第17話 ザ・タワー
『ザ・タワー』は、この街のどこからでも見ることができる。
元々は60階の巨大なビルだったが異世界パンデミックで、さらに巨大な天空までそびえる塔となった。
周囲は立ち入り禁止区域となっている。
院長のおばあちゃんはもちろん、ミキにも黙ってここへ来た。
言ったら止められただろうし、何より巻き込みたくない。
「さっ、行くか!」
立ち入り禁止区域は10メートルはあろうかという巨大な塀で囲まれている。
レベル35のジャンプ力があれば、ひとっとびで越えられる。
「よっと」
塀を越えると中は何も無い平原が広がっている。
真ん中にそびえるタワーもはっきりと見える。
500メートルも離れていないようだ。
「あそこまで一気に走り抜けよう」
ブーンという羽音が聞こえたかと思うと10体の魔物があらわれた。
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【クイーンフライ】
・討伐推奨レベル:35
・スキル:食人バエ召喚。
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クイーンフライは、食人バエを大量に召喚した。
その数は300を越える。
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【食人バエ】
・討伐推奨レベル:10
・スキル:高速飛行
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「これじゃあ、誰も近づかないはずだ。現在、世界最高レベルと言われるLV40では凌げない」
はじめて全力で戦えるかもしれない。
「リリース!」
レベル257最大まで解放した。
食人バエが次々と襲ってくる。
クイーンフライは食人バエを次々と召喚する。
「539体まで増えた」
感覚を研ぎ澄まし周囲の様子を完全に把握。
「いくぞ!」
次々と剣でなぎ払う。
「319体」
「120体」
「30体」
クイーンフライは食人バエを召喚するが俺の討伐スピードが圧倒する。
「残りクイーンフライ5体のみ!」
あたりは静まり返った。
1分もかからず全ての魔物を討伐した。
「あそこか」
タワーの入り口を入ると中は1フロアの広い作りになっていた。
奥に階段がある。
タワーの1フロアをフロアボスが守っているのか?
「ここは人間が来ていい場所じゃないぞ」
階段の奥から現れたのは100人隊長だ。
「お前がここの門番ってことか?」
「私は、ただの100人隊長でしか無い。ここを守護されるのは我が主」
上の階から巨大な毛むくじゃらの魔物が降りてきた。
10メートルはあろうかという巨体。
右手には巨大な混紡(こんぼう)を持っている。
「お前か我が軍にたてつくのは」
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【陸王トロール】
・討伐推奨レベル:100
・スキル:力ため(力をためて攻撃力をあげる)
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討伐推奨レベルが100か。
この塔をあがっていくと、どれだけの化け物が出てくるのか。
「ぐおおおおおおおお」
トロールは力をためている。
「油断した!」
トロールはためた力を一気に開放し混紡を振り下ろした。
「ふはは! オレ様の攻撃力はためることで倍にもふくらむ。砕けろ!」
俺はトロールの混紡の一撃をまともに受けた。
「思ったより強烈だな」
HPが100ほど減った。
レベル差が倍以上あるはずだがスキル次第で戦えなくもないな。
「お、おまえ、何ともないのか?」
「いや、少しだけダメージを受けたぞ」
「す、少しだけ?」
俺は一気にトロールに近づくと右の拳で思いっきりぶっとばした。
トロールは壁までふっとび、その場へ崩れ落ちた。
「ぐ、ぐぅ……。人間で、ここまで……」
「孤児院に手を出さないでほしい。約束出来るなら命までは取らない」
「ぐぅ……。ワシにその権限は無い……」
突然、強烈な気配を感じた。
「なんだ!」
少し離れた場所で黒い霧が渦巻いている。
よく見ると黒い霧ではなくハエだ。
大量のハエが渦を形成している。
「素晴らしいですね。貴方(あなた)には一度お目にかかりましたね」
黒いハエの渦の中から響く声。
「お前は!」
「我が名はベルゼバブ。お久しぶりですね。天野ヒサシさん」
「どうして俺の名前を知ってるんだ!」
「ホッホッホ、人間の世界の事もある程度は把握しておかなければいけませんからね。特に貴方達のようなステータス持ちの人間はね」
「なぜ、お前たちの同種がいる孤児院を潰そうとするんだ!」
「ホッホッホ、わたくしだけの意向では無いのですがね。まあ、いいでしょう。たわむれに遊び相手になってあげましょう。わたくしに勝つことが出来れば、あの孤児院はそのままにしておいてあげましょう」
「どうせお前達の世界では力が全てなんだろ。望むところだ!」
――――――――――――――――――――
【ベルゼバブ】
・討伐推奨レベル:300
・スキル:クイーンフライに分裂統合
――――――――――――――――――――
「討伐推奨レベル300か。はじめての格上相手の戦いだな……」
俺の今のレベルはLV257。
レベル差は50弱……。
背中に冷や汗を感じる。
腕を組んだまま空中に浮遊したベルゼバブは冷たい目で俺を見下ろした。
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