第13話 (番外編)二人きりの三次会

0:バーにて


玲奈:いい式だったね

有希:そのセリフ、二次会でも言ってなかった?

玲奈:何回だって言うよ!だってもう、美樹すっごく綺麗なんだもん

有希:綺麗だったよねぇ

玲奈:ドレスもだけどさースライドショーで小学校の頃の写真とか流れてきたじゃん?あれもう私涙止まんなくて

有希:わかるわ~キタよねあれ

玲奈:ほんとだよ、スライドはやばいって!どんだけ泣いたか!あー、さっき撮った写真絶対ブスだわ、見るの怖い

有希:違いない(笑)…そう言えばさ

玲奈:なに

有希:スライドショーで思い出したんだけど、玲奈って昔…小学校4年くらいの時、確か初恋の人の欄に「いとこのお兄ちゃん」って書いてなかった?

玲奈:…有希ってマジで昔から記憶力お化けだよね

有希:ってことはやっぱそうなんだ。その相手ってもしかして

玲奈:あーもう!だから有希にはさとにぃが従兄妹だって言いたくなかったのよ!

有希:なるほどね、そういうこと。先生、玲奈の初恋の人だったんだ?

玲奈:初恋ったってそんな全然、本気の奴じゃないよ?親戚の中で他に子供いなかったし大人は大人同士で喋ってるから遊び相手いなくて、必然さとにぃが相手してくれて…まあ、あいつ優しいし

有希:惹かれたんだ

玲奈:ちょっとだけよ、ちょっとだけ。ただ

有希:ただ?

玲奈:お母さんに一度だけ、あいつと結婚したいって言ってみたことがあるの。そしたら、ちょっと難しい顔して笑って「そっか」って一言だけ言われて、子供心になんかまずいこと言ったのかなって

有希:あー

玲奈:今ならあの表情の意味もわかるんだけどね。いとこ同士ってほら近親相姦には当たんないけどさ、やっぱ近すぎるし…子供なんか出来たら血が濃すぎてアレじゃん?親的には複雑な顔にもなるよね

有希:まあね

玲奈:だけど子供の頃は当然そんなことわかんなくてさ。なんでさとにぃだとダメなんだろう、さとにぃは悪い人なの?近づいちゃいけないの?ってぐるぐるして

玲奈:そうこうしてる間に向こうも私も学校とか就職とかでなかなか会わなくなって…気づいたら好きが苦手に転換してた、のかな。高校の時はマジで関わりたくなかったもん、ダッさいしヨレヨレだし

有希:なるほど、妙に先生に当たり強い時あるなって思ってたけど、そういう背景があったのね

玲奈:今思えば、反抗期も入ってたのよきっと。なのにまさかの美樹がフォーリンラブよ、もー内心「やめてよ!」の嵐よ

有希:実際「やめなよ」とは口に出してたけどね

玲奈:そうだっけ?ホント有希って賢いよね。その記憶力、ちょっと恨むわ

有希:(笑う)

玲奈:あ、この話美樹には絶対内緒だからね?あとさとにぃにも!

有希:分かってる

玲奈:ホント~?

有希:ほんとほんと。…疑うなら、私の秘密も教えよっか

玲奈:え、有希の秘密?

有希:知りたい?

玲奈:うん、教えて!

有希:私のほうがもっと罪深いよ

玲奈:え?

有希:私さ、賢い人好きなんだよね

玲奈:ん?

有希:勉強ができる賢さじゃなくて、地頭力って言うか…頭の回転が速くて会話をこう、卓球のピンポンリレーみたいにポンポンできる人。そういう人に惹かれるんだよね

玲奈:それが秘密?

有希:…最初は何とも思ってなかったの。でも、ある友達をある人とくっつけようって動いたらその、ある人がそういう賢い人だって分かっちゃって

玲奈:え

有希:やぶ蛇よ、ほんと。突っ突かなきゃよかったって思ったわ。…友達の好きな人を好きになるなんてさ、最悪じゃない?美樹を応援したりしなきゃ、先生の良さにも気づかなかったのに

玲奈:有希…それって

有希:話す度にこう、トムとジェリーみたいな掛け合いが楽しくって。ああ言えばこう言うって同年代の男子相手だとなかなかできないんだもん。だから、ちょっとだけ本気で惹かれてた

玲奈:ちょっとだけ、本気

有希:そう、ちょっとだけ本気。ね?私のほうが罪深いでしょ。後から好きになった挙句、話す度にじんわり好きだなぁって思って…多分、玲奈みたいにまだ完全に風化できてないし

玲奈:さとにぃのこと、今でも好きなの

有希:ちょっとだけよ、ちょっとだけ。ああでも、勘違いしないでね?

玲奈:え?

有希:美樹から奪おうとかあわよくば、とかは考えたこと無いから!私、先生よりも美樹の方が大好きだもん。今日の式だって、心の底からおめでとうって思えたし

玲奈:有希…

有希:ただ…先生みたいな人、私も巡り合えたらなって思っちゃったけど。こう…仲良く喧嘩できる相手、みたいな?でもこれがなかなかいないんだよね~

玲奈:いるよ!

有希:え?

玲奈:いるよ絶対!絶対出会えるよ!有希にも私にも、さとにぃよりうんと素敵な人が絶対出来るから!

有希:玲奈…もうっ…大好きっ

玲奈:うん!私も大好きっ

有希:飲も飲も!今日はとことん飲んじゃお!

玲奈:うん!

有希:グラス持って。行くよー?…私たちの大好きな二人の門出と

玲奈:私たちの、明るい未来に

有希:乾杯!

玲奈:乾杯!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る