第23話 手に入れるために

「ーー莉乃とありさが出席停止ってどういうことなの!?」

「あ、お見舞いに来てくれたんだ。嬉しいな」


 息を切らしている私に八重は上機嫌だった。


「私は八重と話しに来ただけ。お見舞いなんかじゃーーっ」


 腕を強く引かれ、私は体勢を崩す。そのまま八重は強引にキスをしてきた。


「まだ罪を軽くしてあげたほうなんだよ?警察に付き出すことも出来たんだから」

「……何が目的?」

「んー、そうだね。“独占”かな。こんなにも私が好きなのに、双葉は莉乃ばかりで私を見てくれないんだもん。告白もダメだったし、本当に欲しいものを手に入れるために私は何でもするよ」

「……私が八重と付き合えば、ふたりを助けられるの?」

「なんだか私が悪者みたいな言い方だね。私は骨折で入院してるのに」

「実際、悪者じゃない。莉乃とありさが八重を虐める訳が無いもん」

「反抗してもいいよ?私は双葉に自分から寄ってきてほしいだけだから」

「……実際、選択肢はないじゃない」

「いいじゃない。αの私とΩの双葉、いい相性だと思うよ?」


 私はぎゅっと拳を握り締める。

 私はずっと莉乃が好きだった。

 たぶん、莉乃も私のことが好きだった。

 一緒にいて、幸せだった。

 けど、もう一緒にいられないかもしれない。

 それでも良い。

 私は莉乃の未来を守りたい。

 私が我慢すればいいのなら、そうしよう。

 全ては莉乃のために。


「八重と付き合うよ。だから、ふたりを助けて」

「じゃあ双葉からキスして?」


 私は八重にキスをする。

 つうと涙が頬を伝う。


「やっと捕まえた。双葉は本当に可愛いね。約束通り、ふたりを助けるよ。愛してるよ、双葉」


 ☆


「ねぇねぇ、莉乃。莉乃は好きな人はいる?」

「いないよ。結はいるの?」

「いるよ。でも、なかなか難しいんだ。お姉ちゃんとその番の人にも相談したんだけど、Ωを活かしてフェロモンで落とせと言われてさ」

「んー、それはあんまり参考にならないね。確かに効率は良いのかもしれないけど、無理矢理は嫌だよね」

「わかってくれる!?」


 必死な結にボクは微かに笑う。


 好きな人はいるよ。

 今でも忘れられない、忘れたくない人がいるよ。


「……どうしたらいいかなぁ?」

「相手はどんな人?」

「……10歳年上の大人の女の人」

「大人だ。子ども扱いされちゃいそうだね」

「……壁はそれだけじゃないんだ」

「年齢以外に何かあるの?」


 結はボクの耳元に口を寄せる。


「……水無瀬先生が好きなの。他の人には内緒だよ?」

 

 結の言葉にボクはしっかりと頷いた。


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