第6話 8月、花火デート

0:8月、玲奈と美樹、通話中


美樹:もうすぐだね~

玲奈:なにが?

美樹:お祭りだよ、お祭り!

玲奈:ああ、夏祭り

美樹:そうそう。今年も第4土曜日に開催なんでしょ?もう再来週じゃない!毎年あの公園の花火すごいよね。今年も3人で見たいなぁ

玲奈:え?

美樹:ん?どうかした?

玲奈:いや、3人って?

美樹:え?だから、玲奈と有希と私の3人。毎年この日は一緒に花火見に行ってたじゃない

玲奈:いや、そうだけど

美樹:あれ、もしかして今年は予定合わない?私てっきりまた3人で行くんだと思って予定空けてたんだけど

玲奈:…空いてはいるけど……てか空けてはあるけど

美樹:ん?

玲奈:今年は美樹、県外行っちゃってるし、てっきり有希とのデートかなって思ってたから

美樹:え~?お邪魔だった?

玲奈:…っていうか、いいの?

美樹:なにが?

玲奈:さとにぃと行かなくて

美樹:え?なんで先生?

玲奈:なんでって…あんたたち付き合ってんじゃん

美樹:うん

玲奈:だったら普通、こういうイベントは恋人同士で行った方が楽しいんじゃないの?

美樹:まあ、それはそれで絶対楽しいけどさぁ

玲奈:けど、なによ

美樹:私の中で、この夏祭りは玲奈と有希と一緒に行くのが定番っていうか。カレンダーにもずいぶん前から丸つけてたから

玲奈:…っ!美樹ぃ!行こ!絶対行こ!

美樹:うん

玲奈:あ、なんなら久しぶりに浴衣買いに行かない?

美樹:いいね!高校3年間同じの着てたもんね

玲奈:じゃあ有希とも予定すり合わせてまた連絡する!

美樹:了解。待ってまーす


0:喫茶店にて


有希:あれ?小林先生?

小林:伊藤さん?

有希:うっそ、偶然。先生もズタバとか来るんですね

小林:どういう意味ですか

有希:いや、フラペチーノ頼む先生想像できなくて

小林:生憎(あいにく)ですが、僕はいつもブレンド一択です

有希:なるほど。ここ、相席いいですか?席見つかんなくて

小林:どうぞ。伊藤さんはこの後近藤さん達と買い物ですよね?

有希:おーさすが彼氏。彼女の予定は把握済みってことですか

小林:茶化さないでください

有希:いやでーす。ってか先生?いつもみたいに美樹のこと、美樹って呼んでもいいんですよぉ?

小林:テイクアウトにしようかな

有希:冗談ですって。今日は1日美樹を借りますね

小林:僕の持ち物じゃありませんけど

有希:あれ?そうでしたっけ?

小林:…じゃあ、大事に扱ってくださいね

有希:わーお。ほんとに先生ってキャラ変わるんだね

小林:言ったでしょう

有希:先生、今日のうちらのショッピングの目的聞いてます?

小林:目的ですか?

有希:あれ?聞いてません?来週の花火大会用に浴衣買いに行くんですよ

小林:(淡々と)へぇ

有希:あれ?興味ありません?

小林:いいえ

有希:もしかして、知ってましたか?

小林:……振られましたから

有希:えぇ?

小林:花火大会の話を出したら、あなた方と先約があると断られました

有希:ありゃりゃ~私たちに負けちゃいましたか先生

小林:ええ、負けました

有希:先生時々怖い顔しますよね

小林:そうですか?

有希:ねえ、先生

小林:なんでしょう

有希:美樹の浴衣姿、見たくないですか?

小林:見たいに決まってるでしょう

有希:わお、即答

小林:返してくれるんですか?

有希:あれ?さっき僕のものじゃないって言ってませんでした?

小林:そんなこと言いましたっけ

有希:花火、二部構成なんですけど、先生、予定空けられます?私、ズタバの新作ケーキが食べたいなぁ?

小林:…乗りましょう

有希:やった!


0:花火大会当日


美樹:花火綺麗だったねぇ!

玲奈:今年はいつにも増して迫力あったね

有希:ちょっと歩き疲れたから、次の花火上がるまでそこら辺の屋台でなんか買って休まない?

玲奈:さんせー

美樹:あ、私あっちの自販機でジュース買ってくる

玲奈:おっけー!


0:美樹一旦退場


有希:さて、私たちもずらかりますか

玲奈:ですな。あーあ。私も彼氏と花火見たーい。せっかくこんなにおしゃれしてきたのに

有希:あら、私とじゃ不服?

玲奈:ぜーんぜん

有希:玲奈の浴衣似合ってるよ、かわいい

玲奈:えへへ~有希も超きれい!

有希:また来年も一緒に来ようね

玲奈:そん時は、私も有希も彼氏作って、トリプルデートしよ

有希:おっけ、頑張るわ


0:玲奈・有希退場。美樹再登場


美樹:あれ~?みんなどこ~?

小林:美樹

美樹:え?えぇ!?先生!?

小林:呼び方

美樹:あ、すみません

小林:敬語

美樹:はい…

小林:もうすぐ付き合って半年くらいになるんだけど……まだ慣れない?

美樹:…だって

小林:浴衣、可愛い

美樹:っ…!あ、あの、せんせっ…さ、さとるがどうしてここに?

小林:ケーキ一つで可愛い恋人とデートできるなら来ないわけないでしょ

美樹:え?

小林:伊藤さんと密約を交わしました

美樹:ええ!?

小林:祭りの後半、相手は俺じゃだめ?

美樹:ダメじゃない!ダメじゃないけど…!

小林:けど?

美樹:…なんでさとるは浴衣じゃないの?

小林:見たいの?

美樹:すっごく!

小林:午前中仕事してその足で来ちゃったから

美樹:残念

小林:そんな風に思ってくれるなら着てくればよかったかな

美樹:持ってるの!?

小林:確か…父さんのやつがあったはず

美樹:見たい!今度さとるの家行ってもいい?

小林:…いつかね

美樹:えぇ~?

小林:美樹は何か食べた?

美樹:あ、りんご飴を

小林:りんご飴…

美樹:こ、子供っぽいって思ったでしょ

小林:ううん。可愛いなって

美樹:かわわ

小林:だから、いい加減慣れてって。もう何十回言ったかわかんないのに

美樹:だってぇ

小林:手、繋いでいい?はぐれるといけないから

美樹:は、はい…

小林:まあ、繋ぎたいだけなんだけど

美樹:もう黙ってっ!

小林:ほんと、可愛い

美樹:うう…もうちょっと大人っぽいのにすればよかった

小林:浴衣?

美樹:うん。会えるってわかってたら白とか紫のとかにしたのに

小林:なんで?黄色、すごく似合ってるよ

美樹:…ほんとに?

小林:…上目遣いやめて

美樹:え?

小林:今回は無自覚なのね…

美樹:さとる?

小林:さ、花火の場所取り行くよ

美樹:ええ~?

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