1年 冬休み
約2時間半乗っていた飛行機が着陸した。
シートベルトのサインが消え、周りにいる乗客たちが自分たちの荷物を上から降ろ始める。私もいそいそと荷物を下ろして、狭い通路を歩いき出口を出た瞬間――
「寒い!」
ひんやりとした空気が足下から上へと這い上がってくる。
「寒い寒い、え?冬ってこんなに寒いんだっけ?」
半年間の暖かい気候にいた私は向こうとの寒暖差にプチパニック状態なのだが、それでも止まらずにターミナルへと足を進めている私を誰か褒めて欲しい。
パスポートを見せると「おかえりなさい」と言われた。あぁ私帰って来たのか……
荷物が出てくるのを待って、電車に乗る為に、外に出たはいいが、空港から駅へと続く連絡通路が外に面しているから寒いのなんの周りを見渡せばかなり薄着の人もいるし……慣れてっ怖いね。
空港から私の家まで電車で約1時間弱かかるので、座って景色を眺めてたんだけど、今度は少し暑い――
日本の電車って冬場は椅子の下から暖房が出てるでしょ?長時間乗ってると眠たくなるんだよね。皆も経験ない?それに椅子柔らかいし、臺灣のMRTだと椅子はプラスチック製の硬いやつで、電車もバスも年中冷房が効いてる。暖房どこ?って感じ、だから日本で当たり前だと感じていたものが、当たり前じゃないんだってありがたみを感じたりもっと改善点あるよねって思ったり、色々な感想が出てくる。
家に帰れば「おかえり」と出迎えてくれる人がいるって嬉しいよね。
「ただいま~お腹すいた」
「帰って最初の言葉がそれって」
「和音お土産は??」
呆れる母にお土産にしか眼中にない妹と弟、帰って来たなぁって感じたよ。
***
「落とされた~~~~腹立つ~~~!」
数日後私は家で盛大に叫んでいた。私は絶賛冬休みでも兄弟たちは休み明け学校に行ってるので、今家にいるのは、私と母だけだ。
「何叫んでるの。近所迷惑でしょ」
「だって落とされた。めっちゃ頑張ったのに」
「いくつ落としたのよ」
「1教科」
因みに落ちたのは微積分である。他の教科は60点台が多い。
「落としたものはどうするの?」
「えっと確か……必須科目は卒業までにそれと同じ科目と単位数の1学期なら1学期の2学期なら2学期のを取らないと駄目って聞いたから。2年生になったら1年生と授業受けることになるかなぁ~でもね。2年生での必須で空きゴマなかったら他の学科の全く同じ条件の物を取りに行かないと駄目なんだって」
「じゃあ次頑張りなさい。って本当にギリギリね」
私の成績を覗いた母も苦笑している。うんギリギリだよ。
因みにその学期に取ってる科目全体が1/2以下は即刻退学とか全体の点数が2/3以下は即刻退学とかすごく厳しい。外国人は現地の人からしたら緩いけど、当人たちにとっては点数取れるかどうかも危ういのであまり変わらない。
「和音この92点のやつは何?」
「
「この90点は?」
「
「あんたがコーヒー売ったって言ってたあれね」
近況報告をしているので、なんとなくの言葉で、母もあれねって納得してくれる。
日本語で話すの気が楽だ。この言葉なんて言えばいいの?がない。
「あ!体育89点ある!ってあれ?」
「どうしたの?」
私は画面のある一点を母に示した。
「私クラスでドベだと思ってたんだけど下から3番目だ。なんで?」
「なんで?った聞かれても分からないわよ」
「だって外国人は私とタイの子二人しか残ってないんだよ?もう一人は臺灣の子になるんだけど、サボったのかな?」
「それだけ厳しいってことでしょ?頑張ればいいじゃない」
高校の時に取っていた成績から見たら落ちこぼれにしか見えないが、言葉の通じない異国。
初めから下にいるのだからこれ以上落ちることはまずない。
「私ね4年間でどこまで下剋上出来るか試してみるわ」
「下剋上ってあんたねぇ」
母には呆れられたが、他に言い方が思いつかなかったんだもん。
「なんか友達からメールで、先生の評価しろって来た」
「先生の評価もするのね……」
「みたいだね」
各学期の終わりにその教科に対して、どれくらい取り組んだのか、どれくらいの時間をかけたのか、
「教え方かぁ~」
私は一人呟きながら授業を思い起こしていく。そこでふと思う。
「
私は一人で納得した。
「高校に続けて、大学も皆勤狙うぞ!」
新たな目標が加わった。
1ヶ月などあっという間で、私はゴロゴロしまくり、1週間前には荷づくりの為に、買い物へ来たのだが私の買うものと言えば――
「醤油とポン酢、とんかつソースに、あっマヨネーズ」
調味料が大部分を占めていた。臺灣にも醤油やマヨネーズはあるんだけど甘いんだよね。私の欲しい味じゃないので、持っていく。日本の物は売ってるけど高いのだ。そこにお金は落とせない。
「後お菓子に……インスタント麺も少しもっていこっと」
「向こうに美味しい物いっぱいあるんでしょ?」
「あるけどたまにしか食べられないよ。生活費大事だし。家じゃほぼ自炊なんだよね」
一緒に、買い物に来ていた兄弟たちは私の籠に詰め込まれていくものを見ながら何しに行くんだという目線を向けてくる。だって恋しくなるんだもん。
「あ!お出しとお味噌も欲しいかも」
最終的にトランクには沢山の食料品が詰め込まれました。めっちゃ重い!!
あっという間の休みが、終わり学校が始まるので、異世界に召喚されに行くのだ。
「頑張りなさい」
「うん!行ってきます!」
次に帰れるのは夏休みだ!また頑張らないと!
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