その魔法の一瞬を追いかけて カメラが写す光と友情の輝き

 日の出と日没の世界が一色に染まるわずかな時間マジックアワー。祖父の形見のカメラに残されたマジックアワーの写真に魅せられた高校生・広瀬太一は、撮影に訪れた町外れの高台で、カメラを抱えた少年・鷹栖和行と出会う。カメラを通じた二人の少年の友情ストーリー。

 最新のデジカメの普及で、廃れてしまったオールドカメラの魅力を熱く訴えかける作品です。

 カメラ趣味に目覚めた太一ですが、撮影技術は素人同然。高校のカメラ部に入部し、変わり者の先輩たちから知識や技術を学んでいきます。

 最近のスマホにあるような便利な自動補正はなく、ピント合わせから、F値、シャッタースピード、ISO感度……、すべて自分で調節しなければならない不便な年代物ですが、光量を少し変えるだけで陰影や奥行きの印象ががらりと変わる。

 アナログで難しいからこそ、会心の一枚が撮れたときの感動や達成感もひとしお。楽しみながら撮影の腕を磨いていく太一の姿に自分でも写真を撮ってみたくなります。

 そして太一は、プロカメラマンの父を亡くしたショックで不登校に陥ってしまった鷹栖に寄り添おうと努力する。

 世界が黄金色に染まるマジックアワーとカメラへの情熱が、やがて鷹栖の心を開いていく……。

 魔法の時間の中で織り成す少年たちの友情が美しく、まさにカメラで切り取っておきたくなる名場面でした。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=愛咲優詩)

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