1年 第1学期 16週目

 

 気が付けば残り2週間で期末テスト……


(テスト死ぬヤバイどないしよう)


 ここ数日レポートにプレゼンその他の時間はすべてテストのために費やしていた。

 だがしかし!まず各教科のタイトルをそのまま日本語で探す。そして日本で学ぶ内容と教科書の内容を照らし合わせる。同じなら日本語で内容を覚えて、それを中国語で書けるか試し、専門用語は、いらない紙に何度も何度もそれだけを書く最低限書けないと意味がないので、特に古文は、日本語での翻訳を探した。授業で習ったもの丸暗記すればいいって?全部が訳しなさいならそれでよかったのかもしれないが、日本でもよくある国語のテンプレ問題。「この時のAの心情は?(知らん!って言いたい)」とか「この言葉は何を現しているのか(作者に聞いてくれ!って書きたい)」とか内容を理解していなければ答えられないのだ。中国語の現代語訳読んでても意味が分からないので、古文と日本語訳を連動させるところから始まった。

 正直言うとずっと机で唸りながら勉強している。何なら口から出てくる言葉は「画数多すぎ」「これなんて読むんだろう」とか――止めてくれる人もいないので、独り言が止まらない。寮ならまだ小声だけど、一人の時は……


和音Héyīn快吃Kuài chī~【和音早く食べなよ~】」


 私の脳内と心の中が絶望に打ちひしがれている中、周りにせかされるように私は鍋を食べていた。

 女子寮男子寮恒例冬の鍋パーティーらしい。半年を労わるとともに普段多忙のお兄さんお姉さん方も集まってみんなで交流を深めたりしているんだって、あと後輩の近況を聞いたりフォローしたりするためって言うのもあるけどね。その対象者の一人である私は、鍋を食べつつ質問されつつである。

 そこまで中国語が話せるわけじゃないので、抽象的な言い方だったりするのだが、正しい言い方や言いたい意味を聞き返してくれるので、学校にいるより話しやすかったりする。学校だととりあえず間違えたら最初に笑って来る人がいるので……誰かはご想像にお任せします。


 で、目の前の鍋なんだが、臺灣では鍋の事を火鍋Huǒguōって言うよ。

 因みに火鍋Huǒguōの店はとても多いし、食べ放題店も結構あるよ。大勢で囲んで食べる鍋もあれば、食べ放題だと一人鍋が多くて、食べたい野菜やお肉などをセルフでとってきて自分で作りながら食べる形式をとっている店が多い。お肉や魚介類は注文形式とかバイキング形式とか店によってさまざまだよ。


 皆鍋って言ったら何を思い浮かべる?寄せ鍋でしょ?すき焼きに鴨鍋、昆布出汁に、みそ鍋に、しゃぶしゃぶも捨てがたいし、みぞれ鍋とか上げたらきりがないよね~


 臺灣の火鍋Huǒguōも色々種類があって、大きい鍋1つだったり、2種類のスープが楽しめる鴛鴦Yuānyāng guō【オシドリ鍋】、3つに仕切られたベンツ鍋、炭火の煙突付き鍋とかあるよ。


 鍋のたれは、海鮮Hǎixiān火鍋Huǒguōやピリ辛の麻辡鍋Málà guō、酸菜(白菜の酸っぱい漬物みたいなもの)と豚肉がベースの酸菜Suāncài白肉鍋báiròu guō、冬によく食べられる生姜と鴨肉メインの薑母鴨Jiāngmǔ yā、山羊肉と漢方ベースの羊肉鍋Yángròuguōとか色々あって好みの味を探すのもいいよね。火鍋Huǒguō食べ放題のお店だと鍋の味種類を選べたり出来るから1つずつ試してみるのもいいし、何人かで行って、みんな違う味で食べ比べても面白いね。


 火鍋Huǒguōに入れる具材で、日本では見たことないものも結構あって

 魚卵捲Yúluǎnjuǎn(魚卵が入ったかまぼこ、真ん中の魚卵部分がオレンジ色で周りが白色、上が少し赤色で丸っこいから見た目がすごく可愛いの日本の蒲鉾に比べて弾力が結構ある)

 起司丸Qǐ sī wán(チーズ入りかまぼこ、丸いお団子みたいな形で食べると中からチーズがとろ~り火傷には注意して食べてね)

 貢丸Gòng wán(弾力が凄い肉団子)

 蛋餃Dàn jiǎo(オムレツみたいな形の玉子肉餃子)

 蝦餃Xiā jiǎo(皮が魚のミンチの蝦餃子、見た目は棒状で燕餃Yàn jiǎoと形が同じ色が赤みがかっている)

 燕餃Yàn jiǎo(皮が豚肉ミンチの肉餃子、見た目は棒状で蝦餃Xiā jiǎoと形が同じ色が薄茶色)

 魚餃Yú jiǎo(皮が魚のミンチの肉餃子、海老が丸まったような三日月のような形をしてるよ)

 花枝丸Huāzhī wán(イカ団子、揚げて食べても美味しいよ弾力が凄くあるから噛み応えも抜群)

 魚板Yú bǎn(かまぼこ、見た目そのまま日本の蒲鉾薄く切られてることが多い)

 百頁豆腐Bǎiyèdòufu(大豆かまぼこ)

 水晶Shuǐjīngjiǎo(もちもちの肉餃子、点心でよく見かけるよ透明のぷりぷりした皮に餡が包まれているよ)

 とか紹介したものは、スーパーの冷凍コーナーとかで売ってるよ。

 日本でなじみのないもので言えば、米血糕Mǐ xuè gāo(もち米と豚の血を混ぜたもの)鴨血Yā xuè(鴨血の塊、麻辡鍋Málà guōに入ってることが多い)私は宗教上食べられないけど、気になる人は試してみてね。苦手だし無理って人は、お店の人に、先に聞いておくとか、バイキング方式だと間違えてとらないように気を付ければ大丈夫だよ。


 日本で、鍋のタレって言ったらポン酢とかゴマダレとか色々あるけど、臺灣で鍋のタレって言うと沙茶Shā chájiàng、これね炒め物とかスープとかにも使われる調味料なんだけど、沙茶Shā chájiàngに醤油を少し入れて鍋の具と一緒に食べると美味しいのよすごく麻辡鍋Málà guōとか味が付いているものにはあまりお勧めしないけど、海鮮鍋とかスープの味が薄めの物から試してみてね。ただし入れすぎると沙茶Shā chájiàng意外と辛いので少量から試してみてね。

 因みに日本で外国の調味料扱うところに沙茶Shā chájiàngは売ってたりするよ~


 楽しく火鍋Huǒguōを食べつつ、調べてもいまいち理解が出来なかった単語の意味をみんなに聞いたりととても良かった平日の夜だったんだけど……


 土曜日、いつもなら教会行った後に家で勉強してが過ごし方なんだけど、今日は学校にいる。

 何故なら校慶Xiàoqìng【創立記念日】だからだ。創立記念日って学校休みじゃないの!!って日本なら節目の創立100年とかならお祝いしてるけど基本的に休みでラッキーな日なんだが、臺灣では祝うんだって。因みに校慶Xiàoqìngって言葉を普通に訳すと文化祭とかも同じ意味合いになるんだけど、文化祭と創立記念日って別物だし、臺灣の校慶Xiàoqìngでなにかやってるのかと言われても講堂で学校の貴賓招いてなんかやってるみたいだけど生徒関係ないし、今年は、建設中だった新しい校舎(といっても小さい敷地内に建ててるので、上から見た形がコからロになっただけ)のお披露目会も兼ねてるんだって、生徒たちは基本何をするわけでもなく高校生たちは教室があるからそこにいたり、私たちみたいに教室が都度変わる子たちは場所がなくすることもなく、暇なのだものすごく。


 これで出店とかあったら嬉しいけど無いし、学食は同じような人たちでごった返してる。

 することないなら行かなくていいじゃんって思うでしょう?金曜日の授業終わりにうちのクラスの班長が「土曜日教官が点呼するんだってしかもランダムでだから来てね。連帯責任になるらしいから」っと言ったんだよね。いつそれが始まるか分からないから遠くに行けないし、正直に言うと帰りたい。貴重な勉強時間返して、テスト2週間前なんだけど……と私の脳内の愚痴は収まらず。ふらふらしながらクラスの人探したり、夏に、一緒に授業受けた子で、別の学科の子たちと久しぶりに会ったので軽く話したり、同じ外国人の同志たちと授業がしんどいという愚痴会をしたり、とりあえずの時間つぶしをした。来年からなんか方法考えないと本当にこれはツライよ。って考えてたら3時過ぎ教官が学校の行動入り口前でマイクを構えて「みんな大好きくじ引き点呼始めるよ」って言った。「誰も好きじゃありません!」と思いつつ、くじに当たった科の子たちがあたふたしてるのをご愁傷様と眺めてたらまさかの最後の最後に私たちのクラスが呼ばれた。


「まじかよ」ってみんな大慌てで集まったはいいが、やっぱりサボってる人いたよ3人ほど、皆が小声でどうする?今から呼び出しても間に合わないよって悩んでたら、先輩が数人やって来て、いない子誰?名前と出席番号は?って何するのかと思いきや帽子深めにかぶって、いない子の代わりを務めてくれたのだ。終わりよければすべて良しみたいな?因みにサボった3人は後日先輩とクラスの人に怒られました。

 クラス一人でも休んでたら、教官の有難いお説教という名の講義が待っていたらしい、怖いね。


 来年も学校に来るとはしてどうやって時間をつぶそうかと私の悩みが増えたのだった。




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