、窓がない所に窓がつけられるくらいのくぼみがあるんだけど、「暗窓Ànchuāng」って言って和洋折衷を取り入れるのに、シンメトリーを意識して作ったからこのくぼみがあるんだって。私が見て最初に思ったのは、元々ここに窓があってそこを埋めたのかなって何でだろうって不思議に思いながら建物の紹介を見た後、成程シンメトリー面白いって思ったんだよね。建物も芸術作品って言うのがよく分かったよ。他にも沢山「西門Xīmén紅楼hónglóu」のここ凄い!があるんだけどそこは実際に訪れて探してみて欲しいな。

 

 みんなと連れ立って入ると1階の右奥の壁には紅楼hónglóu自体の過去の写真や建材が展示されていて歴史紹介コーナーになっている。左側はセレクトショップがあって、台湾に関連する商品がたくさんあるからお土産選びにいいかもしれない。2階は劇場になってるよ。


 八角楼内には、お茶を楽しめる「西門Xīmén紅楼hónglóu茶坊」、台湾グッズが買える「西門Xīmén紅楼hónglóu精品区」にWénchuàng孵夢fū mèng基地jīdìっていう場所に、16工房のお店が入っている。可愛らしい置物とかも沢山あるから全部見て回るのに中々時間がかかったよ。


 その後、軽く軽食を食べてMRTで移動――向かったのは、「台北Táiběi101yīlíngyī」だよ。高さは509.2mで、地下は5階まであり、地上101階建てで、名前はここから来てるよ。5階から89階までわずか37秒で移動できる世界最速のエレベーターがあるんだよ。って言いても写真撮っただけで今回は登ってないのよ。


 駅で婉玲Wǎn língと合流。昼なら空いてるって付き合ってくれた。因みに志豪Zhì háoまだ来てません。それを聞いた婉玲Wǎn língは、呆れた顔を隠さずに怒ってたよ。まぁそうなるよね〜何時間遅刻するんだ己はってなるよね……


 気を取り直して「台北101」の写真撮って、まずはすぐ横にあるモールへ、高級ブランドのお店が沢山あるよ。涼しいモール内を歩きながら信義Xìnyì商圈shāngquānへと向かう。ここは、高級ブランド店は勿論の事。映画館、書店や食事処など沢山の店があるんだよ。歩いていたら甘い香りがするから空腹でここを訪れたらやばいよ本当に誘惑の香りしかしない。今日の私は通訳と言う大役があるから我慢してるけど、目がついスイーツ店を見てるから後ろから軽く婉玲Wǎn língに叩かれた。目で追うのは許して欲しい。

 

 そうそう私が見た感じの個人的感想なんだけど、西門町Xīméntīngは大阪で例えると南エリア(心斎橋や難波)。台北101近郊は大阪の北エリア(梅田(大阪駅周辺))と雰囲気が似ているのよ。というのも西門町Xīméntīngはいろんなお店がごちゃごちゃっと(いい意味で言ってるよ)沢山あるのそれに対して、台北101近郊は、高層ビルに入ってるお店もビルの中だから統制取れてるでしょ?それが梅田の百貨店とかの雰囲気と似てるなぁ~思ったんだよね。あくまで私の主観だから他の人は他にも意見色々あると思うんだけどね。どちらも人が沢山だよ。休日ならなおさら人が多い。


 しばらくしてやっと志豪Zhì háoが合流し、みんなで夕飯を軽く食べ解散となった。

 通訳って大変だなぁって思った一日だったよ。お互いが何話しているのかしっかり伝えないといけないから中国語聞いて日本語に訳して、日本語聞いて中国語に訳してってずっと聞いて話すを繰り返すから中々に喉が渇くし、脳がフル稼働でお腹もすくので、家へと帰る前にコンビニ寄ったのは自然の流れだよね?


 

 10月15日


 Am5:30 起床 眠い


 昨日の朝待ち合わせがだいぶ早かったので、荷物を寮へと持っていけず林口に帰ったのもあって、今朝は早起きだ。顔を洗って、着替えて、ご飯食べたら駆け足でバス停へ向かう。バスが見えたら大きく手を振る。大げさなくらいが丁度いいのよ。気付いて貰えないからね。


 寮についたらまだ時間が少しあったので、今日のプレゼン内容をもう一度確認する。


「眠い」


 何度目か分からない言葉を言いつつ。学校へと向かった。朝いちでプレゼン結構しんどいよ。


 教室で婉玲Wǎn língに発音が不安なところを再確認していたら小藍Xiǎo lán小陽xiǎo yángに昨日のお礼を言われた。私も楽しかったから気にしないでと返しつつ昨日で私たち4人は、少し距離が縮まったともいえる。簡単な弄り合いが出来るようになっているからだ。友達増えたよ!この私の心からの喜びに気づくものは中々いないだろう。

 プレゼンも無事終わり、英語では頭を抱え。統計学では更に疑問符が頭に浮かびまくっていたが……


(テストどうしよう。死ぬぞこれ)


 今オーケストラが曲を奏でてくれるなら天国と地獄をチョイスするね。そういう事じゃないって言われてももうタイトル通りの気分なんだよ……



 10月16日


 朝からバイトに勤しみ。授業を終わらせ寮で明日のプレゼン準備。


 「プレゼンが終わらない~減らない~」


 某CMソングを替え歌にしつつパワーポイントを確認していく、発音が不安なものは、翻訳機に発音して貰って、練習する。やりすぎると正解が分からなくなるのが難点だけどね。



 10月17日


 楽しい体育が終わり、プレゼンもなんとか無事に終わらせ、お昼を食べたら今度は会計で躓いた。


(今の単語どういう意味?)


 専門用語が頭に入って来ないので、とりあえず板書を書き写していたら間の休憩時間で、安麗Ān lìが大丈夫?と声を掛けてくれた。隣に座っているから私が唸ってるの聞こえてたんだろうなぁ。私はおずおずとノートを示して「ここが……」って言えば、めっちゃ分かりやすく教えてくれた。天使なのかな?

 応用で安麗Ān lìが見守りつつ私がもう一度1人で別の問題を解けば、「そうそう合ってる!正解だよ!」って褒めてくれる。天使だわ。めっちゃ助かる。一人だと永遠にどこが間違っているのか分からないままだったからね。

 もちろん帰ってからしっかり復習したよ!


 

 10月18日

 

 お昼私は会議室に来る教授たちに、点呼表へのサインをもらい。お弁当を手渡していた。


 2限目の休憩時間に電話が来たの。「お昼に会議の手伝いバイトしないか?」ってお弁当もつくよなんて言われたら2つ返事で了承してたわ。


 バイトの仕事の中で一番楽だった。名前書いて貰って、弁当渡して、教授たちが会議中は、お弁当食べつつ勉強して、終わったら会議室の片づけで終わりだよ。話したの教授たちへの挨拶位だもん。因みに私の学科の教授陣は私を見るなり、「バイトかい?」とか「困ったら言うんだよ」とか声かけてくれる。何回かお手紙渡しに行った部署の人も顔を覚えてくれている人は手を振ってくれたりしてくれた。


 因みにお弁当がいくつか余ったのだが、1人でしょ?って夕飯用に1つくれたんだよ。めっちゃ有り難い。


 交流会があったから持って行って食べてたら「今日は豪華だね」って言われた。教授が食べるやつだから美味しいお弁当なのだよ。満足満足である。



 10月19日


 微積分で頭を悩まし、家へと帰る前にスーパー寄ったらなんと鶏肉がお安かったのだ!

 とは言っても台湾は日本みたいにすごくきれいに処理されている訳ではないからなるべく自分でも処理しやすそうなのを選んで買った。頼めばやってくれる人もいるけど、骨とか皮に少々ついた毛くらいなら自分で処理できるしね!


「唐揚げ~唐揚げ~」


 せっかく鶏肉が手に入ったのだから好物を作ろうと下味しっかりつけて、待っている間に掃除洗濯済ませてノートの整理をして、頃合い見計らって揚げていくよ!って言っても一人暮らしだから油をなるべく使わないように小さなお鍋でやることにした。結論から言うと中々美味しく出来たと思う!自画自賛だが食べてくれる人がいないので、すべては自身の評価のみである。



 10月20日


 眠い目をこすりながら教会へ行き、家に帰るととりあえず、夕飯までには少し早いので、復習の続きをしつつ、テストまでの計画を立てることにした。


 テストまで3週間もないので、効率よくしないと勉強が終わらないのだ。間にプレゼンも沢山あるし……


「台湾の学生ってみんなこんなに大変なのかなぁ~」


 他の学科がどうか分からないので比べようがないのだが、プレゼンは企業管理が群を抜いて多いのは最近思った。寮のメンバーにもドン引きされるくらいあるからねプレゼン兼レポートの報告Bàogàoの数。


 計画表の結論は、まず計算問題を如何にするかになった。



 10月21日


 死んだように眠り起きれば案の定お昼の時刻を指しており、朝食兼昼食を食べた後、計画通り計算問題を打破するべく、まず会計から手を付けることにした。と言うのも安麗Ān lìが教えてくれたおかげで、文章問題が無ければ結構スラスラと解けるようになっていたからだ。問題は文章題、全部漢字で引っ掛けに引っかかりやすいので、教えてもらったコツをもとに自力で練習中だ。間違えたら学校で教えて貰うためにも自分の苦手を先に知っておかないと意味がないからね。


 休日は数字と格闘して一日が終わったのであった。


 

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