第22話 ノードとの戦い
ミノタウロスの逃げた場所はドーム状の銀色の建物だった。
「なんだここは?」
扉に近づくと静かに開いた。
「自動ドア?」
中へ進むと外界とはまるで違った様子が広がっていた。
「なんだ? 宇宙船の中みたいだな」
猿田は楽しそうに言った。
「宇宙船って例えがガキねぇ。たしかに壁から床、天井に至るまで金属的な素材で作られてるし未来的な感じはするわね」
ミコトは何かの金属製だと思われる壁を叩きながら言った。
「あそこ見て。エレベーター?」
ミキが不思議そうに指差す先には円柱状の大きな扉があった。
「行ってみよう」
俺たちがエレベーターらしき中に入ると、ゆっくりと上昇するのがわかった。
「これ上に向かって動いているよね?」
ミキは透明な扉から離れてゆく元居たフロアの床を眺めた。
「ラスボス手前って感じがするな」
「何言ってんのよ。またガキみたいなことを」
猿田の冗談をミコトが軽くあしらった。
エレベーターが停止するとドアが自動で開いた。
「ラスボスってのも、あながち間違ってないかもな」
俺たちの目の前には、だだっぴろい空間が広がっている。
そして中央には黒い球体が鎮座している。
――――――――――――――――――――
【ノード】
・討伐推奨レベル:99
・スキル:ブラック・ショールズ 未来予知
――――――――――――――――――――
「ラスボスのようだが、オレにもわかるぞ。アイツのレベルは大したことない」
猿田は自信満々だ。
「猿田。気をつけろ。絶対に何かあるぞ」
「ヒサシは心配性だな。アイツのレベルは99。普通の人間からすると限界のレベルなんだろう。オレ達が強くなりすぎたんだよ」
猿田はそう言うと黄金の鎧を身にまとい斧をふりかぶり突進した。
「あれ?」
猿田の斧は、黒い球体『ノード』の真横を空振りした。
「避けられた? これならどうだ!」
猿田が前後左右、軽々と斧を振り回しノードへと攻撃を何百回と繰り返した。
全ての攻撃が空振りに終わっている。
ノードはわずかに動きギリギリで猿田の攻撃をかわしている。
「猿田! もうやめろ!」
俺の言葉を無視して熱くなっている。
「うおおおおおおおお!」
猿田の強烈な一撃は空を切り床を破壊した。
床の金属片があたりに飛び散った。
「うわあああああ!」
猿田は肩から勢いよく血を吹き出しその場に倒れた。
赤いレーザーが猿田の肩をつらぬいたのだ。
「猿田君!」
ミキが猿田にかけよった。
「危ない!」
赤いレーザーがミキにむけて発せられた。
「くっ!」
ミキの前に飛び出しレーザーによる攻撃を受けた。
「ヒサシ!」
「大丈夫だミキ。攻撃力自体はたいしたことない」
レベル99なりの攻撃力といったところか。
しかし、何発も受けるわけにはいかない。
「全力だ!」
俺はノードとの間を一気につめると剣を繰り出した。
高速の剣により衝撃波があたりを襲う。
だが、全て空振り。
「どういうことだ?」
俺の攻撃が1つもあたらない。
「うっ!」
レーザーによる攻撃が襲ってきた。
「これならどう!?」
「ミコト!」
ミコトは強烈な炎をノードへと放った。
炎は広範囲を覆った。
「ミコト! いいぞ!」
「これなら避けようがないでしょ」
ミコトが炎を繰り出し立つその背に影が現れた。
「ミコト! うしろだ!」
俺の叫びに振り向いてミコトは即座にガードした。
ノードのレーザーはミコトのガードした十字の腕をおそった。
「くっ! きゃあっ」
ミコトは壁に向かって吹っ飛んだ。
「ミコト! 大丈夫か!」
「ダメージは思ったほどじゃないわ。けど、アタシはあと数回は耐えられる」
「俺も同じようなものだ」
このまま持久戦を続けると確実に負ける。
攻撃が全く当たらない謎を解明しないかぎり俺達は負ける。
そんな俺の考えを見抜いたのかノードが突然、俺の前に現れた。
そして次々とレーザーが襲ってくる。
「うわああああああ!」
「ぐわあああ!」
「きゃあ!」
「きゃああああ!」
俺にミキ、ミコト、猿田。
全員にレーザーが同時に降り注いだ。
「くっ! ま、まずいな……」
持久戦どころか、全員HPを半分以上削られた。
次の攻撃で全滅してしまう。
「くそおおおおおおお!」
猿田が四方八方、斧をふるいまくる。
「どうせ当たらないならヤケクソだ!」
猿田の斧は壁や床あらゆる場所を破壊してゆく。
「お、おい! 猿田! 落ち着け!」
俺の静止も聞かず猿田は暴れまくる。
「あれ?」
猿田の無茶苦茶な攻撃にノードは全て反応している。
避ける必要の無い攻撃の時でさえ。
「どういうことだ?」
ノードは猿田の攻撃に対応するのに精一杯で攻撃が出来ないようにも見える。
「ミキ! ミコトの炎の能力を俺にくれ!」
「はい!」
ミキの返事に対応しミコトもすぐに動いた。
「よし!」
俺は炎をまといフロア内の何も無い一角を攻撃した。
強烈な衝撃音があたりに響いた。
ノードは目の前から静かに消えた。
「どういうことなの?」
ミコトは不思議そうに聞いてきた。
「黒い球体が本体じゃなかったんだ。黒い球体は映し出された映像」
「よく気づいたわね」
「猿田の無茶苦茶な攻撃を必要の無い攻撃まで避けてたんだ。まるで、どこからか遠ざけるように」
「そっか、自分の本体が攻撃を受けないように猿田の位置を誘導してたのね」
猿田が笑いながら俺とミコトの会話に割り込んできた。
「オレ様もそこにいち早く気づいて一見無茶苦茶な攻撃を繰り出したんだ」
「はいはい、すごいですねぇ」
ミコトはバカにしたように軽くあしらった。
「お、おい! 本当だぞ!」
「はいはい」
猿田とミコトのやりとりに俺とミキは笑ってしまった。
「みんな気をつけて!」
ミキが異変に気づき叫んだ。
あたりの景色が歪み崩れてゆく。
まるで壊れたモニターに映された映像のようにチラチラとあたりが暗くなり、景色が崩壊する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます