第6話 ダンジョン攻略

 舗装された道路をゆっくりと下っていく。

 元々、片側2車線の車が通っていた道路なので道幅は広い。

 ダンジョン内へ入ると、広大なフロアが広がっていた。


 東京ドームほどの広さと高さがあるんじゃないだろうか?

 そして、中は見渡しがきく程度に明るい。

 

 奥の方に階段が見える。

 剣を片手に慎重に進む。

 すると目の前に青い光が5つ突然光った。

 

「よし! 魔物だ」


 見慣れた魔物『スライム』が目の前に5体。


「リリース!」


 俺はリリースでレベルを開放するとスライムを瞬殺した。


 猫耳のメイドさんに聞いていた通りだ。

 このダンジョンは地下1層にレベル1の魔物。

 地下2層にはレベル2の魔物。

 とレベルに応じて魔物が出るため無理なくレベルをあげるには最適な場所らしい。


 2層からいよいよ俺が戦った事の無い魔物が現れてくるはずだ。


 2層へ降りると、いよいよダンジョンっぽく迷路のようになっていた。

 そこまで複雑ではなかったので3層へ降りる階段まではすぐだった。


「もしかして、下に降りるほどダンジョンも複雑になってるのかな?」


 そんな事を思っていると魔物が現れた。

 人間のような姿だが獣のような鳴き声を発している。


「ゴブリンか!」


 人間と同じぐらいの強さだと聞いている。

 ゴブリンは手に持った棍棒でなぐりかかってきた。

 ゆっくりとスローモーションのように見える。


(2層だからレベル2程度の魔物、だいぶゆっくりと見える。

 しかし、よく見ると現代人よりはずいぶん筋肉は発達している。

 顔は人間よりも猿に近い。

 耳障りな鳴き声を発していて気持ちが悪い)


 色々、あれこれ考え事をしていたが、ゴブリンの棍棒は、まだ俺の顔面までもたっしない。


(おそいなぁ)


 なんてずっと考えていたらゴブリンの棍棒が俺の左側頭部にクリーンヒットした。


「ん?」


 当然だろうが、全く痛くない。

 ステータスを確認する。



――――――――――――――――――――



 天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:101


 HP:14855/14855 MP:10310/10310


 攻撃力:161


 耐久力:131


 速 度:141


 知 性:101


 精神力:101


 幸 運:151


 スキル:リストリクト 常にレベルを1にするスキル

      リリース   リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する


――――――――――――――――――――



 HPは全快のまま。

 ゴブリン程度の相手ならカスリ傷すら負わないということか。


 ゴブリンは目を丸くして驚いたようだが、棍棒で必死にラッシュしてきた。

 俺の左右側頭部、眼球のあたり、喉と急所をことごとく攻めてくる。


「ひどい奴だなぁ」


 ゴブリンは体力がなくなったのか息を切らして目の前でかがみこんだ。

 俺は剣をゴブリンの頭部に向かって振り下ろした。

 スパンッ!

 と空気が破裂するような音と共にゴブリンの頭部は吹き飛んでいた。

 

 ゴブリンの砕けた頭部は赤い血の霧となり漂っている。

 ゴブリンの首の無くなった体からは赤い血が次々と湧き出てくる。

 鉄の臭い?

 気持ちの悪い刺激臭が鼻の奥を刺激する。

 

 魔物とは言えヒトの形をしているものが赤い血をまきちらし臭いを発している。

 罪悪感がおそってくる。

 しかし、次の瞬間、血の霧の一滴までも全て青い光となり散った。

 あたりは何も存在しなかったかのように静まりかえった。

 洞窟内の湿った空気がわずかに感じられるだけで刺激臭も消え去った。


「もしレベル1のままだったら、血を流し惨たらしく死んでいたのは俺だったのかもしれない」


 HPは、あいかわらず全快のままだが、慎重にいかなくては。

 

 3層、4層と次々と洞窟を進む。

 魔物は強くなっているはずなのだがレベル101の俺にとってスライムと何らかわらない。

 それでも、はじめて戦う魔物ばかり、ゴブリンの時のように無駄に攻撃をくらうような事はしない。

 

 5層、6層と進むにつれてダンジョンも複雑になり出現する魔物も大型なものへとかわっていく。

 11層に来るとダンジョンの様子が少し違った。


 人型で狼の顔を持った魔物『コボルド』。

 迷路のように入り組んだダンジョンを進み、襲いくるコボルドを倒す。

 そして行き止まりに大きな扉があった。


「ここボスの部屋だよな」


 10層まではフロアごとに同じ魔物が出現するだけだったが11層からはボスが守っているということだろうか?


「ボス部屋か。緊張するな」


 大きな扉をゆっくりとあけ中に入った。

 通常のコボルドの5倍はあろうかという巨体。

 両隣に従えるコボルドと比べると赤ちゃんと大人のようだ。


 右手には巨大な斧を持ち、こちらを睨みつけている。


「グルアァアアアアアアアアア!!!」


 轟音が空気を振動させる。

 

「まさにボスって感じだな」


 そうだ。

 敵のステータスを確認出来ないだろうか?

 自分のステータスは、ステータスを意識しながら右下を見ると表示される。

 ステータスを意識しながら魔物に集中したらステータスが表示されないだろうか?

 まずは右にいるコボルドに意識を集中する。




――――――――――――――――――――


【コボルド】


 ・討伐推奨レベル:10


 ・スキル:鳴き声 敵をひるませる。


――――――――――――――――――――




「よし。思ったとおりだ」


 コボルドは予想通り10層だからレベル10。

 わかりやすい。

 このダンジョンが初級者のレベル上げに利用されるわけだ。

 

「次は、真ん中のデカいやつだ」




――――――――――――――――――――


【キングコボルド】


 ・討伐推奨レベル:15


 ・フロアボス:びっくりダンジョン10層


 ・スキル:王の虎咆(こほう) 敵のステータスを一時的に減少させる。


――――――――――――――――――――




 天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:101


 HP:14855/14855 MP:10310/10310


 攻撃力:161 -1 王の虎咆(こほう)の効果 60秒


 耐久力:131 -1 王の虎咆(こほう)の効果 60秒


 速 度:141 -1 王の虎咆(こほう)の効果 60秒


 知 性:101 -1 王の虎咆(こほう)の効果 60秒


 精神力:101 -1 王の虎咆(こほう)の効果 60秒


 幸 運:151 -1 王の虎咆(こほう)の効果 60秒


 スキル:リストリクト 常にレベルを1にするスキル

      リリース   リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する


――――――――――――――――――――


 ステータスが1づつ減少している。

 これだけレベル差があってもスキルの効果からは逃げられないのか……


 キングコボルドと両脇のコボルド2体が同時に向かってきた。

 破裂音が3つ。

 青い光となって3体とも消え去った。


「このレベル差だとまだまだ余裕だな」


 剣ひとふりで3体を同時に薙ぎ払い1秒とかからず倒した。

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