第27話 双葉
「ーーねぇ、莉乃は私のこと好き?」
半ば無理矢理にボクの部屋に久しぶりに遊びに来ていた双葉が何かに追い詰められていたようにそう言った。
「……双葉には八重がいるよ?」
「莉乃には私が八重のことが好きに見えてるの?」
それは、とボクは言葉を詰まらせる。
「……週末、八重の家に泊まるんだ。そこで私は八重に抱かれるの」
「恋人なんだから、嫌だと言えばいいんじゃない?」
「恋人だから、言えないんだよ」
とさと双葉がボクを押し倒す。
「……八重は私が従順なら優しいよ。でもね、私は人形じゃないの。私はずっと莉乃が好きだったの。八重もそのことに気づいてる」
「……これ以上言っちゃダメだよ、双葉」
「叶わない恋なら、せめて思い出をちょうだい。私を抱いて、莉乃」
双葉は制服に手をかけ、脱いでいく。
「……自暴自棄はよーー」
柔らかい唇が言葉を遮り、ボクの唇に重ねられる。
「自暴自棄なんかじゃない。私は莉乃に触れられたいの。莉乃は嫌?」
「……っ!嫌なんかじゃないよ。ボクが八重と話すよ。双葉を解放するように」
その言葉に双葉は首を横に振る。
「ありがと、莉乃。それは大丈夫。今はお互いだけを見て?」
ボクたちは2回目のキスを交わす。
「好きよ、莉乃。大好き」
「……ボクもだよ、双葉」
ボクの指が触れると、双葉の身体は悦びに震えていた。
☆
「ーー久しぶりだね。3年ぶりかな?ボクは高校生になったんだよ」
ボクは双葉に会いたくなって、お墓参りに来ていた。
「同じクラスにね、Ωの子がいるんだ。双葉と重なったよ。今度こそΩの子を守りたいって思ったんだ。……もっと双葉と一緒にいたかったな。早すぎるよ」
墓は綺麗に掃除され、花が供えられている。
おそらく八重が来ているのだろう。八重は心底双葉に惚れていた。顔を合わさないうちに帰ろうと立ち上がる。
「ーー久しぶりね。双葉の葬儀以来かしら」
「久しぶり。ボクは退散するよ。邪魔だろう?」
「ゆっくりしていけばいいのに。双葉はあなたが好きだったんだから、私がいるより喜ぶんじゃない?」
「……毎日墓参りしてるの?」
「そうよ。今日あったことをお話してるの。周りは忘れろと言うわ。私もそうしたほうがいいと思ったこともあるけど、やっぱり忘れられないの。愛してるの」
双葉が残していった傷は想像以上に深かった。
「……私も一緒に死なせてくれたらよかったのにね」
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