1年 第1学期 15週目

 


(おお!屋台がいっぱいだ~)


 今私は教会の友人たちと夜市に来ている。遡ること少し前……

 寮の部屋で復習とか諸々に追われる日々、学校が終わって寮に戻ると


和音Héyīn一起yīqǐ去吃qù chī晚餐wǎncān!【和音、夕飯食べに行こう!】」

Hǎo去哪裡Qù nǎlǐ?【いいよ。どこ行くの?】」

夜市Yèshì!【夜市よ!】」



 財布だけ持ってそのままついて行くと、前方に見慣れた顔ぶれが手を振っている。

 女子寮から歩いて15分くらいの所に男子寮があるのだが、そこに住んでいるメンバーと別の大学の寮に住んでいる教会メンバーが数人いた。話を聞けば男子メンバーが夜市に何か食べに行こうとしていたのを聞きつけて、便乗したとの事。男子メンバーバイク持ってる子多いからね。で、そろそろ帰ってくるであろう私を誘ってくれたのだ。「息抜きしなさい」との事らしい。女子寮で新入生は私だけなので、お姉さま方の好意に、甘えることにする。実を言うと私まだ一度も夜市行けてないのよね。だからすごく楽しみだったりする。


 夜市は、大体が17時頃から開くので、夕方近くなるとどんどん店の屋台が増えてくる。露店がどんどん増えていき店の横に簡易机や椅子が用意されているところやそのまま食べ歩きスタイルの店もある。物珍しい私はひたすらキョロキョロしていると、お姉さまの一人が、笑いながら腕を引っ張ってくれる。完全に迷子防止ですね。異世界じゃどこに行っても珍しいものが溢れてる。同じようで同じじゃない。

 屋台は日本の夏祭りとかで見るその時期になると組み立てて作る屋台とは違い、臺灣のは、押し車みたいな?簡易厨房に車輪がついていて、ステンレス製とかかな?全体的に銀色なものが多くて、簡易厨房も店の種類によって仕様が全部違うし、メニューは基本店の看板に書かれてる。屋台の前に立つと小さな受け渡し用の机を挟んで厨房前にいる店主がいて、上にあるメニューから注文したものを目の前で、作ってくれる。それをビニール袋に入れてお箸と渡されたり、中には発泡スチロールの器と一緒に渡してくれたり、揚げ物とかなら紙の入れ物だったりと、色々ある。店の横の簡易テーブルで食べるのもいいし、そのまま食べ歩きも出来る。

 他には、滷味Lǔwèi碳烤Tàn kǎoなどのお店だと、食材がずらりと並んである物から八百屋さんの野菜を選ぶ感覚で、自分の食べたいものを店先に置いてあるザルに詰めていってお店の人に渡せば、作ってくれる。これの料金は、食材によって違うからお財布と相談しつつ選んだ方が良いと思う。滷味Lǔwèi碳烤Tàn kǎoの説明がまだだったね。


 まずは、滷味Lǔwèi滷味Lǔwèiは煮込むって意味で薬膳と醤油ベースのスープで煮込む料理だよ。

 注文はとっても簡単さっきもさらりと言ったけど、ザルを手に取って、好きな食材を選ぶだけ、煮込み料理だから麺とかもあるよ。ただ結構お腹がいっぱいになるので、他にもいろいろ食べたいって人は、気になる物だけ選んだ方が良い。後はザルを店の人に渡せば作ってくれるよ。お値段は食材によりけりだから店先で見てね。

 後聞かれることとしたら、辛さかな?「要辣嗎Yào là ma?」【辛い調味料いる?】って聞かれるので、自分の欲しい辛さを答えてね。辛いの中国語が「」って言って、辛くするときは「大辣Dà là」、少し辛めは「小辣Xiǎo là」、辛いのが苦手なら「不辣Bù là」とか「不要Bùyào」【いらない】って言えば大丈夫!私の場合は、辛いの苦手だから「不要辣Bùyào là醬少jiàng shǎo一點yīdiǎn」【辛さなしで、醤油だれも少なめで】って伝えてる。煮込みあがった物に醤油だれみたいなものをかけてくれるんだけど、これが私には結構辛いので、これも本当にちょっとでいい。十分味があるから。


 お次に、碳烤Tàn kǎo。日本で言う焼き鳥見たな感じだね。串にささっている沢山の食材から好きなの選んで、同じようにお店の人に渡せば、炭で焼いてくれるよ。焼いているのを待っている間は、ちょっと苦行だけどね。いい匂いだから……


 あと屋台では、店内か持ち帰りかはよく聞かれるよ。店内とかお店の横で食べる時は「内用Nèi yòng」。食べ歩きをしたり持ち帰るときは、「外帯Wài dài」って答えてね。

 小銭は多めに持ち歩いた方が良いかな。料理が出来る間や人気店だと並んでいるので待っている間に、用意しておけばお店側も助かると思うよ。


 今回は、結構な人数で来ているので、みんな適当に買って一緒にシェアして食べてるよ。色々食べられて楽しい。

 一人がふと私を見て


你有Nǐ yǒu吃過chīguòzòng zima?【zòng zi食べたことある?】」

「zòng zi 是什麼Shì shénme?【zòng ziって何?】」


 聞いた本人は、あたりを見回してあれあれと指さす。指の方向に目を向けると三角の形をしたものが、沢山吊り下げられていた。


A!bah tsàng!【あ!bah tsàng!】」


 そう答えると


為什麼Wèishéme知道zhīdàobah tsàng、不知道bùzhīdàozòng zi!【なんでbah tsàng知ってて、zòng zi知らないの!】」


 って突っ込まれた。話を聞くと、zòng ziは中国語。bah tsàngは臺灣語らしい。

 zòng ziは粽子って書いて中華ちまきの事。私が臺灣語の方を知っているのは、知り合いが中華ちまきの事を臺灣語の方で言っていて、それを何の疑いもなく中国語だと思い込んでいたからである。


(もしかすると、私の聞いた食べ物の名前中国語だと思っていたけど、臺灣語の物もあるのかな?ってことは私臺灣語少しわかるのかも)


 我ながら単純な思考だとは思うけど、それくらい新しい発見って楽しいと思うんだ。言葉って、複雑に考えて覚えるより、楽しく覚えた方が絶対にいいよね。これを機に臺灣語も少し覚えよう!


(まずは食べ物の名前とかからが良いなぁ)


 善は急げと、私は食べ歩きをしながら目についたものの中国語や臺灣語を聞いてみたり、見たことない物、知らない物をみんなに聞いて夜市を楽しんだ。


 夜市から寮に戻った後は、お風呂入って、その後はもちろん今日の授業の復習だよ。難しすぎて辛い……


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