1年 第2学期 13週目

 


 5月14日



 またまたまたまた事件は起きた。


 管理学のプレゼンなんだけど、他のグループが、パワーポイントを開けていざプレゼンってなった時――


不要Bùyào報告bàogào下台xiàtái。【報告しないで、降りろ】」


 みんなが、え?っである。まだ何もプレゼンのプの字もしてないよ。何なら次のグループは、老師Lǎoshīがランダムに人を当てて「この文章の意味は?」って問いかけている。因みにプレゼンすらしてない。ただ老師Lǎoshīが気になったことだけを見て聞くという――よく分からない報告会。その後も「お前たちやる気あるのか?」である。


(原稿すら読む以前の問題じゃんこれ表題が気にくわないなら落とすってこと?その前に何を求めているのかが分からん~)


 なんだろう管理学の老師Lǎoshīと私たちクラスの溝が、さらに深くなった気がする。これ修復不可能なんじゃ……と思っているところで、ふとそう言えば学期末に老師Lǎoshīの評価をすることを思い出した。


(管理学みんな最低評価つけそうだなこれ)


 授業が終わった?後志豪Zhì háo老師Lǎoshīの所に駆け寄っていった。こういうところは素早いと思う。

 私も話聞けるだけ聞こうかな?って思って席をたったら夢玲Mèng língが「ねぇ~」と声を掛けてくる。基本的に中国語で話すが、時たま日本語で話しかけてくる。今回は日本語なので、聞かれたくないことだなぁ~と分かりやすい意思表示に苦笑しながら椅子に座り直して聞く体制を取った。


阿媽a má~私校長に今日の授業も踏まえて老師Lǎoshīの事手紙書こうと思う」

「へ?抗議するってこと?」

「そう。担任と校長とあと学校の教育部の所かな手紙出すとしたら」

「大丈夫なの?」

「どう考えても老師Lǎoshīのやり方が悪いし、教える気が見えない」

「まぁ~私もテストの事と言い疑問には思うけど、学期末に評価あるでしょ?私はその時に直接意見書こうかなって」

「その手もあったかぁ~多分クラスみんな最低評価つけるよ」


 同じことをやっぱ思うよね。皆頭抱えてるし、今日まともにプレゼンさせて貰えなかった子に関しては一人半泣きである。何も話してもいないのに一方的に怒鳴られたらみんな恐怖しか感じないよね……


 今日はテンションがた落ちだったので、寮に、戻る前にコンビニで、サラダとプリンを購入。


「カレーカレー♪」


 家からカレー持って来たんだ~付け合わせの野菜に、今日頑張ったなご褒美のプリン!


「最近の楽しみ食べることしかないなぁ~」


 食べたらまたプレゼンの内容修正に入る。今日は大幅に変更になったからね。やること増えてるし~なんで?




 5月15日



「眠い」


 今日も今日とて3時間睡眠。あれ?最近平日にまともに寝たのいつだろう?考えたら駄目なやつだこれ


 眠い頭に鞭打って、授業をした後、志豪Zhì háoがプレゼンの事で話があるって言われて、夕飯がてら近くの吉野家へ


 吉野家久々~なんだけど、私からすると若干高いなぁとまぁ学生だから仕方がないのだが……日本の物を異国で食べると高いよね~日本でもそうだし、現地ではこんなに安いのにって思うものが異国だと高い。輸入品ならまだしも材料も調理も現地なのに高い不思議だよね。掘り下げると長くなるからまぁこの話はさておき――

 何の話かな?と思えば、仕事を倍にされた。他の人に頼んだの?って聞いたらこれはあなたにしか出来ないって、いや資料を探すのは誰にでも出来る。私は思い切って聞いた。



其他人Qítā rénde分工fēngōng是如何shì rúhé你現在Nǐxiànzài負擔fùdān什麼呢shénmene?【他のみんなにはどんな仕事を割り振ってるの?あなたは今どの部分やってるの】」


 って、するとニコニコ笑いながら話し出した。


她和Tā hé她是tā shì這一家zhèyījiā公司的gōngsī de基本jīběn資料zīliào~【あの子とこの子は、この会社の基礎情報で~】」


 (あれそれ先週私が調べてよね頼まれたから)


夢玲Mèng língshì PPT的統整detǒngzhěn夢玲Mèng língには、パワーポイントのまとめをお願いしてる】」

「……(それ自分がやるって言ってなかったけ?)」


 なんだろうこの突っ込みし放題の回答は、二重に仕事してない?もしくは片方が何もしていない――いや何も仕事を渡されていない可能性もあるのかな?

 沢山言いたいことはあるんだけど、私はどう言うのが正解なのか分からなくなった。

 そこまで、中国語が流暢に話せるわけがない。何なら小学校低学年と同レベルもしくは以下の語彙力しかないのだが、そこをいいように便利に使われている感が拭えない。美味しいはずのご飯の味がどんどんしなくなった。もやもやがどんどん大きくなる。


(どうしたらいいんだろう)


 志豪Zhì háoが話しているのに相槌を打ちながら悶々とした気持ちが膨らんでいくのであった。




 5月16日



「お肉が食べたい」


 もう色々限界だったので、私はやけ食いならぬお腹を満たすために何故かケンタッキーに足を運んでいた。

 臺灣でケンタッキーは肯德基Kěndéjī、マクドナルドは麥當勞Màidāngláo、モスバーガーは莫斯漢堡Mò sī hànbǎoって言うよ。


 なぜケンタッキーなのかというと、匂いに釣られてというとても単純な理由です。あの香りは破壊力あるよね~大阪いれば確実に一度は経験している。電車やバスとかでのケンタッキーと551蓬莱の豚まんの殺人級な香りの攻撃。夕方とかに持ってる人がいるとみんな香りにやられるっていうあれ……話それちゃった。まぁ歩いてたら隣をすれ違った人が買っていてその匂いにやられ口がお肉を求めたって言うだけなんだけど……


 臺灣のケンタッキーで是非食べてもらいたいのが、蛋撻Dàntà【エッグタルト】なんだけど、え?デザートなの?って思った方。アレルギーじゃなければ一度食べてみたまえ!パイ生地のタルトにとろーりカスタード最強コンビだよ!国によってメニュー違うんだよね~日本でなら和風チキンカツバーガーとミニアップルパイが好きで良く頼んでたんだよなぁ~月見バーガーの時は半熟卵のとろ~り感に満足しながら食べてたっけ?

 臺灣のケンタッキーなんだけど、ビックリしたのが、麻油雞Máyóu jī鶏肉をたっぷりの生姜とお酒で煮込んだもので、あとご飯もついたセットがあったり、フライドチキンも辛いのとオリジナルがどちらも普段から売ってある事。私は辛いのダメなので、オリジナル一択なんだけど、メニュー見てるだけども面白いよね。食べながらメニュー眺めれるくらいには面白い。

 臺灣に行った際には、「異国にいってファーストフード?」って言わずにぜひ立ち寄ってみてね。異世界ならではの文化の違いをこういったところで体験できるよ!


 お肉で元気になって、勉強勉強!




 5月17日



 今日の交流会は、友達とか呼んできてみんなに教会ってどんなことをしてるのか?って知ってもらう日なんだって、だからいつもより人が多い。ふと見知った顔があった。そう私がまだ日本にいて留学のりの字も考えていなかった頃、旅行で遊びに来ていて案内したことがある子だった。向こうもびっくりで、二人で思い出話に花を咲かせたよ!


 交流会が終われば、また寮で色んなものに追われる結局今日も今日とて3時過ぎに仮眠をとる始末だ。

 しんどい




 5月18日



 今日は会計学のプレゼンの日、会計学で何をプレゼンするのかというと、同じ系列企業を2つ選んで、そこの経営とか株価とかの違いを会計目線から見るって言うプレゼン、意味わからないよね。初めプレゼンの概要聞いた時目が点になったもん。どういう意味?って私がどういった内容なのか理解するのに結構時間かかってやっと出来上がったからね。資料集めるの大変だったよ。台湾の企業だと内容見るのも一苦労するから本当に、グループだからほぼお荷物状態にならないように私個人としては必死なんだけどね。


 何とか無事に1つ終わって良かった良かった。




 5月19日



 教会行って家に帰ると、私はいそいそとノートの整理をしていた。

 何なら全然終わりが見えない。そろそろテスト勉強も始めないと本当にやばいんだよね。色々とここはネットが繋がらないから邪魔は入らない。心置きなくノートをまとめられる!

 どこよりも捗ったのであった。




 5月20日



 寮に戻るとメールが入っていた。


「和音誕生日おめでとう!

 20歳の誕生日直接祝ってあげれなくてごめんね。

 日本帰ってきたらお祝いしようね。

 家族一同より」


 と私の真似をしたのかビデオレター付きだ。


 そう今日は私の20歳の誕生日だ。成人になった日、なってみると言えるのが、社会的責任を伴うけど、違いが分からないっていうまだ学生だからそう思うんだろうけどね。自分用にこっそり小さいケーキ買って昼に一人で祝ってたんだけど、家族からのメッセージを見て自然と笑みがこぼれた。こうやっておめでとうって言って貰えるだけで、私には十分だ。それ以上は望むと罰が当たる――気がする。「お姉ちゃん何が欲しい?」って妹弟からメール来てるけどなにも浮かばないので、「お菓子とお肉」って答えたら「全部食べ物やん!食欲しかないんかい!」って盛大に突っ込まれた。といわれてもねぇ?


 Facebookもすごい通知になってた。沢山のおめでとうに心がほっこりする。個人メールで元気?って内容が多くて、笑ってしまったのは内緒の話だ。


 さて、明日の準備をしつつとプレゼン作りの続きをやっているとドアは開いているのだがノックの音が、振り返れば、寮にいた何人かが顔を覗かせている。


和音Héyīn出發chūfā!【和音行くよ!】」


 只今の時刻23時半――


 何処へ?と首をかしげる私に、着替えてと急かされ、下に降りれば交流会の一部メンバーが、そのままバイクへ乗って着いたのは忠孝Zhōngxiào新生xīnshēng駅の近くにあるマクドナルドの2階、上へあがると他の交流会のメンバーが


祝你Zhù nǐ生日shēngrì快樂kuàil祝你Zhù nǐ生日shēngrì快樂kuàil祝你Zhù nǐshēngkuàil祝你Zhù nǐ生日shēngrì快樂kuàil!」


 誕生日の歌を歌って迎えてくれた。心の底から嬉しい。今日何回目のサプライズだろう

 因みに祝你Zhù nǐ生日shēngrì快樂kuàilはお誕生日おめでとうございます。って意味だよ。ケーキには20の数字の蝋燭があるのだが、一人が恐る恐る尋ねてきた。


和音Héyīn你是nǐ shì20歲èrshí suì對嗎duì ma?【和音って20歳で合ってるよね?】」

Duìa說明shuōmíng好了hǎole【そうだよ。って説明するね】」


 彼らが戸惑う理由それは、臺灣といや他の海外でもあり得るのだが、日本との学校の始まり月による違いってところだ。


 日本は4月始まりの3月終わり

 臺灣は9月始まりの6月終わり


 7月、8月は夏休み期間なので卒業証書とかの印字は6月になっている。日本は春休み期間も全部入れてるけど海外はそうじゃないってこと、まぁ飛び級とかそういうのも異国では普通にあるので、細かいことはさておき、4月始まりの日本とのずれがあって、初夏生まれの私と同じ年に生まれている子は、今私の一学年上にいて、私のクラスでもし同月に生まれている子がいたら私より1つ下の年齢だったりする。

 分かりにくいって?分かりやすく例えると


 日本

 2000年4月2日~2000年4月1日がひと学年


 臺灣

 1999年9月1日~2000年8月31日がひと学年

 2000年9月1日~2001年8月31日がひと学年


 って事になる。だから日本で8月以前に生まれている私は、臺灣からすると1年遅れて入学していることになるんだよ。実を言うと9月以降生まれた子でも早めに学校通ってる子もいるよ。生年月日聞かないとこればかりは分からない。


 そしてその事を説明しつつ、飲み物を買って戻って、ケーキを切っていると「あ!」って声が、時刻も時刻なのでほぼ貸し切り状態の店内にいるみんなが声のする方を見る。


和音Héyīn是比shì bǐ 我大wǒ dà【和音俺より年上か!】」


 と叫びだす。一学年上の先輩、実を言うと一学年上は二人しかいない。


「?你生日Nǐshēngrìshì什麼shénme什麼shíhòu?【?誕生日いつなの】」

「5月29日」


 なるほど9日違いで私が先、もう一人は7月生まれなので、これまた私の方が先――

 私はケーキを頬張りつつニッコリいやニヤリと笑って


學長Xuézhǎng【先輩】」


 間違ってはいないがプライドがあるのだろう。やめろ~って叫んでる。他のみんなは大笑いだ。

 面白いので、たまに先輩ってつけて呼ぼうとこっそり思った。


 今日はケーキたくさん食べたしメッセージカードに色々貰って嬉しかったなぁ~


 プレゼンの続きが待っていなければ最高の一日だったのにと私が思ったのは必然的ともいえるだろう。




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