第21話 ノード登場 

「なかなか強敵のオンパレードだな」


 俺がそう言うと3人共うなづいた。


「今、29階ね」


 ミコトにも少し疲れが見えている。


「少し休憩が出来るといいけど」


 ミキにもだいぶ疲れているようだ。


「そうだな。さすがのオレ様も疲れてきたな」


 猿田は斧を道具袋にしまった。

 ここまでレベル150前後の魔物を討伐してきた。

 

「次のフロアまで進んでみましょう」


 ミコトはそう言うとスタスタと進んで行った。

 次のフロアまで進む提案には誰も拒否しなかった。

 なぜなら上へ通じる階段がこれまでと違ってハシゴになっているのだ。

 次が最上階の可能性すらある。


 ハシゴをのぼり次のフロアを出ると広大な空間が広がっていた。


「すげえ!」


 猿田が驚きの声をあげた。


「広いってもんじゃないわね。上見なさい」


 ミコトが指差す上の方を見ると信じられない光景が広がっていた。


「空だ。雲も漂っている」


 俺が驚く横からミキが腕をつかんできた。


「ヒサシ! ねー! 見て見て」


 西の方角には地平線が広がっている。

 そして、ミキの指差す東の方には海が広がっている。


「ここはもしかして異世界?」


 みなが思った事をミコトがまっさきに口にした。


「とにかく進んでみよう」


 ここがどれだけ広い空間なのか?

 ゆけどもゆけども草原が広がっている。


「あれ見て!」


 ミキが発見したのは牧場のようだ。

 柵に囲まれた中に牛舎のような大きな建物がある。



---



「柵の中には何もないわね」


 ミコトは柵をあけてどんどん中に入ってゆく。


「ちょっと、ミコト、勝手に入っていいのか?」

「いいの。いいの」


 何も手がかりの無い状況。

 この建物を調べるしか無いのだが少しもためらいが無いのはミコトらしい。

 ミコトは柵の中にある建物の扉に手をかけた。


「え!? どういうこと?」


 牛舎のような建物の扉をあけたミコトが立ち尽くしている。


「どうした?」


 俺たちも中を見て驚いた。

 中には小さな子供が、檻の中で、まるでニワトリのブロイラーのように繋がれているのだ。

 

「なんてこと!」


 ミキは駆け出すと子供達を檻の中から出していった。


「お、俺たちも手伝おう!」

「ああ!」


 全員で子供達を檻から出したが、みんな呆然としたままだ。

 いや、意思が無いかのようにぼんやりと立っている。


「オイ! お前ら! なあーにやってんだ!」


 扉を激しくあけはなって入ってきたのはミノタウロス。



――――――――――――――――――――


【ミノタウロス】

 ・討伐推奨レベル:220

 ・スキル:奴隷化 自分より弱い者を奴隷化する


――――――――――――――――――――



「人間のガキ?」


 ミノタウロスは手に持った斧を振り回し威嚇するように近づいてきた。


「お前が、この子供たちをここにとらえているのか!」


 怒りのまま叫んだ。

 

「ヒサシ!」


 ミキの心配する声を背に俺はミノタウロスの動きを封じていた。


「うぐおぉおおお! や、やめてくれ!」


 ミノタウロスの腕を極め地面に押し付けた。


「この子供たちは何なんだ! どこからさらってきた!」

「この子供はノード様への捧げもの。く、くわしいことは俺は知らない!」


 ミノタウロスは必死の形相で答えた。

 嘘はついていないだろう。


「行け」


 俺がミノタウロスを放つと建物の外へと逃げていった。


「いいのか?」


 猿田が俺に不思議そうに聞いてきた。


「ああ、アイツの逃げた方向にノードと言うのが居るんだろう。それに先に子供たちをどうにかしないと」


 子供たちは全員無表情で言葉も発しない。


「今から戻る?」


 ミキが子供たちを見て心配そうにしている。


「俺の持ってる道具袋を使おう。さあ、みんな一度建物から出てくれ」

「え? どういうことなの?」


 ミキは不安そうだ。


「大丈夫。子供たちは建物の中に残したまま出てくれ」


 俺は道具袋に建物を子供たちごと吸収した。


「俺の道具袋は中が無限に広く、そして時間も停止しているに近い状態だ。一番安全な場所だろう」


 ミノタウロスの逃げて行った方向を見ると天にも続くような塔が見えた。


「あそこだ。まだ囚われている子供たちが居るかもしれない。行こう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る