一足先の大学

 

 部屋に響き渡るアラーム音を止め、思いっきり伸びをする


「眠い」


 午前5時半


 ゴロゴロしている余裕もないので、身支度を整え、朝ごはんを食べる。


「筆記用具と電子辞書と後はお弁当」


 これから何が入用になるか分からない為、出来る限り自炊しようと決めている。


 6時半過ぎにバス停に向かって歩き出したといっても早歩きである。

 いつ来るか分からないバスと渋滞とかの事を考えると早めに出るしかない


 大学最寄り駅に着いたのは、7時50分

 朝ごはんとかが売られている店の前を通り過ぎ大学正門側へと歩いていく


(学費払いに来た時も思ったけど学校小さい)


 都市部にあるため校舎は小さく縦に長い、正門に立てば裏門が真正面に見えており、斜め迎え側の工事中の建物の人の出入りも見えるくらい小さい


(正門入って右の建物から3階に上がって廊下出たところの1つ目の教室と)


 教室に入ると人がまばらに座っており、黒板前に張り紙がある。どうやら席順らしい


(一番後ろの真ん中から5つ目、それにしても……)


 席を探しながらあたりを見回し思ったんだけど……

 教室が昭和感満載なのだ。学校の机と椅子が全部木で出来てるっていえばわかるかな?

 座ると左右にぐらぐら揺れ、机も若干ぐらぐら揺れている。

 あと誰かが鉛筆でぐりぐりあけた穴もある。


 校舎自体が古いといえば古いのだが、まさか使っている部品も時代を感じさせるものとは思はなかった。


 しばらくして教室の席がほぼ全部埋まり、先生がやって来て点呼を取り始める。


(臺灣はいの返事「yòu」って言うんだ)


 なるほどと覚えていると「天野Tiānyě和音Héyīn」と呼ばれた。そのまま癖で「はい」と返事をすると前に座っている生徒たちが一斉にこちらを見た。四文字が珍しいのは分かるんだが、なんとも居心地が悪い、どういう反応をするのが正しいのか正直言って分からない。


你是Nǐ shì日本人rìběnrénma?【あなたは日本人ですか】」

是的Shì de【はい】」

除了chúle她以外tā yǐwàicóng國外guó wài來的lái de同學嗎tóngxuéma?【彼女以外に、海外から来た生徒はいますか?】」


 國外guó wàiって言葉で外国の事指しているのは分かったし、私の両サイドに座っていた3人の生徒が手を挙げたので、私と同じように外国から来た人がこのクラスには私を含め4人いることが分かった。


 先生はその確認をした後、私たちに困ったことがあれば遠慮なく言うようにと言った後、授業に入りだした。


 まぁ1か月間の結論から言おう。ついていけませんでした……

 高校三年間の内容を1ヶ月で復習するので駆け足気味なのは理解できるのだが、外国人4名にはきつい――

 ビデオとかの動画再生を早送りしている内容を聞き取れと言っているようなものである。


 だから私は、学校からしたら復習用の講義なのだが、まず中国語とこのスピードについて行けないので、復習はまず不可能。大学の授業も結局のところ聞き取れなければ意味がない。日本や短期の語学学校はゆっくり話しているが、一般の会話はもっと早いのだ。耳が慣れなければついて行けないのが現実問題だった。この1ヶ月は、耳を慣らすための期間にした。


 科目は、経済学、会計、英語、数学

 経済学に至っては、配られるプリント全てが英語である。

 この一ヶ月率直に思ったのは、臺灣の英語教育のレベルの高さである。

 臺灣は早くから英語教育に力を入れており、今の子達だと幼稚園から英語に触れているらしい、まずは言葉遊びなどや歌、小学校に入ると授業中に劇などを子供達に演じさせて、話す力を身につけさせている。それから徐々に単語や文法へと段階を踏んでいく、日本では、英単語や文法が主で、英語が読めても話せない人が多いもしくは、私と同じで英語とお友達になれなかった人だと思う。


 臺灣に来て基礎なしで中国語に触れるとわかるのだが、言葉を覚えるというのは、まず聞くこと話すことが1番の上達方法なのだということ。私達が幼い頃親や兄弟の言葉を見よう見まねで覚えそこから文字というものに触れて成長していくのと同じで、外国語を学ぶのもそれと同じ原理なのだと私は痛感した。


 だから学校のない日や家に帰ると、その日の復習もするのだが、時間が有ればニュースを見るのも良いけれども難しい言葉を初めから聞くより、日本のアニメやドラマを中国語吹き替えられているものを見るようにした。なんなら好きな外国の音楽や漫画、雑誌でも良い。絵や動作がある分何を話しているのか、考えて推測する力を養える。その後に日本語の実際の内容を見て答え合わせをしていく。音楽は声に出して歌える分発音の練習になるしね。


 臺灣のテレビの面白い所なのだが、まず普通にテレビを買っても合計で4つのチャンネルしか見られない。他は全て有料だ。だから大体の家はお金を払ってテレビを繋ぐ、そうすると100以上のチャンネルを見ることが出来る。(チャンネルは25なら2と5って押すよ)それも臺灣のものからアメリカ、イギリス、日本、韓国など様々な国の物が見られるのだ。そしてもう1つ海外のバラエティーやアニメ、ドラマは朝、昼、夕方、夜と同じ物を放映するので、朝見逃しても他の時間帯で見ることができるというありがたい放映の仕方をしてくれている。日本のアニメはやはり人気で、朝、昼、夕方は吹き替え版、夜は日本語版の放映なので、同じ物を繰り返し見て言葉を覚えるのに、とてもためになった。しかも全て中国語の字幕がタイムリーで、ついているため余裕が出てくると文字を目で追うことも出来る様になった。もし外国語を覚えたいって人がいるなら家での練習は、この方法を私はお勧めします!


 後よく先生から唐突に質問されたりしたのが、この有名人知ってる?とか昔先生が見ていたアニメのタイトルを全部中国語で聞かれるのだが、タイトルがあまりにもかけ離れすぎて黒板に文字を書いてもらって推測したり、どん容なのか聞かないとやはり分からないものが多かった。

 日本でも有名な 

 ・スラムダンク=灌籃Guàn lán高手gāoshǒu 

 ・ONE PIECE=海賊Hǎizéiwáng 

 ・クレヨンしんちゃん=蠟筆Làbǐ小新 xiǎo xīn

 ・アンパンマン=麵包Miànbāo超人chāorén

 (直訳したらパンのスーパーマンだよ。因みにあんぱんの中国語は、紅豆Hóngdòu麵包miànbāoって言うよ!あんぱん食べたい時はこれ言ってね)

 ・ドラえもん=哆啦Duō laA夢A mèng

 ってタイトル書いてるのに、作中でのドラえもんはXiǎo叮噹dīngdāngって名前だったり、違いを見つけるのが結構面白かった。


 中国語と日本語で漢字の意味が全く違う事もかなりある。

 例えば「先生Xiānshēng」日本だと教師や講師のことを指すが、中国語では、男性の〇〇さんや〇〇様の意味合いを持つ、女性だと「小姐Xiǎojiě」を使ってね。じゃあ中国語の教師は、「老師Lǎoshī」って言う。

 他にも何処かに行くって「行く」=「」って書く、日本だと去って行くって意味合いとかで使うけど、中国語で「」って言うとどこかへ行くとか行ったって意味になる。

 じゃあ「Xíng」の漢字は、臺灣では「行為Xíngwéi【行動】」とかの意味合いで使われている。中国だと「いいですよ」の承諾の意味でも使われる。

 臺灣の承諾は意味は「可以Kěyǐ【いいですよ】」とかね。だから「Xíng」で返事してきたら中国人の確立が高い。

 臺灣でよく聞くのは「行動Xíngdòng電話diànhuà」=携帯電話(因みにスマートフォン=「智慧型Zhìhuìxíng手機shǒujī」)とか「銀行Yínháng【銀行】」とか同じ漢字でも違う意味合いを持つ言葉が多い。

 臺灣にいるとそうした驚きと日々出会う事が出来るのが、また1つの楽しみ方だと一ヶ月で思うようになった。



 9月これからいよいよ大学生活が幕をあける――

 私は初日から文化の違いをひしひしと感じる事となったのである。


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