第20話 大切な人
「……莉乃、私なんかのために無理はしないで。しんどそうな莉乃を私は見たくない」
「ううん。しんどくないよ。ちょうどいい機会だったんだ。ボ、私は“女の子”として生きる選択をしたからね」
そうぎゅっと莉乃は私を抱き締める。
「……ごめんね、“男の子”を選べなくて。そうしたら普通に結婚もできて、双葉を守れるのに」
「……同性婚もできるじゃない」
「できるけど、まだ一般的じゃないからさ」
「……胸を張ればいいんじゃない?ふたりとも悪いことをしてるんじゃないんだから」
ふたりの世界に入っていた私と莉乃は、もうひとり一緒にいることを思い出して赤面する。
「大和さん、ごめんね。巻き込んじゃって」
「大丈夫よ。前から遊馬さんとも乙葉さんともお話したいと思ってたから。私は私でクラスに馴染めていなかったから、実は似たもの同士かもしれないわね」
話しにくそうと思っていた印象とは違って、八重は優しくて私達はあっという間に彼女が好きになった。いじめもすっかりなくなって、平和な日々が続いていた。
ーー放課後、屋上で待ってます。
ある日、莉乃の靴箱には手紙が入っていた。
「屋上……?屋上は危険だから鍵がかけられてるはずだけど」
八重が不信げに呟く。
「告白、なのかな?やだな、莉乃には私がいるのに」
「ま、行くだけ行ってみるよ。どんな用事かわからないし、無視はできないよ」
笑顔の莉乃にふたりはやれやれと苦笑した。
梨乃はお人好しが過ぎる。
☆
「お姉ちゃん!先生の画像ゲットしたよ!」
「やるじゃん、結 。どれどれ見せて?」
結は姉の実に画像を見せていた。
「わー、めっちゃ美人じゃん。いかにも国語の先生って感じ」
「ぶー。残念でした。千夏は化学の先生だよ」
「おー、理系には見えないね。ってか、名前の呼び捨てするなんて、やるな我が妹よ」
嬉しそうにお姉ちゃんが笑う。
「最近お母さんはどう?」
「相変わらずだよ」
「ごめんね。結だけに押し付ける形になっちゃって。たくさん我慢してたんだけど、どうしても六花 のことを言われたのは我慢出来なかったんだ」
「その気持ち、わかるよ。でも、お母さんの気持ちもわかるから」
「ん。いい子だね、結。いつでも相談してね?」
玄関が開く音がする。嬉しそうにお姉ちゃんは出迎えにいく。
「実、この靴は誰の?」
「結のだよ。浮気なんかじゃありません〜」
「こんばんは、六花さん。お邪魔してます」
「六花がいるのに浮気なんかするわけないじゃん」
「ま、確かに。あんた、私がいないと発狂するもんね」
「結の前では言わないでよ〜私はかっこいいお姉ちゃんでいたいの」
相変わらずラブラブなふたりを見て思う。
千夏とこんなふうになりたいな、と。
「ーー六花さん、教師を落とすにはどうすればいいと思いますか?」
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