第4話 最弱から最強へ
「リリース!」
俺はスキル名を叫んだ。
体から青い光が立ち上がる。
「な、なんだ? なんだ?」
とんでもない力があふれてくる。
「こ、これは……」
ステータスを表示して俺は驚愕(きょうがく)した。
――――――――――――――――――――
天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:100
HP:14563/14563 MP:10108/10108
攻撃力:159
耐久力:130
速 度:140
知 性:100
精神力:100
幸 運:150
スキル:リストリクト 常にレベルを1にするスキル
リリース リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する
――――――――――――――――――――
「なん……だ。これ……」
レベル100?
HPとMPは1万を越えている。
攻撃力159?
速度140?
たしか、速度は1で秒速1メートルだった。
速度140だと時速504キロ。
「ん? なんでこんな計算ができるんだ?」
そうか知性100。
WAIS方式の知能テスト換算でIQ200。
頭がいいはずだ。
「ためしに100メートルほど走ってみよう」
そう思考した瞬間。
とんでもないスピードで体がふっとばされた。
「うわあああああああ!」
100メートルで止まりきれず、さらに100メートルほど地面を転がった。
速度に体が慣れずうまく動けない。
「あれ? 痛くない」
地面を強烈なスピードで転がったのにまったく痛くない。
「耐久力も130あるからか……」
---
10分ほどすると体も慣れてきて自由に動けるようになった。
目の前にスライムが現れたので試しにいつも通り戦ってみる。
が、一瞬で一撃。
コンマ1秒もかからず撃破。
経験値が1入る。
「おかしいな」
スライムを倒すと経験値が1入る。
こんなペースじゃあ、とうていレベル100にはならない。
レベル100に達する経験値は632溝(こう)、632かける10の32乗という気が遠くなるような数値だ。
もし経験値1のスライムでここまでのレベルに達するには、宇宙の存在する年齢よりも遥かに長い時間が必要だ。
「リストリクト」
俺は試しに『リストリクト』を唱えた。
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天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:1(リストリクト効果発動中)
HP:8/8 MP:0/0
攻撃力:4
耐久力:2
速 度:2
知 性:2
精神力:2
幸 運:4
スキル:リストリクト 常にレベルを1にするスキル
リリース リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する
――――――――――――――――――――
そしてスライムを倒す。
101体倒した所でレベルアップ音が脳内に響く。
そしてリリースを唱える。
――――――――――――――――――――
天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:101
HP:14855/14855 MP:10310/10310
攻撃力:161
耐久力:131
速 度:141
知 性:101
精神力:101
幸 運:151
スキル:リストリクト 常にレベルを1にするスキル
リリース リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する
――――――――――――――――――――
俺は一瞬にして理解できた。
リストリクトでレベルを制限すると経験値ではなくスライムを倒した数でレベルアップしている。
レベル100から101になるにはスライムを101体倒せばいい。
「なんだ。俺のスキル。最強スキルだったんじゃないか」
嬉しさと悔しかった気持ちと入り混じって目に涙がたまるのがわかった。
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一晩興奮で寝つけなかったがとりあえずいつも通り登校した。
「うん。ちゃんと出席してるな。えー、それでは今日も自習とします」
3年になったが担任は2年の時と同じ、やる気の無いスーツ姿のメガネ先生だ。
2年と兼任のため俺の出席だけ確認すると、あとは自習で2年のクラスへと出ていってしまう。
俺のクラスはUクラス。
通常Aクラス、Bクラス、Cクラスと振り分けられるのだがCクラスより下の特別クラスUクラスだ。
そして、このクラスは俺1人だけだ。
「よし! 今日はダンジョンに行ってみよう」
いつもは公園に出かけてスライム討伐していたが、レベル100越えの実力を試したい。
Cクラス以上が最初に挑むダンジョン『びっくりダンジョン』に挑戦したい。
ダンジョンに向かうため校庭まで出た所で足を止めた。
「今の時期、AクラスからCクラスまで全員『びっくりダンジョン』に挑んでいる。レベル1の俺がいきなり現れたらダンジョンから追い出されるだろう。かと言ってレベル100越えなんて知られたら何が起きるか予想もつかない……」
全クラスあと少しで担任に連れられて学校を出るはずだ。
全員学校を出た後に、日課の公園でスライム討伐して寄り道でもして時間を潰せばかち合う事もなさそうんだ。
「ちょっと、何やってんの? どいてちょうだい」
校庭の入り口で立ち止まって思案していると女子生徒が声をかけてきた。
3人組の女子がこちらをにらんでいる。
制服のネクタイの色は赤色。
Aクラスだ。
「どきなさいよ」
校庭の入り口は5,6人横に並んでも通れるぐらい広いのになんでわざわざ俺をどかせようとしてるのか。
「聞こえないのかしら?」
「見て見て制服のネクタイないわよ」
「えっ? 噂のUクラスの……」
3人で、こちらを見ながらわざと聞こえるようにクスクスと笑いながら話している。
(くそっ、ただの嫌がらせかよ。こいつら)
しかし、この世界、レベルが全て。
レベル1だと思われている俺は、引き下がるしか無い。
「ちょっと! どきなさい!」
3人組の女子生徒の後ろから甲高い声が聞こえてきた。
「わっ! ごめんなさい!」
さっきまでイキりまくっていた女子生徒が、そくざに道をあける。
真っ赤な服に身をつつんだ、真っ赤な髪の長身の女子が現れた。
学校の先生?
いや、違う。
1人だけ私服のこの真紅の女子は特別クラスの生徒だ。
Aクラスでも、Bクラスでも、Cクラスでも、ましてや俺のいるUクラスでもない。
Aクラスの上、Sクラスの生徒だ。
今年は1人だけSクラスの生徒が居たと噂に聞いていた。
そして、社長令嬢の金持ちとしても有名なミコト。
花華(はなが)ミコトだ。
真紅の姿のミコトは、俺の前を通り過ぎようとした時、一瞬立ち止まった。
「あ、え、あっ……、えーっと」
服や髪は燃え上がるような真紅だが、肌の色は白く切れ長の目から放たれる視線は冷酷さを感じる。
高校生にして人類到達最高レベル40だという噂も聞いている。
いや、俺はレベル100越えてるからビビる必要は無いのだが最近までレベル1だった雑魚根性が身についていると言うか、生まれながらのエリート様には卑屈になってしまう。
「アンタ。Uクラスのヒサシね」
顔を近づけてまじまじと見つめてくる。
「は、はい……。よく俺なんかの名前を……」
フンッと言った感じでミコトは答える。
「全生徒の名前ぐらい把握してるわよ。それにしてもアンタ……」
「な、なんでしょう?」
「レベル1。アタシの勘違いかしら?」
「は、はぁ……」
「ま、いいわ」
ミコトはそう言うとスタスタと校庭の外へと立ち去った。
「あ、あの……。ミコト様とお知り合いなの?」
さっきまで偉そうにしてた女子生徒が話しかけてきた。
「いや」
「そ、そうですか……。ミコト様が誰かに話しかけるのなんて珍しいから……」
花華(はなが)ミコトの権威は恐ろしいな。
さっきまで偉そうだった女子生徒が、ちょっと話しかけられただけの俺にもこの態度だ。
そうこうしていると担任に連れられAクラスからCクラスまでの生徒も続いて学校を出ていった。
みんなダンジョンへ向かうんだろう。
俺は時間差で入りたいので、まずはいつも通り公園で日課のスライム討伐。
それから二箇所ほど寄り道してからダンジョン攻略だ。
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