第7話 ダンジョン制覇
キングコボルドが持っていた斧が床に転がっている。
俺自身と同じぐらいデカイ武器だ。
「これは、武器屋で買った道具袋の出番だな」
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【キングコボルドの斧】
・キングコボルドが装備していた斧。
・装備推奨レベル:30
・攻撃力+50
・稀(1/255の確率)に攻撃力が倍になる効果
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相当重量があるはずだがレベル101の俺にとっては片手で軽く振り回せるほど軽く感じる。
「これ、デカすぎて道具袋の口に入らないな……」
直径10センチそこそこ、斧の柄の部分は入っても刃の部分が道具袋の口を通らない。
「おお!」
無理だと思っていたら、斧が青く光ったかと思ったら光の粒となって道具袋に吸い込まれた。
「これはすごい!」
袋から斧を出そうと意識すると右手に斧が装備された。
持っていた剣は、道具袋の中に入ったようだ。
「これは便利だな。色々な効果のある道具や武器、防具なんてのもあるだろうし持ち物を充実させるだけで相当強くなれそうだ」
このキングコボルドは、255分の1の確率で攻撃力が倍になるらしい。
確率は低いけどワンチャン大ダメージ与えられるな。
まあ、今の俺には必要ないかもしれないが……。
「おっ! コボルドも何か落としてるぞ」
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【回復結晶】
・HPを100回復する。
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これは必需品だな。
米粒ほどの大きさの青い結晶。
1つでHP100回復。
2つ手に入れた。
これは道具袋に入れるまでも無いな。
いざという時にすぐに使えるようにポケットに入れておこう。
俺はズボンのポケットに回復結晶を忍ばせた。
11層以降はダンジョンの最後にボス部屋があり、ボスは階層の1.5倍程度のレベルだった。
12層、13層と次々と攻略してゆく。
12層ではボスのLV18。
13層ではボスのLV20。
14層ではボスのLV21。
わかりやすい。
20層のボス、LV30グリーンドラゴンの物理攻撃でさえ俺のHPを削ることは出来なかった。
30層のボス、LV45ブルードラゴンの吐き出す吹雪には驚いたが、ダメージどころか寒さも感じなかった。
どうやらレベルが1.5倍以上離れていると相手にもならないようだ。
39層のボス、炎をみにまとった狼『フェンリル』をあっさり倒し40層へと進んだ。
40層にはレベル40の魔物『炎のトカゲ』がうろついている。
特に問題なく蹴散らしダンジョンを進む。
「レベル40は人類到達限界レベルなんだよな」
俺は特殊スキル『リストリクト』によりスライムを倒した数でレベルアップしたためLV101にまで成長した。
しかし、経験値を通常通り得るとLV40が限界と言われている。
LV40になるのに50億の経験値が必要で、そこからLV41になるためには更に50億必要らしい。
『炎のトカゲ』を倒しても経験値は10万ほど。
そして、このフロアのボスはレベル60はあるはずだ。
理論的にと言うより現実的にレベル40から1あげるのは難しい。
「あれ? ボス部屋の扉があいている」
40層のボス部屋の扉はあいたままになっていた。
中から爆音が聞こえてくる。
誰かが40層のボスと戦っているのか?
ボスはLV60はくだらないはずだ。
パーティーで戦っているのか?
中へ進むと業火と爆発がうずまいていた。
「グギャアアアアアアアアア」
甲高い周囲を威嚇するような雄叫びが響き渡る。
ボス部屋の中央に居たのは一度見たことのあるアイツだった。
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【レッドドラゴン】
・討伐推奨レベル:60
・スキル:火炎 口から高温の炎をはく
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あまりの高温で部屋の中の岩がマグマのように溶け落ちている。
レッドドラゴンの目の前に炎につつまれた人影があった。
「ま、まずい!」
あれだけの炎につつまれたら息もできないはず。
いや、もう手遅れか……。
そう思った瞬間。
喊声(かんせい)が響いた。
「うらああああ!」
人型の炎がレッドドラゴンに突撃した。
レッドドラゴンは腹に強烈な一撃をくらい苦しそうに後ろに下がった。
突撃した炎のカタマリから現れた人物を見て驚いた。
ミコトだ。
赤い髪に衣装が印象的だ。
先程の炎をまとった突撃はスキルなんだろうか?
単独でレッドドラゴンに挑んでいる?
レッドドラゴンが強烈な炎をミコトにはきつける。
しかし、ミコトは炎につつまれダメージを受けていないようだ。
ミコトのレベルは最大でも40ほどのはず。
スキルの相性がいいのだろう対等にわたりあっている。
いや、スキルの相性最悪なのか?
レッドドラゴンも同じ炎のスキルで互いにダメージを与えられていないようだ。
俺が到着して30分ほどたつが、やはりどちらも決め手にかけ均衡状態だ。
「くぅっ!」
ミコトはレッドドラゴンの尻尾による一撃を受けてふっとばされた。
レベル差のためかミコトがおされだしている。
このままだとまずいな。
けど、俺の力がバレるのも避けたい。
レッドドラゴンが床に片膝をつくミコトにじりじりと近づいている。
レッドドラゴンは右手の爪がミコトを襲う。
ミコトは剣で迎え撃つ。
「まずい!」
単純な力の勝負ではミコトが押し負けてしまう。
俺は全力でレッドドラゴンに向けて飛び出した。
レッドドラゴンの首をふっとばす。
そのまま岩陰に隠れた。
「え?」
ミコトは何が起きたかわかっていないようだ。
ミコトの目の前でレッドドラゴンは青い光となって消え去った。
「経験値30万。LV60の魔物を倒してもこれじゃあ、これ以上レベルをあげるのは難しいわね」
す、すまん。
俺にも経験値が30万入ってるから本来はレッドドラゴンを倒して手に入る経験値は60万だ。
俺が最後に攻撃したから30万づつ経験値が入ったようだ。
ミコトは正攻法で高校3年生にしてLV40に到達している。
とんでもない天才だ。
ミコトは、あたりをウロウロしだした。
(ま、まずい。俺が居る事がバレてしまう)
「ないわね……」
どうやら何かを探しているようだ。
一体なにを探してるんだ?
「だれ!?」
ミコトに気づかれてしまった。
こちらへ近づいてくる。
「出てきなさい!」
ミコトは全身に炎を纏い戦闘態勢だ。
「ご、ごめんなさい!」
俺はリストリクトでレベルを1に抑制してから飛び出した。
「アンタは、∪クラスの」
「は、はい。∪クラスの天野(あまの)ヒサシです。ミコトさん」
「ミコトでいいわよ。アタシもヒサシって呼ぶから」
「は、はい」
「で、アンタこんな所で何やってんの?」
「え、えーっと。一層に居たと思ったら急にこんな所に……と言いますか……」
かなり苦しい言いわけだな……。
ミコトは、顔を近づけて来た。
まじまじと俺の顔を見てくる。
(うっ、ち、近い)
日本人離れした顔立ちは人形のように綺麗だ。
こんなに見つめられると、ちょっと恥ずかしい。
「ふーん。ヒサシはLV1だし、ここまでソロで降りて来るのは無理よね。おそらくアタシが高校生初のLV40到達者だし、この最終フロアの到達者だからね」
「え? 最終フロアってのは?」
「この部屋に下層へ降りる階段が無いからおそらく最終フロアよ」
そうか、ミコトは下層へ降りる階段を探していたのか。
確かに下層への階段は見当たらない。
ここが最終階層なんだろう。
「アンタ、何も知らないのね」
「はぁ……。今日がダンジョンに入ったのも初めてで」
「アンタ、ほんっと運が悪いのね。初めてダンジョンに入ってトンネリングするなんて」
「トンネリング?」
「超低確率だけど、ダンジョン内で突然下層まで一気に転移する現象よ。ダンジョン以外でも突然離れた場所に飛ばされることもあったり、そういうスキルもあるらしいわ。スキルについては噂レベルの話だけどね」
へー。初めて知った。
しかし、トンネリングって事で納得してくれたのはありがたい。
普通に下層まで降りてきただけなんだが。
「ところでアンタ、転移結晶は持ってるの?」
「え? なんですか? それ」
「アンタ、ほんと何も知らないのね。これの事よ」
ミコトはビー玉のような丸い結晶をつまんで見せた。
「じゃあ、帰るわよ」
ミコトは俺の右手を握ってきた。
炎のように性格まで激しいのに、ミコトの手はあたたかくて柔らかい。
「えっ? えっ?」
ミコトの手に意識を取られていると辺りが青い光につつまれた。
「さっ、帰るわよ」
いつの間にか、ミコトは5メートルほど先を歩いている。
周囲には『びっくりダンジョン』の入り口近くの景色が広がっていた。
「ダンジョンの最下層から一気に外に転移したんだ。すげー」
「おいてくわよ!」
ミコトはスタスタと先を進んでいく。
「ちょっと、待って下さい!」
俺はミコトの後をついて学校へと向かった。
ミコトと二人っきりで学校に戻ったら、それはそれで騒ぎになるような気がするのだが……。
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