第35話 結果と次回の実験予定
今回の実験において確認されたのは次の3点だ。
1.使用した酒の個性は、梅酒にした場合でも消えるわけではない。
2.酒の種類によっては、元から持っている個性が梅酒としてのそれを凌駕したり、却って強く感じられるようになったりする。
3.元の酒の味よりも香りの方が、出来上がった梅酒に影響を与える。
基本的に、元の酒が酷くマズかったり、とんでもない作り方をしてしまったりしない限りは、どんな蒸留酒を使っても「梅酒」と呼べるものに仕上げることができると考えていいだろう。
ただ、元の酒の個性が消えない以上、出来上がった物が一般イメージとしての「梅酒」から外れた物になる可能性は否定できない。ひとまず、飲めないような物にはならないが。
使用した酒の中で、独特な香りを有する芋焼酎、ジン、テキーラは、梅酒にした後も香りが残った。ブランデーも香りが強いと言えるが、梅酒のそれとはぶつからずに調和していたように思う。
逆に香りがドライな酒は梅の香りがよく出ていた。麦焼酎とウォッカはクセが小さく、梅酒として馴染みやすい味に仕上がっていたと思う。しかし、度数が25度で味のくせが小さい麦焼酎は、青梅のえぐみが感じられたことから、元の酒に一定の香りや度数が無いと、えぐみなどを隠すことができないと思われる。
古酒を使って作る江戸時代の梅酒が、事前に梅のアク抜きを行っていたのも、そうしたことが理由なのではないだろうか。
泡盛は、焼酎の中でも芋ほど強い香りが無いが麦ほどドライでなく、両者の中間的な味わいで、非常に良いバランスの梅酒となっていた。やはり米の焼酎は梅酒との相性が良いのかもしれない。
ウイスキーは期待していたのだが、あまりパッとしない結果であった。悪くはないのだが、ブランデーほどベストな酒というわけでもなく、個性的でもない。
ライトユーザー向けの癖の少ない銘柄であったため、仕方がないかもしれない。
逆に、それほど香りと味のクセが強くないはずのラムの結果は衝撃的だった。何故このようなことになるのかは分からないが、果実酒の原酒として使いづらい酒であることは確かなようだ。
今回得られた結果を元に、来年度の実験の予定を考案した。
1.米焼酎は、焼酎の中で最も梅酒に適しているか?
2.芋焼酎は共通して梅酒に芋の香りを残すのか?
3.ジンを梅酒にした時に、元の酒のボタニカルによって香りが変わってくるのか?
4.ラムはどんな酒で造っても梅の香りを封殺するのか?
5.ウイスキーは種類によって、梅酒にした時に判別できるような違いが出るか?
来年度はこれらの疑問を検証するために、同じ条件下での実験を行おうと思う。
梅酒実験 Umexperiment 氷川省吾 @seigo-hikawa
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