第4話 仕立て対決

アリアと出会ってから、数日が経った。


俺は、アリアと共に行動するようになり、彼女のことをよく知るようになった。


彼女は、勇者として人々のために戦っている。

彼女は、とても強い。だが、時々寂しそうな表情を見せることがある。

その理由を訊いても、彼女は答えてくれない。


彼女は俺に優しくしてくれる。だが、俺にはそれが辛い。

俺なんかが彼女に好かれる資格はないからだ。


俺とアリアは、町を歩いていた。すると、ある店の前でアリアが立ち止まった。


「ここって……、仕立て屋よね?」

「そうだよ」

「入ってみましょう」

「ああ」


店内に入ると、一人の女性が出迎えてくれた。


「いらっしゃいま……、あっ!アリア様!また来てくださったのですね!」

「こんにちは、シルビア」

「はい!今日はどのような御用件でしょうか?」


「ここは、シルビアのお店だったのね。シルビアは有名な装備の仕立て人なんだよ」

「それは凄いな」

「いえ、それほどでもないですよ」


「それでね、今日は私の装備を作ってもらおうとしたの」


「アリア様の装備ですか。アリア様には、勇者としての使命があるのでしょう?その役目を果たすためならば、このシルビアが一肌脱ぎますよ!」


シルビアはやる気に満ちた声で言った。


「ありがとう、シルビア。じゃあ、早速採寸を始めようと思うのだけど……」


「アリアさんが着る装備は、俺が作りたい!」

「えっ?どうして?」

アリアが驚いている。


「アリアは勇者だ。いずれは魔王を倒すために旅立つことになる。その時までに、アリアを守れるような装備を作りたいと思ったんだ」


「ありがとう。でも、そんなことまでしてくれなくてもいいのよ?」


シルビアが割って入ってきた。


「アリア様、私の方が彼より素晴らしい装備品を仕立てられますわ」


「そうかもしれないけど、真人の作る服や防具はとても性能が高いんだよ」


「アリアさんに似合う最高のドレスを仕立ててみせる!」


「ふーん。あなたにできるのかしら?」

「やってみせるさ」

俺は胸を張って言った。


「じゃあ、勝負よ!どちらが作ったドレスが美しいかをね」

「望むところだ」


こうして、俺はアリアのためのドレスを作ることが決まった。数日後、俺はドレスの仕立てに取り掛かった。


俺は、アリアにドレスのデザイン画を見せた。


ドレスのデザインは、白を基調としたドレスにした。

アリアの美しさを最大限に引き出すデザインに仕上げた。


アリアに試着してもらって、サイズを確認した。

その後、俺は自分の作業部屋に戻り、作業を始めた。


アリアの美しい姿を想像しながら、俺は針を動かした。

ドレスが完成した時、時刻は夕方になっていた。


出来上がったばかりのドレスを持って、俺はアリアに会いに行った。


彼女は、いつものように町の見回りをしていた。


彼女は、俺が近づいていくと笑顔で手を振ってきた。

「どうしたの?」

「アリア、完成したよ」

「本当!?」

彼女は目を輝かせている。


「今から着替えてくるから待っててくれる?」

「ああ」

彼女は、自分の部屋に戻ろうとした。


「ちょっと、待ってくれ」

「なにかしら?」

「俺も一緒にアリアの部屋に行ってもいいかな?」

「別に構わないけれど……」

「ありがとう」

俺はアリアと一緒に彼女の部屋に向かった。


アリアは、俺に背中を向けたまま立ち止まっていた。

「アリア、どうかした?」

「いや、なんでもないわ……」

彼女はゆっくりと振り返った。


「綺麗……」

彼女は、うっとりとした表情を浮かべていた。


「これがアリアのドレスだよ」

「凄く素敵……」


彼女は、しばらくドレスに見惚れていたが、我に返ったようだ。「ねえ、早く着てたい!」

アリアは、ドレスを手に取り、着替え始めた。

「サイズはぴったりみたいね」

アリアは鏡の前に立った。

「どう?」

「とてもよく似合ってる」

「そう……、嬉しい」


アリアは頬を赤らめながら、微笑んでいる。


そのやりとりをシルビアはコッソリ見ていた。アリアが俺の方を振り向いた。


すると、シルビアが俺に声をかけてきた。

シルビアの顔は少し不機嫌そうだ。


彼女は、俺に詰め寄ってくると、耳元で囁いてきた。

俺は思わずドキッとしてしまった。


彼女は俺の耳元でこう言った。

――アリア様の装備は、私が作るべきなのよ。それをあなたみたいな奴に取られるなんて……。絶対に許さないんだから! 」


彼女は涙を溜めながら悔しそうにしている。


俺は、シルビアに優しく言った。

「安心してくれ。アリアさんの装備は、俺が作るよ」


すると、アリアが俺の肩をポンと叩いた。

「大丈夫よ、シルビア。真人は、とっても優秀なテーラーなんだから」

アリアは、優しい口調で言う。


シルビアは、目に溜まっていた涙を拭いながら言う。


「分かりました。私は、勇者であるアリア様の装備品を作る機会を楽しみにしておきます」

「ええ、任せておいて」

アリアは自信たっぷりに言った。


「それでは、失礼します」


シルビアは、アリアの装備品を仕立てる権利を勝ち取ったことで満足したのか、意気揚々と去っていった。


シルビアとの勝負は一旦おあずけという形になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る