第22話 策略

「気に食わないね。そんなに双葉が欲しいならもっと違う方法があるでしょ?ありさは便利な道具じゃないんだよ?」


 泣くありさをボクは八重から庇う。


「……あたし、莉乃たちに酷いことしたのに、庇ってくれるの?」

「後で謝罪はしてもらうけどね。反省してくれたらそれでいいから」

「やっぱり莉乃はかっこいいね。ありさが片想いするのもわかるよ。莉乃はさ、双葉のことどう思ってるの?」

「好きだよ。恋愛的な意味でね」

「いいなぁ。両想いじゃん」

「告白する気はないけどね」

「どうして?」

「ボクがβだから。Ωはαといるほうが安定するし、幸せになれると思うから。でも、八重はダメ。人を平気で傷つける人に双葉は渡せない」

「生意気。何様のつもりなんだか。莉乃もありさも邪魔だな。いなくなって貰おうかな」


 クスクスと笑い、八重は屋上の柵を乗り越える。意図に気づいたありさが手を伸ばすが、届かない。


「ーーさ、教師はβとα、どちらを信じるだろうね?」


 八重の身体は屋上から落下した。


 ☆


「で、お姉ちゃんは具体的にどうやって六花さんを誘惑したの?」

「……答えなきゃダメ?」

「答えなくてもいいよ。六花さんに聞くだけだから」

「……うっ」


 わたしの言葉にお姉ちゃんは呻く。

 身内に恋愛話を暴露されるのはかなり恥ずかしい。


「実 、私が言ってあげよっか?」

「お願い、それはやめて。恥ずかしくて死んじゃう」

「顔真っ赤になっちゃってる。かわいいな〜」

「うー、六花が虐める」

「ごめんごめん。実がかわいくて、ついね?」


 六花さんもお姉ちゃんも幸せそうに笑っている。

 羨ましいな。

 わたしも千夏とそうなりたいな。



「……私からキスをしたの」

「ちなみに濃厚なやつね」

「六花、そこまで言わなくていいじゃない」

「詳しく教えてあげないとわからないでしょ?」

「……それはもうやった」

「え?それで落ちなかったの?」

「……その先生、理性すごいね。普通、我慢できないよ。手強いね」


 うーんとふたりは唸っている。


「……媚薬でも盛っちゃう?」

「六花、さすがにそれはダメだよ」

「だよねー。めっちゃ乱れたもんね、実が」

「六花もすごかったじゃん」


 あられもない話がわたしの目の前でされている。


「ふたりともありがとう。まずは仲良くなるところから頑張るよ。共通の話が出来るように努力してみるね」


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