いざビザの発行へ

 

 時計のアラーム音で目覚めた私は見慣れない天井を寝ぼけた頭で眺めていた。


「私、今臺灣にいるんだった」


 身支度をして、朝ごはんに昨日買っていたパンを食べた後

 必要な書類がカバンの中に入っているかを確認して家を出る。


 玄関のドアを開けるともう1つ扉がある。


「昨日も思ったけど臺灣って二重扉なんだよね」


 これは防犯のためだそうで、外側は鐵扉とかそれを更に硝子で覆った扉とかでドアの向こう側にいる人が見えるようになっている。内側は日本でもよく見る玄関の扉で、まず来客があった際内側の扉を開ければ外に扉があるおかげでドアを隔てて相手を確認できる。家に入るための鍵は基本2種類、マンションとか下にロビーとかがあるところだと電子ロックとかマンションの玄関口の鍵もあるので、家に関する鍵だけでかなりの数になっている。マンションとかの玄関口だと中から外に出るために、内鍵開けたり近くにあるボタンを押さないと扉が開かない仕組みだ。廊下も内廊下だから日本みたいに外には面してはいない。後窓にも鉄格子が付いている。集合住宅が大多数を占めている臺灣の防犯対策は日本も見習いたいとこだよね。少なくとも二重扉は日本の玄関に欲しい安心感が違うしね。


 マンションのロビーにいる守衛さんに挨拶して、外に出たはいいが――暑いとにかく暑い、しかも日本の暑さは太陽がカラッとしていて照りつける痛いような暑さ、臺灣は湿度が高い分じめじめした暑さだ。


 昨日教えてもらったバス停までの道のりがやけに遠く感じる。


 やっとたどり着いたバス停らしきもので、私はあることに気づいた。そう時刻表が無いのだ。

 あるのはこのバス停を止まるバスの番号と路線図のみなので、いつバスが来るか分からない。今は携帯のアプリであと何分に到着とか教えてくれるもがあるけど、スマホが世の中に出たのは、私が留学してから2年後の話なので、ただひたすらバスを待つのみである。


「確かお姉さん昨日乗るバスが見えたら手を挙げなさいって言ってたっけ、あと小銭の用意と」


 臺灣のバスには両替機がないので乗る際には小銭を用意することを忘れずに、もしくは悠遊卡Yōuyóu kǎ【悠遊カード】にお金をチャージしておく事。このカードはすごく便利で鉄道、捷運Jié yùn (MRT)【地下鉄】にバス、コンビニの電子マネー、後はレンタルサイクルとか一部のタクシーとか使用できるところがとにかく多い、バスとかなら割引もあるから1つ持っておくと便利!私は学生カードを発行するつもりなので、学校の手続きを終えてから購入するつもりだ。


 さっき言った手を挙げる。臺灣はタクシーを呼び止めるみたいに乗りたいバスがあるなら手を挙げなければ、走り去ってしまう止まってくれないのです。

 バスが来たので手を挙げ、バスに乗り込むと「上下車収費shōu fèi」の上の文字が光っている。


(上が光ってたら乗るときに支払いっと)


 お金を投入して椅子に座る。さっきの「上下車収費」の意味だけど、乗車と下車の意味で、上車Shàngchē【乗車】時に、下車Xiàchē【下車】時に料金を支払う。長距離のバスとかだと、2段階支払いの場合もあるので、表示をみたり運転手の指示に従おう

 あともう1つ大事なのが、降りる目的地が近づいたら下車準備を素早くしておくことが大事、日本なら止まってから席を立って降りるけど、臺灣でそれをやるとバスが待たずに発車してしまうので、早めに下車準備をして目的地の下車ボタンを押したら席を立って出口に向かうようにしよう。走行中はやっぱり危ないので、手すりとかを掴みながら移動しよう。運転手によっては待ってくれる人もいるけどかなり少数――


 今日の私は終点まで乗るので、景色を眺めることにする。

 臺灣の建物は基本的にコンクリートで出来ていて、建物の中を改装しても建物自体を取り壊すことがあまりないので、時代を経ている建物たちが街の雰囲気をか持ち出している。新しくできた建物もアート作品みたいな建物が多いから見ていて楽しい。

 臺灣で特徴的なのが、騎樓Qí lóuって呼ばれる建物と道路に面する1階部分を半屋外の歩行者空間にしたもので、その一階部分に商店などの店、2階より上に住戸や会社がある。場所によっては車道、歩道、騎樓Qí lóuがあるんだけれど、基本車とバイク社会の臺灣では、歩道にバイクを止めていたりするので、騎樓Qí lóuが一番安全だったりするあと日よけと雨除けにもなる。面白いのが建物によって所有者が違うので、騎樓Qí lóuの道に統一感が無かったり、お店の机とか椅子が置いてあったりそこで座って食べてりしていて自由なのがまた面白い


 ゆらゆらバスに揺られていると終点の臺北Táiběi車站chēzhàn【臺北駅】に着いた。臺北車站は臺灣の電車、捷運Jié yùn(MRT)【地下鉄】、新幹線の主要駅で、長距離バスとかもあるので利用者はとても多い。臺灣の人は北車Běi chēって呼んでる。

 今日はその向かい側にある新光Xīnguāng三越sānyuè百貨bǎihuò【三越百貨店】の入り口前にあるライオン像で待ち合わせなのだ。


「お姉さん。お早うございます」

「おはよう。バス乗れたようだね」

「うん。バスのスピード結構速いね」

「日本に比べたらね~まずは学費だっけ?」


 私は短期留学ではなく、大学進学なので申請するビザは居留ビザになる。

 簡単な流れを言うと、基本的に海外のビザを申請するには日本にある訪れる国の領事館で申請を出さなくてはいけないが、臺灣の領事館は無いので、臺北駐日経済文化代表処(非政府組織の外国駐在事務所で、実務関係を処理する臺灣側の対外窓口)で留学先の学校の入学許可書と一緒に申請を出す。臺灣の留学等の手続きもすべてここで聞いたら教えてくれる。認可されるとまず居留ビザを発行できる許可書という名の仮ビザを発行してもらい、臺灣入国後居留ビザを発行するんだけど、まず留学先の学校の入学許可書に合わせて、本当にこの学校に留学することが証明できるものとして、学費の領収書が欲しいので、まず学費を払いに行くんでけど、基本臺灣は9月始まりなので、学費も8月末から9月初めでしか銀行は受け付けてくれないから学校へ直接支払いに行く。


 学費を払って思った日本に比べてすごく安い。まず日本でおなじみの入学金というものが存在しない。

 臺灣の文科省に相当する教育部で大学全体の学費を決めているので、文系と理系に若干差はあれど国立や私立を問わずに年間授業料が日本円で約35万円、4年通っても約140万円で、日本の大学の約半額~3分の1しかない。その他の生活費をもろもろ足しても日本の大学の学費より安いと考えると、日本の大学はお金を取りすぎだって思う。これは物価とかの問題ではない気がする……


 無事学費を払い終えて、ビザ申請の為に小南門Xiǎonánménって場所に訪れた。

 ここには、移民署Yímín shǔ【入国管理当局】がある。移民署Yímín shǔは小南門駅の2番出口が一番近いよ。

 臺灣でビザ発行する人は、早めに行くことをお勧めするね。理由として1つは、いろんな国の人が来る分時間が、かかるから昼時に以降は本当に待たないといけない。


 2つ目は、日本の会社あるあるなんだけど、海外の会社に連絡取りたいのに繋がらない対応が遅いって思っている人結構いると思うんだけど、まず覚えておくべきなのが、相手は海外だという事。日本国内と同じ対応をしてくれると思ったらそれは間違いだ。その国それぞれに仕事のスタイルがある。

 臺灣という国だけを見てみよう。まず外食文化が盛んな臺灣では、家で作って食べるというより外で済ますかテイクアウトするのが主流だ。家で済ます人もいるにはいるけど、会社近くで買って会社で食べる人が多い。

 タイムカードを押してから朝ごはんを買いに行く人だっている。

 まず朝の時間帯は、その会社の就業時間から30分後から11時半までの間に連絡入れれば、営業とかで外回りに行っている人以外なら仕事をしているので、スムーズに連絡が取れる。では何故11時半なのか、お昼も同じく外で食べたり、買いに出たりとみんな12時前から動き出すからだ。その後の昼寝の時間を確保するためでもある。昼以降は13時半からその会社の終業30分前までに連絡を取ればいい。

 後その人が休みの日に連絡しても返事は基本返ってこない。日本だと休みだろうが仕事は仕事って思う人も多い。けど臺灣の人からすれば、仕事の時は真面目に仕事をする。休みの日は休みだし、残業したくない人は定時に帰る。こういった国の違いを学ぶ事も大切だと思う。でないと「また連絡来たよ」って本気で嫌がられる。本当に早く対処しないといけない緊急を要するかどうかをしっかりと考えてから行動するべきだ。よく聞くのは「日本で働いている人は可哀そう」だ。日本人は会社や仕事に縛られていると海外の人から思われているのは、致し方ないと思う。それくらい価値観が違うし、国際化が進むにつれて、日本の良さを残しつつも会社の在り方も変わる必要があるのだと見ていて思った。


 話しは戻るけど、ビザとか必要な手続きを早く済ませたいのなら必要なものを先に準備して、時間の考慮をしつつ行動すれば、待ち時間15分以内とかで済むようになるよ。


 こうやって見ていても国の違いは多いなぁて思った。


 手続きを待っている間に、学費支払いの時に学校で渡された書類にお姉さんと一緒に読んでいたんだけど


「8月に推薦枠で入った子たちの復習授業があるみたいだね」

「さっき参加しないか?って聞いてたあれね。具体的には何するの?」

「書いている内容見る限りだと、高校の復習かな?同級生と早く知り合えるし、行ってみる価値はあると思うよ」

「うん。入学前に知れるのはいいよね。朝早いけど」


 最後のセリフに「臺灣じゃそれが普通だ」と言われたことを私は後々知る。


 とりあえず、8月から大学に通う事になりました!


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